建物の認証が「省エネ」の外側へ広がっています。既存オフィスのウェルネス性をより短期に簡略的に評価するCASBEE-ウェルネス不動産、都市緑地法に基づいて国土交通大臣が緑地の質と量を認定するTSUNAG認定、自然災害に対する不動産のレジリエンスを5段階で認証するResReal認証。制度の紹介で終わらせず、対象・費用・実績と、当社がすでに作っている根拠資料とどこが重なるのかまで、一次資料にあたって整理しました。
① CASBEE-ウェルネス不動産は既存(竣工後1年以上)の事務所が対象。評価マニュアル2026年版は2026年3月25日公開、IBECsの先行評価認証は上限15件・2026年9月30日で締切。② 認証費用は143,000円〜264,000円(税込)で、ウェルネスオフィス(308,000円〜990,000円)よりかなり低い。③ TSUNAG認定は都市緑地法に基づく国土交通大臣の認定。緑地の「質」を150点満点で採点し、質と量の両方で★〜★★★のランクが付く。④ 認定は累計19件(令和7年10月24日時点)。2027年4月から緑地面積の要件が1,000㎡以上→500㎡以上に緩和される。⑤ ResReal認証は水害版(2023年1月〜)と地震版(2025年6月〜)が稼働中。Platinum〜Standardの5段階で、認証取得は40件(2026年9月時点)。⑥ 3制度とも省エネ適判やBELSの代わりにはならないが、根拠資料は東京都の環境計画書と大きく重なる。
当社の主な仕事は省エネ計算と省エネ適合性判定の申請代行、そして東京都の建築物環境計画書です。どれも数字で適合を示す手続で、見る指標もはっきりしています。外皮平均熱貫流率、冷房期の平均日射熱取得率、BEI。
ところが最近、建築主から相談を受ける認証の名前が変わってきました。ウェルネス、生物多様性、レジリエンス。省エネ計算の外側にある評価軸です。しかもそれぞれに、制度としての器がすでに用意されています。
この3つは、どれも省エネ計算の結果がそのままグレードになる関係にはありません。それでも当社が把握しておくべきだと考えるのは、提出する根拠資料の中身が、いま作っているものとかなり重なるからです。ハザードマップ、緑化計画図、在来種の一覧、雨水貯留槽の図面。すでに東京都の環境計画書のために毎回作っている素材です。
優良緑地確保計画認定制度の愛称は「TSUNAG(ツナグ)」で、末尾に U は付きません。To Secure Urban Nature and Greenspace の頭文字で、国土交通省が令和6年に愛称として決定したものです。「TSUNAGU認定」と書かれた資料を見かけますが、国土交通省の報道発表・制度ホームページ・ロゴマークはいずれも TSUNAG です。検索するときも TSUNAG のほうが確実です。
先に全体像を置きます。誰が認定するのか、何を評価するのか、いくらかかるのかが制度ごとにかなり違います。
表1|CASBEE-ウェルネス不動産・TSUNAG認定・ResReal認証の比較
| 項目 | CASBEE-ウェルネス不動産 | TSUNAG認定 | ResReal認証 |
|---|---|---|---|
| 評価するもの | 建物のウェルネス性(安全・安心/健康性・快適性/知的生産性向上) | 緑地の「質」(気候変動対策・生物多様性の確保・Well-beingの向上等)と「量」 | 自然災害に対する不動産のレジリエンス |
| 根拠 | 民間の評価認証制度(CASBEE評価認証制度) | 都市緑地法(第87条 指針・第88条等 認定) | 民間の認証制度 |
| 認定・認証する者 | 一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBECs) | 国土交通大臣 | 一般財団法人 日本不動産研究所(評価はイー・アール・エス、建設技術研究所) |
| 対象 | 既存(竣工後1年以上)の事務所、または複合用途建築物の事務所用途部分 | 都市計画区域等内の緑地を含む敷地等における緑地確保事業(新規創出/既存緑地の質の確保・向上) | 日本国内の不動産(土地・建物・その運用)。用途・規模の制限なし、戸建住宅は対象外 |
| 申請できる者 | 原則として建築主または所有者 | 民間事業者等(地方公共団体を含む)で、土地の地権者または同意を得て事業を行う者 | 建物所有者、信託受益者またはこれに準ずる者 |
| 格付け | 認証タイプ1(ウェルネス不動産)/タイプ2(スマートウェルネス不動産)を選択。格付けは評価マニュアルの定めによる | ★/★★/★★★(質と量の両方の評価レベルで決まる) | Platinum/Gold/Silver/Bronze/Standard の5段階 |
