2026年9月8日、東京都が建築物環境計画書制度の改正(案)についてパブリックコメントの実施を発表しました。意見募集は9月9日から10月9日までです。当社は8月25日の記事で7月の技術検討会の資料をもとに改正の方向をお伝えしましたが、そのときは省エネルギー性能基準の具体的な数値がまだ示されていませんでした。今回公表された別紙1(全33頁)に、その数値がすべて入りました。義務基準は住宅がUA値0.87→0.8・BEI 1.0→0.85、事務所等・学校等がBEI 0.8→0.75。さらに改正後のBEIは再エネ(創エネ)を除いた値とされています。数値を新旧で並べて、どこが効くのかを整理しました。
① 意見募集は令和8年9月9日(水)〜10月9日(金)。郵送は10月9日必着。② 対象は大規模建物向けの「建築物環境計画書制度」の改正案で、改正事項は(1)建設時CO2排出量の把握・削減の取組の強化、(2)省エネルギー性能基準(断熱・省エネ)の強化の2つ。③ 義務基準は、住宅がUA値0.87→0.8・BEI1.0→0.85、事務所等・学校等がBEI0.8→0.75、住宅以外の断熱BPIが1.0→0.9。工場等・ホテル等・百貨店等・病院等・飲食店等・集会所等のBEIは据え置き。④ 3段階評価では住宅の段階3がUA値0.6→0.46と大きく動きます(角住戸等の緩和条件つき)。⑤ 改正後のBEIは再エネ(創エネ)を除く値。太陽光で稼いでいた分は評価に乗りません。⑥ ライフサイクルカーボンの算定は5,000㎡以上の事務所用途で義務(国の法施行日と同日=令和10年度予定)。⑦ 施行予定は省エネ性能基準が令和10年4月、ライフサイクルカーボンが令和10年度。⑧ これは改正案であって決定ではありません。12月の技術検討会でパブリックコメントを踏まえた改正案の検討が行われ、条例改正は令和8年度中の予定です。
2026年9月8日、東京都環境局が「建築物環境計画書制度の改正についてご意見を募集します」というプレス資料を出し、あわせて技術検討会のページに別紙1「建築物環境計画書制度の改正(案)について」(全33頁)と別紙2「意見提出様式」が掲載されました。
「近年の新築建築物の脱炭素化をとりまく状況を踏まえ、専門家等による検討会を設置し、建築物環境計画書改正の検討を行ってきました。このたび、別紙のとおり改正案をとりまとめましたので、下記のとおり、都民・事業者の皆様からご意見を募集いたします。今後、いただいたご意見を踏まえ、東京都環境確保条例の改正を行う予定です。」(プレス資料・令和8年9月8日)
当社は8月25日に東京都の環境計画書制度が2028年度に変わりますという記事を出しています。あの時点の根拠は7月28日の第9回技術検討会の資料で、省エネルギー性能基準については「非住宅(BPI、BEIの各値等)」「住宅(UA値、BEIの各値等)」を強化する、とだけ書かれ、同じ表に「具体的な基準値は、技術検討会での意見を踏まえ設定」とありました。数値がなかったので、当社の記事も「強化される方向が示された」までしか書けませんでした。
その数値が、今回そろいました。ここがこの記事の主題です。
先に範囲を確認しておきます。今回意見募集にかかっているのは、延べ面積2,000㎡以上の大規模建物を対象とする「建築物環境計画書制度」の改正案です。技術検討会では中小規模建物向けの「建築物環境報告書制度」もあわせて議論されてきましたが、今回のプレス資料・別紙1に建築物環境報告書制度の改正案は含まれていません。
表1|今回の意見募集の概要
| 名称 | 建築物環境計画書制度の改正についての意見募集(パブリックコメント) |
|---|---|
| 募集期間 | 令和8年9月9日(水曜日)から同年10月9日(金曜日)まで(郵送は10月9日必着) |
| 実施主体 | 東京都環境局 気候変動対策部 環境都市づくり課 環境建築物担当 |
| 対象制度 | 建築物環境計画書制度(延べ面積2,000㎡以上の大規模建物が対象。2,000㎡未満も任意で計画書を提出可能) |
| 改正事項 | (1) 建設時CO2排出量の把握・削減の取組の強化 (2) 省エネルギー性能基準(断熱・省エネ)の強化 |
| 資料 | 別紙1「建築物環境計画書制度の改正(案)について」(全33頁)/別紙2「意見提出様式」/プレス資料(全2頁) |
| 提出方法 | Webフォーム(LoGoフォーム)または郵送(別紙2の様式) |