| 有効期間 | 認証書交付日から5年間 | 計画期間5年(更新可・1年ごとに定期報告) | 運用認証3年(モニタリングで最大5年)/計画認証3年 |
| 費用 | 143,000円/198,000円/264,000円(延べ面積による・税込) | 都市緑地法に基づく認定(手数料等は政令で規定) | 運用認証(新規)700,000円/件〜、計画認証 1,500,000円/件〜(税抜) |
| 実績 | 先行評価認証・受付上限15件(2026年9月30日締切) | 累計19件(令和7年10月24日時点) | 40件(非公開物件を含む・2026年9月時点) |
出典:IBECs「CASBEEウェルネス不動産先行評価認証」および同申請要領(ver0.0 2026年4月版)/国土交通省「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)の概要」(令和6年11月1日 報道発表 別紙4)および認定に関する各報道発表/ResReal「認証依頼要領書」(2025年6月改訂)および同ホームページ。TSUNAG認定の手数料の額は本記事では確認していません。
3つのうちTSUNAG認定だけが法律に基づく国の認定です。しかも認定するのは建物ではなく「優良緑地確保計画」という計画そのもので、認定においては計画期間の開始から5年後時点に想定される緑地の状態を評価します。1年ごとの定期報告が義務づけられ、評価基準に適合しない場合は助言や改善命令の対象、改善命令に従わない場合は認定取消しとなります。取ったら終わりの認証ではありません。
IBECs(一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター)は、CASBEE-ウェルネス不動産を次のように位置づけています。
「CASBEE-ウェルネス不動産は、不動産マーケット関係者がより短期に簡略的に建物のウェルネス性の評価・格付けを取得でき、市場における建物性能の情報インフラとなることで、将来的に建物のウェルネス性評価結果が不動産鑑定基準に反映されることを目的とした評価ツールです。」
評価マニュアル(2026年版)は2026年3月25日に公開され、IBECsによる先行評価認証申請の受付が2026年4月7日に開始されました。ここで注意が要るのは受付の期限です。
IBECsは、先行評価認証の受付上限数を15件とし、上限に達した時点で締め切るとしています。さらに2026年7月2日に、受付上限数に関係なく9月30日で締め切ることを告知しました。申請を希望する場合は、事前に申請スケジュール等をIBECsへ連絡するよう案内されています。締切後の取扱いは、当社が2026年9月2日時点で確認できた範囲では公表されていません。「先行」評価認証という名称からは本格運用への移行が想像されますが、時期や内容の予告は見つかりませんでした。
評価対象は既存(竣工後1年以上)の建物用途が事務所の建築物、又は複合用途建築物における事務所用途部分です。新築は入りません。認証のタイプは2つから選べます。
認証費用はタイプ1・タイプ2で同額です。延べ床面積2,000㎡未満が143,000円、2,000㎡以上10,000㎡未満が198,000円、10,000㎡以上が264,000円(いずれも税込)。認証の有効期間は認証書を交付した日から5年間です。
表2|CASBEE-ウェルネス不動産とCASBEE-ウェルネスオフィスの対照
| 項目 | CASBEE-ウェルネス不動産(WR) | CASBEE-ウェルネスオフィス(WO) |
|---|---|---|
| 評価対象 | 既存(竣工後1年以上)の事務所、または複合用途建築物の事務所用途部分 | 事務所の建築物、または複合用途建築物の事務所用途部分(竣工後の年数の要件なし) |
| 大分類 | Qw1 安全・安心/Qw2 健康性・快適性/Qw3 知的生産性向上 | Qw1 安全・安心性/Qw2 健康性・快適性/Qw3 知的生産性向上 |
| 評価マニュアル | 2026年版・A4判 56頁・4,400円(税込) | 2025年版・A4判 124頁・4,840円(税込) |
| 評価の実施者 | 申請要領は「申請者は…自主評価した結果と評価根拠を説明する資料…を作成し、提出してください」(評価員に関する条項なし) | 申請要領に「CASBEEウェルネスオフィス評価員が評価を実施し、申請図書を作成していること」と明記 |
| 認証費用(IBECs) | 143,000円〜264,000円(税込・延べ面積の3区分) | 308,000円〜990,000円(税込・延べ面積3区分×評価パターン)。更新は187,000円〜583,000円 |
| 受付 | 先行評価認証。IBECsのみで受付・審査、上限15件、2026年9月30日締切 | 2021年度から期間を設定せず随時受付。IBECsおよびIBECsが認定した評価認証認定機関 |
| 有効期間 | 5年間 | 5年間 |
出典:IBECs「CASBEEウェルネス不動産先行評価認証」「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」の各ページ、CASBEEウェルネス不動産先行評価認証 申請要領(ver0.0 2026年4月版)、CASBEEウェルネスオフィス評価認証 申請要領(Ver5.0 2026年1月版)、IBECs図書販売ページ。
CASBEE-ウェルネスオフィスの申請要領には「CASBEEウェルネスオフィス評価員が評価を実施し、申請図書を作成していること(申請時に当財団に登録されている評価員であることが必要です)」という条項があります。一方、CASBEEウェルネス不動産の申請要領には同じ条項がありません。しかし同じ要領に添付された申請書の様式には「CASBEEウェルネスオフィス評価員登録番号」の記入欄があり、評価結果表示書の見本にも評価員番号の欄が置かれています。
要領本文と様式で読み取れることが食い違っているため、当社は「評価員が不要」とは判断していません。申請を検討される場合は、この点をIBECsに直接確認してください。当社が2026年9月2日時点で確認した内容です。
なお評価員のほうも動きがあります。第7回(2026年度)CASBEEウェルネスオフィス評価員 講習・試験の申込受付が2026年9月2日から10月2日までで開始されました。講習はオンラインの収録配信(視聴期間2026年10月13日〜10月25日)、試験は2026年11月4日に東京の実会場で90分・30問4択のマークシート方式、定員100名です。使用テキストは「CASBEE-ウェルネスオフィス評価マニュアル(2025年版)」で、CASBEE建築評価員として登録されている方には試験免除の特例があります(受講と登録は必須)。
TSUNAG認定は、正式には優良緑地確保計画認定制度です。国土交通省が「まちづくりGX」の一環として、令和6年11月に施行された改正都市緑地法に基づいて創設しました。国土交通省の説明はこうです。
「都市緑地法に基づき、民間事業者等による良質な緑地確保の取組を、国土交通大臣が気候変動対策・生物多様性の確保・Well-beingの向上等の「質」と緑地の「量」の観点から評価・認定する制度。」
認定に当たっては、国土交通大臣が策定する緑地確保指針(民間事業者等が緑地を整備・管理する際に講ずべき措置を規定)への適合性を審査します。
対象となる事業は①新たに緑地を創出し、管理する事業と②既存緑地の質の確保・向上に資する事業の2つです。対象主体は民間事業者等(地方公共団体も含む)で、土地の地権者、または地権者から同意を得て事業を行う者。対象エリアは都市計画区域等内の緑地を含む敷地等です。ここでいう緑地には、樹林地・草地のほか屋上緑化・壁面緑化、人工地盤上の緑地、農地も含まれます。
認定対象区域は原則として「緑地を含む敷地全体」です。ただし複数の緑地をまとめて申請できる場合があります。
規模の要件は、令和8年度までは緑地面積1,000㎡以上かつ緑地割合10%以上です。さらに計画における緑地の量が従前の土地利用よりも減少する事業は、原則として認定の対象としないという条件があります。ここでいう「従前」は、2020年時点または計画申請時点のうち緑量の多い方です。
表3|TSUNAG認定の評価の枠組みと認定ランク
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 合計点数 | 150点満点で評価。うちコア項目が120点満点(必須70点・選択50点) |
| コア評価の領域 | 気候変動対策【10項目】/生物多様性の確保【12項目】/Well-beingの向上【13項目】/先進的取組【1項目】 |
| 必須と選択 | 必須項目14項目、選択項目は22項目のうち10項目を選ぶ |
| 地域の価値向上 | 6項目。該当する評価項目の点数に上乗せしてカウントされる(例:評価項目32はレベル5で Well-being 5点+地域の価値 5点=10点) |