| この先 | いただいた意見を踏まえ、東京都環境確保条例の改正を行う予定 |
出典:東京都環境局 プレス資料(令和8年9月8日)および技術検討会ページの掲載内容より当社作成。
まず、必ず満たさなければならない義務基準です。今回の改正の趣旨は、別紙1の12頁にはっきり書かれています。
「2030年カーボンハーフに向けて、更なる性能向上を図るため、省エネルギー性能基準(義務基準)を、国の義務基準を上回る水準に引き上げ」(別紙1 p12)
現行制度は「国のロードマップを踏まえ、省エネ性能基準(義務基準)を国の義務基準と同水準に引き上げ」るものでした(別紙1 p12)。今回はそこから一歩出て、国を上回る水準にするという位置づけです。
表2|義務基準の新旧対照(別紙1 p14)
| 区分 | 指標 | 現行 | 改正後(案) |
|---|---|---|---|
| 住宅以外 | 断熱性能 BPI | 1.0以下 | 0.9以下 |
| 住宅以外 | BEI|工場等 | 0.75以下 | 0.75以下(据え置き) |
| 住宅以外 | BEI|事務所等・学校等 | 0.8以下 | 0.75以下 |
| 住宅以外 | BEI|ホテル等・百貨店等 | 0.8以下 | 0.8以下(据え置き) |
| 住宅以外 | BEI|病院等・飲食店等・集会所等 | 0.85以下 | 0.85以下(据え置き) |
| 住宅 | 断熱性能 UA値(地域区分5〜7) | 0.87以下 | 0.8以下 |
| 住宅 | 断熱性能 UA値(地域区分4) | 0.75以下 | 0.75以下(変更なし) |
| 住宅 | BEI | 1.0以下 | 0.85以下 |
BPI=住宅以外の用途の建物の断熱性能を示す指標(小さいほど高性能)。UA値=住宅用途の建物の断熱性能を示す指標。BEI=建物の設備機器のエネルギー消費性能を示す指標。改正後のBEIは再エネ(創エネ)を除く値(第04節参照)。地域区分4は奥多摩町・檜原村、地域区分5〜7は奥多摩町・檜原村・小笠原村を除く都内の各区市町村。
住宅以外でBEIの基準値そのものが下がるのは、事務所等と学校等の2用途だけです(住宅のBEIは別に1.0→0.85へ強化されます)。工場等・ホテル等・百貨店等・病院等・飲食店等・集会所等は数値は現行のままですが、改正後のBEIは再エネを除く値に変わるので、数値が据え置きでも評価は変わりえます(第04節)。加えて義務基準の断熱性能BPIは用途を問わず1.0以下→0.9以下になります(3段階評価のBPIは工場等を除く扱い・別紙1 p15 注6)。「うちはホテルだから関係ない」と読むと、断熱側で外します。
住宅について補足します。義務基準のUA値0.8は、ZEH水準(UA値0.6)よりは緩く、現行の0.87よりは厳しいという位置です。BEI 0.85についても、国の義務基準(住宅は1.0)を上回る水準になります。都内で共同住宅を計画されている場合、これまで「国の基準に合わせておけば都でも通る」という感覚で進めていた案件は、令和10年4月以降は通らなくなる可能性があります。
建築物環境計画書制度は、義務基準に適合しているかどうかとは別に、取組の内容を3段階で評価して都のホームページで公表する仕組みです。マンション環境性能表示の星の数にもつながります。その3段階評価の基準値も、今回まとめて動きます。
表3|3段階評価基準の新旧対照・住宅以外(別紙1 p15)
| 指標 | 現行 段階1/2/3 | 改正後(案) 段階1/2/3 |
|---|---|---|
| BPI(工場等を除く) | 1.0/0.9/0.8 | 0.9/0.85/0.8 |
| BEI|工場等 | 0.75/0.65/0.6 | 0.75/0.65/0.6(据え置き) |
| BEI|事務所等・学校等 | 0.8/0.7/0.6 | 0.75/0.65/0.6 |
| BEI|ホテル等・百貨店等 | 0.8/0.75/0.7 | 0.8/0.75/0.7(据え置き) |
| BEI|病院等・飲食店等・集会所等 | 0.85/0.75/0.7 | 0.85/0.75/0.7(据え置き) |
数値はいずれも「以下」。段階3の値(BPI 0.8、事務所等・学校等のBEI 0.6)は変わっておらず、段階1と段階2が上に詰まる形です。
表4|3段階評価基準の新旧対照・住宅(別紙1 p15)
| 指標 | 現行 段階1/2/3 | 改正後(案) 段階1/2/3 |
|---|---|---|