| ベース評価 | マネジメント・ガバナンス【9項目】/土地・地域特性の把握・反映【5項目】。適合判定のみで点数化しない |
| 採点の刻み | 各項目レベル0/1/3/5 で、そのまま0点/1点/3点/5点 |
| 認定の下限 | 緑地面積・緑地割合等の要件を満たしたうえで、緑地の質として合計50点以上 |
| 量のレベル | 緑地割合 A:10%以上20%未満/AA:20%以上30%未満/AAA:30%以上 |
| 質のレベル | 合計点数 A:50〜74点/AA:75〜99点/AAA:100点以上 |
| ランク | 量と質の両方が該当するレベルでランクが付く。★(シングル・スター)/★★(ダブル・スター)/★★★(トリプル・スター)。たとえば「量:A、質:AA」なら★ランク |
出典:国土交通省「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)の概要」(令和6年11月1日 報道発表 別紙4・全14頁)の7〜12頁。評価項目は全50項目(コア評価 No.1〜36、ベース評価 No.37〜50)で構成されています。コア評価36項目は必須14項目+選択22項目で、必須14項目×5点=70点、選択10項目×5点=50点、合わせて120点。残る30点は「地域の価値向上に資する項目」6項目×5点の上乗せ分にあたる、というのが当社の読みです(資料に点数の内訳の明記はありません)。
評価項目の中身は、当社が東京都の建築物環境計画書で扱っている論点とかなり近いところにあります。生物多様性の確保では「地域に根差した植生の保全・創出」が、まとまった緑地面積もしくは緑地全体の面積を構成する樹木および草本(低木・地被類を含む)の在来種の比率で採点されます。レベル1が30%以上50%未満、レベル3が50%以上、レベル5が50%以上かつ地域性種苗です。ほかにも階層構造の形成、エコトーンの形成、外来種の侵入防止・防除、化学農薬・化学肥料の使用量削減、環境教育の実施が並びます。
気候変動対策では「緑地による温室効果ガスの吸収」がCO2吸収量/敷地面積で採点され、レベル1が0.2kg/㎡以上、レベル3が0.4kg/㎡以上、レベル5が0.6kg/㎡以上です。ほかに木材利用による炭素貯蔵、地表面温度の抑制、緑陰による熱中症対策、雨水の貯留浸透、再生材の使用があります。
財政支援として、優良緑地確保支援事業資金(都市開発資金)による無利子貸付(貸付対象額の1/2以内)と、グリーンインフラ活用型都市構築支援事業による補助(補助対象費の1/2以内)があります。2025年度からは防災・省エネまちづくり緊急促進事業でも「優良緑地確保計画の認定基準に適合すること」が選択要件の一つに位置づけられ、認定の取得により補助率を上げることが可能とされています。
加えて金融・開示の枠組みとの接続が進んでいます。TSUNAG認定は、GRESBの評価項目のうち「グリーンビル認証」に位置づけられ(2025年4月の申請から適用)、グリーンボンド等の資金使途となる適格なグリーンプロジェクトを整理したグリーンリストに位置づけられ(2025年7月より掲載)、TNFDの建設・不動産等分野向け追加ガイダンスにおいて評価・開示の際の出典の一つとして記載されています(2025年1月公表)。
認定実績は、第1号が令和7年3月18日に14件、2025年度分が令和7年10月24日に6件(内1件は変更認定)で、この時点の認定計画数は合計19件です。申請から認定までは①申請受付、②予備審査(事務局→審査委員)、③本申請、④審査(審査委員会)、⑤認定という流れで、審査委員会を経て国土交通大臣が認定します。
令和8年度のスケジュールは、国土交通省の報道発表(令和8年4月1日)によれば4〜6月が事前相談期間、7〜8月が申請受付、審査を経て令和9年2月頃の認定を予定。認定式は令和9年初夏(5月から6月頃)に横浜グリーンエクスポ(2027年国際園芸博覧会)の会場で実施予定とされています。
いまTSUNAG認定を検討している方にとって、いちばん重要なのはここだと当社は考えます。令和9年度(2027年4月)から評価基準が見直されます。令和8年4月1日の報道発表の別添「TSUNAGの評価基準見直しの主なポイント(R9年度より適用)」に、内容が示されています。
見直しの背景として国土交通省が挙げているのは次の3点です。
これを踏まえ、令和7年10月と12月に有識者会議を開催して評価基準等を見直したとされています。
表4|TSUNAG認定 令和9年度からの主な見直し(2027年4月より適用)
| 項目 | 令和8年度まで | 令和9年度から |
|---|---|---|
| 緑地面積 | 緑地面積1,000㎡以上の事業が認定対象 | 緑地面積500㎡以上の事業が認定対象(認定ランクは1,000㎡未満も1,000㎡以上と同様の考え方を適用) |
| 雨水の貯留浸透 | 選択項目 | 必須項目(必須化にあたって要件を緩和) |
| 水使用量の削減 | 「緑地雨水再利用率」を評価(レベル4,5)。領域は「生物多様性の確保」 | 「降雨を活用した潅水」を評価(レベル4,5)に変更。領域は「気候変動対策」へ移動 |
| 緑陰による熱中症対策 | 「地域の価値向上」対象外 | 「地域の価値向上」対象(本項目を高く評価) |
| 沿道緑化 | 「地域の価値向上」対象外 | 「地域の価値向上」対象(評価基準も見直し) |
| ユニバーサルデザイン | コア評価項目 | 分割してベース評価項目+コア評価項目(選択項目)に変更(レベル1基準を新規設定) |
| 地域と連続した歩行可能な空間の形成(No.32) | 独立した評価項目 | 「No.23 公開性の確保」に統合し削除 |
| 階層構造の形成/エコトーンの形成/外来種の侵入防止・防除 | — | 評価基準の明確化(趣旨の明確化) |
出典:国土交通省「【別添】TSUNAGの評価基準見直しの主なポイント(R9年度より適用)」(令和8年4月1日 報道発表 別添)および同「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)の評価基準等の見直しについて」(2026年2月・全25頁)の5〜7頁。
面積要件が半分になる理由が明記されています。この制度は「緑地の上位20%が認定を受ける水準となることを目指す」ものとされ、当初は東京都における緑地面積・割合の状況から基準を設定していました。一方で東京都以外の都市では、緑地面積1,000㎡以上かつ緑地割合10%以上の事業の割合が10〜15%程度、緑地面積500㎡以上かつ緑地割合10%以上の事業の割合が20〜30%程度となっている。そのため東京都以外の都市においても「上位20%」となるよう、緑地面積の基準を引き下げる——という説明です。東京都内の物件には効きにくい緩和だという読み方もできます。
ここから当社が実務として考えることは2つです。以下は一次資料に書かれていない当社の判断です。
ResReal(レジリアル)は、自然災害に対する不動産のレジリエンスを定量化・可視化する認証制度です。認証機関は一般財団法人 日本不動産研究所、評価機関は株式会社イー・アール・エスと株式会社建設技術研究所。開発時は「D-ismプロジェクト」の名称で、民間企業の有志により3年かけて検討され、2023年1月に正式に認証を開始しました。
評価対象は日本国内の不動産(土地、建物、及びその運用)です。用途や規模による制限は特にないとされ、事務所・集合住宅・物流施設・商業施設・ホテル・レジャー施設・ヘルスケア施設・病院・データセンター等が挙げられています。ただし戸建住宅は評価の対象外です。
レジリエンスの評価軸は①頑強性(立地・建物)②冗長性③即応性④代替性の4要素で、これに⑤先進的取組・地域貢献を加えて評価します。立地や建物の性能などのハード面だけでなく、災害時用の備蓄や防災訓練などのソフト面も考慮されます。
表5|ResReal認証の5段階グレード(水害版)
| グレード | 星 | スコア | 評価 |
|---|---|---|---|
| Platinum | ★★★★★ | 90点以上 | レジリエンスが極めて高い |
| Gold | ★★★★ | 80点以上90点未満 | レジリエンスが大変高い |
| Silver | ★★★ | 65点以上80点未満 | レジリエンスが高い |
| Bronze | ★★ | 45点以上65点未満 | レジリエンスがやや高い |
| Standard | ★ | 15点以上45点未満 | レジリエンスが一般的である |
出典:ResReal「回答用スコアリングシート 入力手引書(水害版)」2.5節および「認証依頼要領書」(2025年6月改訂)6頁。
評価メニューは自然災害ごとに用意され、提供が始まっているのは水害版(外水氾濫・内水氾濫)と地震版です。高潮版・土砂災害版・猛暑版・噴火版は検討・開発中とされています。
表6|ResReal認証の認証種別・有効期間・費用
| 認証種別 | 内容 | 有効期間 | 費用(税抜) |
|---|---|---|---|
| 計画認証 (水害版のみ) | 設計・建設中の建物を含む不動産について行う認証。一次評価と本評価の2段階で、本評価は建築確認後に限る | 認証日から3年(延長制度なし) | 1,500,000円/件〜 |