| UA値(地域区分5〜7) | 0.87/0.7/0.6 | 0.8/0.6/0.46 |
| UA値(地域区分4) | 0.75 | 0.75(据え置き) |
| BEI | 1.0/0.9/0.8 | 0.85/0.8/0.75 |
数値はいずれも「以下」。動くのは地域区分5〜7のUA値と、住宅のBEIです(地域区分4は別紙1が新旧とも0.75以下とのみ記載しており、段階別の値は示されていません)。とくにUA値の段階3は0.6→0.46で、現行の段階3が改正後の段階2に相当する、という関係です。
この0.46には条件が付いています。別紙1の15頁と31頁に、同じ注記が繰り返されています。
「原則として全住戸で適合が必要。ただし、角住戸等(外皮が外気等に3面以上面している住戸)に限りUA値0.6以下を認め、その場合、全住戸のUA値平均が0.46以下であることを条件とする。」(別紙1 p15 注7・p31)
共同住宅の外皮計算をされている方はすぐお分かりのとおり、外皮が多くの面で外気に接する住戸は、同じ仕様でもUA値が中住戸より不利に出ます。ここで緩和の対象になるのは、別紙1の定義どおり「外皮が外気等に3面以上面している住戸」です(呼び名が角住戸かどうかではなく、この条件で判断します)。その事情を踏まえた緩和ですが、緩和を使う場合でも全住戸平均で0.46以下が要求されます。「住棟平均だけ見ればよい」という書き方にはなっていません。この住戸ごとの考え方については、当社の共同住宅の外皮の記事もあわせてご覧ください。
都が示した実績によると、2025年上半期実績(暫定)では約6割の建物が住棟平均UA値0.46以下で、そのうち「角住戸等がUA値0.6以下」かつ「角住戸等を除いた住戸がUA値0.46以下」を達成している建物が約6割だったとされています(別紙1 p31)。
数値の新旧対照だけを見ていると気づきませんが、今回BEIの数え方そのものが変わります。別紙1の13頁に、こう書かれています。
「BEIは再エネ(創エネ)を除く値とする」
「遅くとも2030年までに、国の省エネ基準のZEB・ZEH水準への引上げが予定されている中、設備による一次エネルギー消費量の低減を着実に実施するとともに、ZEB・ZEH水準と評価の整合を図る」
(別紙1 p13。原典では2つの記載に分かれています)
つまり、太陽光発電などで削減した分を差し引く前の値で評価する、ということです。これは基準値の上げ下げとは別の、評価方法の変更です。再エネで一次エネルギー消費量を減らしている建物では、同じ設計でも改正後のほうが数字は不利に出ます(再エネを載せていない建物のBEIは変わりません)。
都は、この変更の影響を検証したうえで「義務基準達成には影響しない」と結論づけています。検証に使われたのは、再エネ利用設備の設置割合が高い上位3用途です。
表5|再エネの有無によるBEIの差(2023〜2024年度・別紙1 p13)
| 用途 | 再エネ設置割合 | BEI中央値(再エネ含む) | BEI中央値(再エネ除く) |
|---|---|---|---|
| 学校等 | 70.0% | 0.54 | 0.57 |
| 工場等 | 34.1% | 0.19 | 0.63 |
| 事務所等 | 31.9% | 0.57 | 0.61 |
出典:別紙1 p13。2023〜2024年度に建築物環境計画書が提出された建物のうち集計可能なデータより都が作成。
工場等の中央値は0.19から0.63へと大きく動いています。都は用途ごとに検証したうえで「義務基準達成には影響しない」と結論づけており、中央値0.63も義務基準(工場等0.75以下)の内側です(ただしこれは用途ごとの中央値で、個々の建物の適否を示すものではありません)。問題は3段階評価のほうです。工場等の段階3はBEI 0.6以下ですから、中央値0.63は届きません。これまで創エネで上の段階に届いていた計画は、同じ設計のままでは段階が下がる可能性があります。設備側の一次エネルギー消費量そのものを下げる検討が要るかどうか、早めに見ておくことをおすすめします。
今回の数値は、思いつきで決められたものではありません。別紙1の13頁に、水準の決め方が明記されています。
「用途により省エネ性能の傾向に違いがみられることから、省エネ性能基準(義務基準)の達成割合を考慮して検討(改正後の基準適用年度の2年前における達成割合が8割程度の水準を目安に強化)」(別紙1 p13)