| 運用認証(新規) | 現に存する不動産について新規に行う認証 | 認証日から3年 (最大5年) | 700,000円/件〜 |
| 運用認証(継続) | 既存認証の有効期間満了時に行う認証 | 同上 | 560,000円/件〜(20%OFF) |
| 運用認証(変更) | 既存認証の認証内容に関わる変更があった場合 | 既存認証の有効期間を継承 | 350,000円/件〜(50%OFF) |
| 運用認証(引継) | 認証建物の所有権移転等に際し、新規の建物所有者等に認証を引継ぐ | 同上 | 200,000円/件〜(約70%OFF) |
| モニタリング | モニタリング期間内に認証の有効性を確認し、有効期間の延長を認めるもの | 有効期間を5年に延長 | 無償 |
出典:ResReal「認証依頼要領書」(2025年6月改訂)11頁(水害版)・21頁(地震版)。対象不動産が複数棟により構成されている場合等、特別な手間を要する物件には追加費用が必要とされています。運用認証の有効期間は3年で、有効期間末日から遡って1年のモニタリング期間に延長を申請し、認証の有効性が確認できた場合に限り2年延長されます。
評価の前提となるリスクの取り方も公開されています。水害版では外水氾濫は年超過確率1/200の際の最大浸水位を評価基準とし、国土交通省・都道府県が公表する洪水浸水想定区域図等を用いて算定します。内水氾濫は全国一定の条件で行った公表データがないため、建設技術研究所が保有する全国内水リスクモデルによる想定最大規模の最大浸水位を採用し、自治体が内水を考慮した浸水想定区域図を公表している場合はいずれか大きい方を基準とします。地震版は地震PMLを指標に、最大予測震度も考慮し、液状化(微地形区分またはPL値)と津波(想定最大規模の浸水想定の有無と浸水深)を評価します。
認証依頼要領書には「認証・評価機関は、公正中立な立場から認証を行うため、本認証の評価内容に関する助言等は一切行っておりません。本認証の評価内容に関する助言等が必要な場合には、別途、第三者のコンサルティング会社等にご依頼ください」と明記されています。評価を上げるための相談先は、認証機関ではありません。スコアリングシートは依頼者の申告に基づくもので、依頼者は申告内容に関する表明及び保証の義務を負い、虚偽の申告があった場合は認証が取り消しとなる場合があるとされています。
認証取得の実績は、2026年9月現在で認証取得物件の総数(非公開物件を含む)が40件と公表されています。公表されている事例には、交洋不動産株式会社の「北洋大通センター」「北洋ビル」(2026年5月に水害版、2026年6月に地震版)、ラサールロジポート投資法人ほかの物流施設(2024年12月に水害版でPlatinum)などがあり、事務所と物流施設が中心です。標準的な運用認証(新規)の所要期間の目安は最短12週間程度(3か月程度)とされています。
オプションとして想定被害額の算定もあります。簡易版が50,000円(地盤面から45cmの浸水を一律に想定するもので、水災保証の床下浸水の基準に対応)、ResReal反映版が600,000円(年超過確率1/200規模の外水氾濫と想定最大規模の内水氾濫を想定・いずれも税抜)。TCFD提言に沿った情報開示や損害保険会社のリファイナンス検討にも活用できるとされています。
ここまでを整理すると、3制度はどれも省エネ計算とは別の軸を評価しています。それでも当社が追いかけている理由は、提出する根拠資料が、いま毎回作っているものと重なるからです。以下は一次資料に書かれていない当社の実務判断です。
使い回しは制度側も想定しています。CASBEEウェルネス不動産先行評価認証の申請要領には「各資料に使用する図面等は、諸申請に使用したものを活用していただいて差し支えありません」と明記されており、根拠等を説明した部分を枠で囲む、評価する取組みについての説明箇所に取組み番号を記入するなど、審査ポイントをわかりやすく表記することが求められています。当社が東京都の環境計画書の根拠図で毎回やっている、赤枠と黄色コールとインデックスの作り方そのものです。
同じハザードマップを使うとしても、求められる説明の粒度は制度ごとに違います。ResRealは年超過確率1/200の最大浸水位という全国一律の基準で評価しますし、内水氾濫については建設技術研究所の全国内水リスクモデルによる評価が前提になります。東京都の環境計画書のために作った浸水深の図が、そのままResRealのスコアの根拠になるわけではありません。素材が共通なので手戻りが少ない、という水準の話とお考えください。