実際、住宅以外のBEIについては「現行義務基準から1段階(0.05)強化した場合に、達成率が8割以上となる用途は、事務所等及び学校等の2用途」(p26)と書かれていて、だからこの2用途だけを強化したという組み立てになっています。
表6|水準の根拠になった達成率の実績(別紙1 p25〜p32)
| 対象 | 改正後の水準 | 達成率の実績 |
|---|---|---|
| 住宅以外 BPI | 0.9以下 | 2022〜2024年度実績で全体92%が達成(事務所等92%/学校等100%/ホテル等92%/百貨店等57%/病院等99%/飲食店等91%/集会所等91%) |
| 住宅以外 BEI(1段階強化時) | 各用途 −0.05 | 2024年度実績で8割以上は事務所等80%・学校等91%の2用途のみ(工場等75%/ホテル等40%/百貨店等45%/病院等57%/集会所等40%。飲食店はN=1のため除く) |
| 住宅 UA値 | 0.8以下 | 2024年度実績で67%。2025年度上半期実績(暫定)は78%。「改正後基準の適用の2年程度前には8割程度に達する見込み」 |
| 住宅 BEI | 0.85以下 | 2024年度実績で69%。2025年度上半期実績(暫定)は82%。同じく「2年程度前には8割程度に達する見込み」 |
出典:別紙1 p25・p26・p30・p32。住宅の義務基準は2024年度実績で7割弱ですが、2025年度上半期の暫定実績はUA値78%・BEI82%まで上がっており、都は「改正後基準の適用の2年程度前には8割程度に達する見込み」としています。
3段階評価のほうは、別の考え方で置かれています。別紙1の13頁は「ZEB・ZEH水準の早期実現の観点に加え、新たに、2030年代後半に広く普及が期待される住宅としてGX ZEH・GX ZEH-M水準が示されたことから、これらの早期普及の観点も含めて検討」としています。住宅のUA値の段階3が0.46になったのも、「UA値0.6以下と0.55以下には大きな差があるため、GX ZEH-Mの判断基準を参照」した結果だと書かれています(p30)。GX ZEH-M については当社のGX ZEH-M Oriented の記事もご覧ください。
住宅BEIの段階については、「達成割合が6割程度であるBEI 0.8以下を段階2、4割程度であるBEI 0.75以下を段階3とする」(p32)、UA値の段階3は「達成割合が全体の4割程度の水準」(p31)と、いずれも達成割合から置かれています。住宅では、いちばん上の段階が「4割程度しか届かない水準」に置かれているということです(この置き方は住宅について書かれたもので、住宅以外の用途に同じ説明があるわけではありません)。
今回の改正案のもう一本の柱が、建設時CO2排出量の把握・削減の取組の強化です。中身の方向性は当社の8月25日の記事で書いたとおりなので、ここでは今回の別紙1で新しく確認できたことに絞ります。
いちばん大きいのは、算定の対象が「建設時CO2(アップフロントカーボン)」から「LCCO2(ライフサイクルカーボン)」に広がり、任意から義務になることです(p9)。資材製造・施工から解体に至るまで、使用段階・解体段階を含めたライフサイクル全体を通じたCO2等排出量が対象になります。
表7|ライフサイクルカーボン算定の義務(別紙1 p8・p10)
| 義務対象 | 5,000㎡以上の事務所用途の新築等(新築・増築または改築の部分が5,000㎡以上)。国の建築物省エネ法に整合させる |
|---|---|
| 義務の内容 | 届出義務 |
| 公表 | 都が段階評価の結果を都ホームページで公表(算定結果の値そのものは公表しない) |
| 計画時の提出 | 義務対象建物は国に提出した算定結果を都にも提出。それ以外の建物は国が定めた算定法で算定した結果を任意提出 |
| 完了時の提出 | 計画書提出対象の全建物が、①提出しない(再算定は求めない)②完了時の内容で(再)算定し結果を提出、のいずれかを選択 |
| 制度開始 | 2028(令和10)年度予定・国の施行日と同日。令和8年度末までに条例・規則・指針等を改正 |
出典:別紙1 p8・p10。完了時の「①提出しない」を選べるかどうかは、3段階評価の段階3を狙う場合は別の条件がかかります(段階3には「知事が定める案件について、完了時の内容で再算定し結果を提出」とあります。表8を参照)。国の制度(建築物省エネ法)側は公表なし・第三者認証を受けた場合に標章を表示できる、という違いがあります。国の届出制度そのものについてはライフサイクルカーボンの届出が義務になりますをご覧ください。
3段階評価の中身も具体化しました。別紙1の22頁は現行の評価と改正案を左右に並べていて、段階の一つひとつが別物に置き換わります。
表8|LCCO2削減への配慮 3段階評価の新旧対照(別紙1 p22)
| 段階 | 現行(建設時CO2排出量の把握・削減の取組) | 改正案(LCCO2削減への配慮) |
|---|---|---|
| 段階1 | 建設時CO2排出量の全部 又は 一部を把握している(※アップフロントカーボンの把握とし、算定手法は定めていない) | ライフサイクルカーボンを算定・把握している(※国の定める算定方法による) |
| 段階2 | 上記の把握に加えて、①削減目標を定め設計を行っている 又は ②建設工事現場におけるCO2排出量の削減対策により20%程度削減している | 段階1の取組を通じてライフサイクルアセスメントを実施し、削減目標及び取組方針を定め、設計又は工事を行っている(又は行わせている) |
| 段階3 | (1) ①建設時CO2排出量の削減目標や方針を定め、削減目標等に基づいた設計を行っている(又は行わせている) 又は ②建設工事現場におけるCO2排出量の削減対策によりCO2排出量を20%程度削減している。(2) 主要構造部に係る建設時CO2排出量を算定・把握し、建築主がCO2排出量の値・内訳等を公表している | 段階2の取組に加えて、GHG排出量の削減割合を把握している(取組内容・削減割合は環境計画書の公表に加える。知事が定める案件は完了時の内容で再算定し結果を提出。※算定結果の値は公表しない) |
出典:別紙1 p22。現行の段階1が「算定手法を定めない把握」だったのに対し、改正案の段階1は「国の定める算定方法による算定」です。いちばん下の段階の要求が上がります。
さらに、段階2で求められる「削減目標・取組方針の示し方」まで具体化されました。削減割合の目標値(削減目標)に加えて、都が示す取組事項として必須項目と選択項目のメニューが23頁に掲載されています。
表9|段階2で求められる取組方針の構成(別紙1 p23)
| 区分 | 求められること | 掲載されているメニュー |
|---|---|---|
| 必須項目 | すべて行う | 躯体における低炭素資材の採用(鉄骨材・鉄筋材への電炉鋼材などのリサイクル鋼材)/内装材における低炭素資材の採用(下地材・仕上げ材への再生建材、リサイクル建材)/外皮性能の向上(高断熱窓、高性能断熱材)/高効率設備等の導入(高効率空調、照明への人感センサー、高効率給湯器、変圧容量の小さい変圧器、省エネ型昇降機)/廃棄物量の削減(簡易梱包、杭残土の活用、通い箱の再利用、再生資材の採用) |
| 選択項目 「効果的な取組」 「意欲的な取組」 | ここから1メニュー(又は下の行から2メニュー) | 外装材における低炭素資材の採用(グリーンアルミ)/再生可能エネルギーの採用(現場エネルギーに再エネ電力の導入)/既存躯体利用(既存躯体の再利用、既存杭・地下躯体の利用)/構造の合理化(免震構造の採用=上部構造部材の軽量化・長寿命化/木造・木質化=軽量化、躯体量の削減)/改修容易な仕様の採用(改修を見据えたスペース確保、階高を高く設計)/躯体における低炭素資材の採用(低炭素型コンクリート、CO2吸収・固定型コンクリート、木材)/再エネ設備の導入(太陽光発電設備、太陽熱利用、地中熱利用=段階2以上の容量)/エネルギーマネジメントを見据えた設計(エネルギーマネジメントシステムの導入)/フロン漏洩の低減(ノンフロン・低GWP型冷媒空調機器)/工事車両の脱炭素化(バイオ燃料・水素燃料等の使用、電動式重機の使用) |
| 選択項目 「検討すべき取組」 「採用しやすい取組」 | ここから2メニュー(又は上の行から1メニュー) | 資材数量削減(合成小梁の採用=「採用しやすい取組」/ロングスパンの中止=「検討すべき取組」)/水使用の合理化(雨水利用)/配管・吊り金物削減(空調吹出し形式によるダクトの削減)/フロン漏洩の低減対策の検討(フロン漏洩検知機能付空調機)/プレキャスト工法の採用(プレキャストコンクリート等の工業化工法) |