当社は省エネ計算・省エネ適合性判定の申請代行、東京都の建築物環境計画書、CASBEE・BELSの評価取得を扱っています。上に挙げた根拠図はすべて日常的に作っているものです。これらの認証を検討していて、いま手元にある図面でどこまで足りるのか知りたいという段階のご相談も承ります。お見積り・ご相談からお気軽にお声がけください。
対象がはっきり分かれています。CASBEE-ウェルネス不動産は「既存(竣工後1年以上)の建物用途が事務所の建築物、又は複合用途建築物における事務所用途部分」に限られます。TSUNAG認定は建物ではなく「緑地確保事業」を認定するもので、都市計画区域等内の緑地を含む敷地等が対象、令和8年度までは緑地面積1,000㎡以上かつ緑地割合10%以上が要件です。ResReal認証は日本国内の不動産(土地・建物・その運用)で用途や規模の制限は特になく、事務所・集合住宅・物流施設・商業施設・ホテル・データセンター等が挙げられていますが、戸建住宅は対象外とされています。分譲マンションで区分所有の場合は、管理組合またはその代表者からの依頼に限られます。
位置づけとしてはそう読める記述になっています。住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)はCASBEE-ウェルネス不動産を「不動産マーケット関係者がより短期に簡略的に建物のウェルネス性の評価・格付けを取得でき、市場における建物性能の情報インフラとなることで、将来的に建物のウェルネス性評価結果が不動産鑑定基準に反映されることを目的とした評価ツール」と説明しています。実際、評価マニュアルはウェルネス不動産(2026年版)がA4判56頁、ウェルネスオフィス(2025年版)がA4判124頁で、IBECsでの認証費用も前者が143,000円〜264,000円、後者が308,000円〜990,000円(いずれも税込)と差があります。ただし大分類はどちらもQw1安全・安心、Qw2健康性・快適性、Qw3知的生産性向上の3分野で、簡易版という呼び方はIBECsの用語ではありません。
国土交通省の報道発表(令和8年4月1日)によれば、令和8年度は4〜6月が事前相談期間、7〜8月が申請受付で、審査を経て令和9年2月頃の認定が予定されています。したがって今年度分の受付期間は過ぎている見込みです。最新の受付状況は制度ホームページと都市緑化機構の事務局にご確認ください。そして令和9年度(2027年4月)から評価基準が見直されます。同じ報道発表の別添に見直しの主なポイントが示されており、認定対象となる緑地面積が1,000㎡以上から500㎡以上に引き下げられます。地方都市の事業規模を踏まえた面積要件の緩和です。あわせて「雨水の貯留浸透」が選択項目から必須項目になり、「緑陰による熱中症対策」と「沿道緑化」が地域の価値向上の項目になって高く評価されます。
取れます。ResRealは対象不動産に対する自然災害のリスクを所与としたうえで、それに対する不動産のレジリエンスを評価する仕組みです。運営主体は「立地上リスクのある物件や一度評価を受けた物件であっても、対策の実施などにより評価結果を改善できる可能性があります」と明記しており、浸水リスクがある物件でも対策を施すことで評価結果を大幅に引き上げることも可能だとしています。認証はPlatinum(90点以上)、Gold(80点以上90点未満)、Silver(65点以上80点未満)、Bronze(45点以上65点未満)、Standard(15点以上45点未満)の5段階で、下位のグレードでも認証は認証です。評価は立地や建物の性能などのハード面だけでなく、災害時用の備蓄や防災訓練などのソフト面も考慮されます。
なりません。評価している軸がまったく別です。省エネ適合性判定は建築物省エネ法に基づく手続で、外皮性能(UA値・ηAC値)と一次エネルギー消費量(BEI)を見ます。BELSは省エネ性能表示制度です。一方この3制度が見ているのは、ウェルネス性(CASBEE-ウェルネス不動産)、緑地の質と量(TSUNAG認定)、自然災害に対するレジリエンス(ResReal認証)です。省エネ計算の結果がそのままグレードになる関係にはありません。ただしCASBEE-ウェルネス不動産の認証タイプ2「CASBEEスマートウェルネス不動産」は、CASBEE評価認証・CASBEE自主評価登録・自治体版CASBEEへの届出のいずれかで評価結果がB+以上であることが条件になっています。CASBEE本体の評価は前提として効いてきます。