出典:別紙1 p23。原文の構成は「①『誘導すべき取組』の必須項目を全て行っている」+「②『誘導すべき取組』『意欲的な取組』の選択項目のうち、ア『効果的な取組』『意欲的な取組』から1メニューを採用、又は イ『検討すべき取組』『採用しやすい取組』から2メニューを採用」です。なお原典の「複数記載の取組はそのうち1つ以上を実施」という注記は、原典の1つの「種別」の中に複数の対策が並んでいる場合の読み方です(例:「外皮性能の向上」の高断熱窓と高性能断熱材)。上の表は紙面の都合で種別をまとめて並べているので、必須項目の行全体から1つ選べばよい、という意味ではありません。
別紙1の23頁の冒頭には「カーボン削減対策の具体的な水準については、今後、ガイドライン等を整備し公開する予定。」と書かれています。取組のメニューそのものは表9のとおり公表されましたが、それぞれをどの水準まで行えば「行っている」と認められるのかは、この資料には示されていません。たとえば「躯体における低炭素資材の採用」がどの比率から該当するのか、段階2で示す削減割合の目標値をいくつに置けばよいのかは、別紙1からは読み取れず、今後のガイドライン等を待つことになります。
評価項目の再編についても、方向は前回記事のとおりです。低炭素資材は躯体に使用した場合に加点評価する形に改められ、EPD(環境製品宣言)等の利用が新設されます。「建設に係る環境負荷低減への配慮」は整理・統合され、建設現場における取組の評価に見直されます。別紙1のp21で「継続」と明示されているのはオゾン層の保護及び地球温暖化の抑制と建設副産物の有効利用及び適正処理の2項目(持続可能な型枠の利用は「移動・継続」)です。それ以外の項目の根拠資料の作り方がどうなるかは、この資料には書かれていません。
表10|今後のスケジュール(別紙1 p18)
| 令和8年9月〜10月 | パブリックコメント(9月9日〜10月9日) |
|---|---|
| 令和8年12月 | 技術検討会開催(パブリックコメントを踏まえた改正案検討) |
| 令和8年度 | 環境確保条例改正 |
| 令和9年度 | 改正制度の説明、周知 |
| 令和10年4月 | 省エネ性能基準 改正施行 |
| 令和10年度 | ライフサイクルカーボン算定・届出義務 施行(国の法施行日と同日を予定) |
出典:別紙1 p18。いずれも「予定」として示されたものです。
意見の出し方は次のとおりです。
表11|意見の提出方法(プレス資料)
| Web | 東京都の意見提出フォーム(LoGoフォーム)から提出 |
|---|---|
| 郵送 | 別紙2「意見提出様式」に記入し、〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 東京都環境局 気候変動対策部 環境都市づくり課 環境建築物担当 宛(10月9日金曜日必着)。封筒の表面に「建築物環境計画書制度の改正についての意見」と記載 |
| 記載事項 | 個人=氏名、お住まいの地域(区市町村名まで)/法人=法人名、所在地(区市町村名まで) |
| 留意事項 | 日本語で記載/個別の回答はなし/氏名・住所等の個人情報を伏せたうえで公開・要約される場合がある |
| 問合せ | 東京都環境局 気候変動対策部 環境都市づくり課 電話 03-5320-7937 |
出典:東京都環境局 プレス資料(令和8年9月8日)。
施行は令和10年4月の予定ですから、明日から書類が変わるわけではありません。ただ、いま基本設計に入っている物件は、設計から竣工までがちょうどその時期に重なってきます。どの時点の計画から新しい基準がかかるのか(経過措置)は、別紙1にもプレス資料にも書かれていませんので、以下はあくまで「早めに手元で確かめておく」ための項目です。当社が実務の立場から見て、確認しておく価値があると考えているのは次の点です。
① 進行中の計画のUA値とBEIを、新しい数値に当ててみる。すでに外皮計算・一次エネ計算をしている物件なら、表2の改正後の数値と突き合わせるだけで済みます。地域区分5〜7の住宅で、UA値が0.8超〜0.87以下、または再エネを除いたBEIが0.85超〜1.0以下にある計画は、改正案の義務基準には届いていません(0.8ちょうど・0.85ちょうどは「以下」なので適合側です)。ただし、その計画に実際に新基準がかかるかどうかは、今後示される適用の条件しだいです。
② 創エネに頼っているBEIを、再エネを除いた値で計算し直す。第04節のとおり、ここが今回いちばん静かな変更です。太陽光の分を差し引かない値がいくつになるかは、既存の計算データから比較的簡単に出せます。3段階評価で段階2・段階3を掲げている計画は、先に見ておくべきです。