当社の実務判断としては、かなりの部分が同じ素材から作れると考えています。たとえばハザードマップと想定浸水深は、環境計画書の第2:4(2)ア【自然災害リスクの軽減及び回避】とResReal(水害版)の頑強性(立地)、CASBEE-ウェルネス不動産のQw1-1.3自然災害リスク対策で共通します。緑化計画図と緑化率の計算書、在来種の一覧は、第2:3(2)【緑化】とTSUNAGの「地域に根差した植生の保全・創出」、CASBEE-ウェルネス不動産のQw2-2.2生物多様性の向上で共通します。雨水貯留浸透施設は第2:3(1)ア【雨水浸透】とTSUNAGの「雨水の貯留浸透」で共通します。なおCASBEEウェルネス不動産先行評価認証の申請要領は「各資料に使用する図面等は、諸申請に使用したものを活用していただいて差し支えありません」と明記しています。ただし求められる説明の粒度は制度ごとに違いますので、そのまま提出できるとまでは考えないでください。
2024年版ベースになった採点の表と、2027年3月までの経過措置。
v7の2枚の証書と移行スケジュール。日本のBELS・CASBEEとの違い。
自治体版CASBEEの届出とCASBEE評価認証の取得。
取組・評価書と根拠図の作成から提出まで。
LCCO2算定の義務化と省エネ性能基準の強化。
運用エネルギーからホールライフカーボンへ。
省エネ性能ラベルの取得と表示。
BEI・UA値・ηAC値などの用語を1ページで。
Sources — 出典・参考資料
一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)「CASBEEウェルネス不動産評価認証」(先行評価認証の受付・対象・認証タイプ。本記事の第03節はこのページによります)
同「CASBEEウェルネス不動産先行評価認証 申請要領(ver0.0)」(2026年4月・全12頁。認証費用は5頁、申請図書の構成は6頁)
同「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」および「同 申請要領(Ver5.0 2026年1月版)」(認証費用は4〜5頁)
同「図書/機関誌」(評価マニュアルの頁数と価格)、同「第7回(2026年度)CASBEEウェルネスオフィス評価員 講習・試験」(全8頁)
国土交通省「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)の概要」(令和6年11月1日 報道発表 別紙4・全14頁。本記事の第04節はこの資料によります)
同「良質な緑の創出を目指す「TSUNAG認定」の募集開始」(令和8年4月1日)および「【別添】TSUNAGの評価基準見直しの主なポイント(R9年度より適用)」
同「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)の評価基準等の見直しについて」(2026年2月・全25頁。本記事の第05節と支援措置・国際基準との連携はこの資料によります)
同「「TSUNAG認定」の第1号を認定!」(令和7年3月18日・14件)/同「2025年度「TSUNAG認定」を決定!」(令和7年10月24日・6件、累計19件)
同「都市緑地法に基づく大臣認定制度の愛称を「TSUNAG」に決定」/制度ホームページ「TSUNAG - 優良緑地確保計画認定制度」
ResReal 運営主体「認証依頼要領書」(2025年6月改訂・全35頁。本記事の第06節はこの資料によります)
同「ResRealの概要」「認証事例」(認証取得物件の総数40件は2026年9月時点の記載)/「回答用スコアリングシート 入力手引書(水害版)」(全51頁)
※TSUNAG認定の申請手数料の額は、本記事では確認していません。都市緑地法に基づく政令で手数料が規定されている旨までを記載しています。
※CASBEE-ウェルネス不動産の申請にCASBEE評価員が必要かどうかは、申請要領の本文と申請書の様式で読み取れることが食い違っています。本記事は必要・不要のいずれとも断定していません。IBECsにご確認ください。
※先行評価認証の2026年9月30日締切後の取扱いは、当社が2026年9月2日時点で確認できた範囲では公表されていません。本記事も予測を書いていません。
※第07節の「根拠資料の重なり」と第05節の末尾2項目は当社の実務判断であり、各制度の一次資料に書かれているものではありません。
※本記事は2026年9月2日時点で確認できた内容です。制度の内容・費用・スケジュールは今後変更される場合があります。