③ 段階3を狙う共同住宅は、角住戸等の扱いを確認する。原則は全住戸での適合で、外気等に3面以上面する住戸に限って0.6以下を認め、その場合は全住戸平均0.46以下という条件が付く——という組み立て(第03節の注記の要約です)は、住戸ごとの計算結果がないと判定できません。
④ 意見があるなら10月9日まで。基準値そのものに実務上の無理があると感じる場合、意見を出せるのは9月9日から10月9日までの募集期間だけです。別紙1のスケジュールでは、このあと令和8年12月に技術検討会が開かれ、パブリックコメントを踏まえた改正案の検討が行われる予定です。
なお、当社は東京都の建築物環境計画書の作成代行と、省エネ計算の代行を行っています。今回の改正案が自社の進行中案件にどう効くか整理したい、という段階のご相談も承っています。
まだ決定ではありません。東京都が2026年9月8日に公表したのは「改正(案)」で、9月9日からの意見募集にかけられる段階です。別紙1の18頁に示されたスケジュールでは、令和8年9月〜10月にパブリックコメント、令和8年12月に技術検討会(パブリックコメントを踏まえた改正案検討)、令和8年度に環境確保条例の改正、令和9年度に改正制度の説明・周知、そして令和10年4月に省エネルギー性能基準の改正施行、という順序です。つまり、いま設計中・提出中の物件に今日から新しい数値がかかるわけではありません。逆にいえば、数値に意見を出せるのは10月9日までです。
義務基準は0.46ではありません。住宅用途の義務基準(地域区分5〜7)は現行のUA値0.87以下から0.8以下になる案で、0.46は3段階評価の段階3、つまり最高評価の水準です。義務として満たす必要があるのは0.8以下のほうです。そのうえで段階3を狙う場合は条件が付いていて、別紙1の15頁と31頁の注記では「原則として全住戸で適合が必要。ただし、角住戸等(外皮が外気等に3面以上面している住戸)に限りUA値0.6以下を認め、その場合、全住戸のUA値平均が0.46以下であることを条件とする」とされています。住棟平均だけを見ればよい、という書き方にはなっていません。
評価上の影響があります。別紙1の13頁・14頁・15頁で、改正後のBEIは「再エネ(創エネ)を除く値」とすることが示されました。理由として、設備による一次エネルギー消費量の低減を着実に実施すること、ZEB・ZEH水準と評価の整合を図ることが挙げられています。都は再エネ利用設備の設置割合が高い上位3用途(学校等70.0%、工場等34.1%、事務所等31.9%)で検証したうえで「義務基準達成には影響しない」としていますが、これは義務基準についての検証です。3段階評価で上の段階を狙っている計画では、これまで創エネで届いていた分が効かなくなる可能性があります。設備側の一次エネルギー消費量そのものを下げる設計に切り替える必要があるか、早めに確認しておくのが安全です。
別紙1の18頁のスケジュールでは、省エネルギー性能基準の改正施行が令和10年4月、ライフサイクルカーボンの算定・届出義務の施行が令和10年度(国の法施行日と同日を予定)とされています。この2つの資料に示されているのはこの予定までで、経過措置の内容や、どの時点の計画から新しい基準がかかるのかについては、別紙1にもプレス資料にも記載がありません。したがって「いま進行中の物件がどう扱われるか」は、この2つの資料からは読み取れません。条例・規則・指針の改正が令和8年度中に行われる予定なので、具体的な適用の線引きはその段階で示されるものと考えられます(これは当社の見方で、都が予告したものではありません)。
義務の対象として示されているのは、5,000㎡以上の事務所用途の新築等(新築・増築または改築の部分が5,000㎡以上)です。国の建築物省エネ法に整合させる形で、制度開始は2028(令和10)年度予定、国の施行日と同日とされています。それ以外の建物は、国が定めた算定方法で算定した結果を任意で提出できる扱いです。ここで注意していただきたいのは、建築物環境計画書制度そのものの対象は延べ面積2,000㎡以上だという点です。5,000㎡以上・事務所用途というのはライフサイクルカーボン算定の義務がかかる線であって、計画書の提出義務の線ではありません。混ぜて読むと自分の物件を誤判定します。
Webフォームか郵送のどちらかです。Webは東京都の意見提出フォーム(LoGoフォーム)から提出します。郵送は別紙2の意見提出様式に記入して、〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 東京都環境局 気候変動対策部 環境都市づくり課 環境建築物担当 宛に送ります(10月9日金曜日必着、封筒の表面に「建築物環境計画書制度の改正についての意見」と記載)。提出にあたっては、個人の方は氏名とお住まいの区市町村名まで、法人の方は法人名と所在地の区市町村名までを記載します。意見は日本語で記載すること、個別の回答はないこと、氏名・住所等を伏せたうえで公開・要約される場合があることが留意事項として書かれています。
2026年4月の見直しと、英国の改正案との違い。
DOEの費用対効果の計算方法の見直しと、IECCの基本版・上乗せ版への分割。
第四次答申で決まっていること・まだ示されていないこと。
RE2020の算定範囲と上限値の補正、日本の算定ルール案との違い。
地上階床面積の40%×0.22kWp/㎡の年間発電量。東京都の総量方式との違い。
法第30条の2「同等性の認定」。誘導基準に「同等以上」で性能向上計画認定と容積率の特例。
日本国内の物件・標準算定法v2.0以降という条件つき。
この記事の前編。7月の技術検討会資料にもとづく改正の方向。
東京都の環境計画書と根拠資料の作成をお引き受けします。
国の制度(建築物通算炭素排出量評価)の側。
角住戸と中住戸でUA値が変わる理由。
段階3のUA値0.46が参照した判断基準。
都内の制度と手続きをまとめています。
Sources — 出典・参考資料
東京都環境局「東京都新築建築物制度改正等に係る技術検討会」(ページ更新日 2026年9月8日)。意見募集の告知・別紙1・別紙2・プレス資料はすべてこのページに掲載されています。
同「別紙1 建築物環境計画書制度の改正(案)について」(令和8年9月・全33頁)。本記事の第02節〜第06節の数値・条件と、第07節のスケジュール(表10)は、この資料によります(義務基準 p14/3段階評価 p15/再エネを除く扱い p13/達成率 p25・p26・p30・p31・p32/ライフサイクルカーボン p8・p9・p10・p21・p22・p23/スケジュール p18。第07節のスケジュールもこの資料によります)。
同「プレス資料 建築物環境計画書制度の改正についてご意見を募集します」(令和8年9月8日・全2頁)。募集期間・提出方法・留意事項・問合せ先はこの資料によります。
同「別紙2 意見提出様式」(全3頁)
東京都「意見提出フォーム(LoGoフォーム)」
東京都環境局 第9回 技術検討会(2026年7月28日開催)「資料1 建築物環境計画書制度(大規模)の強化・拡充について(第9回)」。第01節の「7月の時点では具体的な基準値が示されていなかった」は、この資料 p2 の「具体的な基準値は、技術検討会での意見を踏まえ設定」という記載によります。
※引用中の算用数字と英字(ZEB・ZEH・GX 等)は、読みやすさのため半角に統一しています(原典は一部が全角で表記されています)。改行位置も本文の体裁に合わせています。語句の省略・言い換えは行っていません。
※本記事で「改正後」として紹介した基準値・評価条件は、いずれも「改正(案)」の内容であり、確定した基準ではありません(現行基準の値と達成率の実績は、都が公表した現状の数値です)。今後のパブリックコメントと令和8年12月の技術検討会を経て変わる可能性があります。
※建築物環境報告書制度(中小規模建物)の改正案は、今回の意見募集の資料には含まれていません。本記事は建築物環境計画書制度(大規模建物)のみを扱っています。
※段階2・段階3で求められるカーボン削減対策の具体的な水準は未公表です。別紙1 p23 に「今後、ガイドライン等を整備し公開する予定」と記載されています。本記事はその中身を予測していません。
※改正後の基準が、いつ時点の計画から適用されるのか(経過措置)は、別紙1・プレス資料のいずれにも示されていません。FAQ④(第09節)で述べた「条例・規則・指針の改正の段階で示されるものと考えられます」は当社の見方であり、都が予告したものではありません。
※第08節の「いまのうちにできること」は当社の実務判断による整理であり、一次資料にそのまま書かれているものではありません。
※本記事は2026年9月8日時点で確認できた内容です。