LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)の判定に使う「LCCM適合判定ツール」に、新しい版(入力マニュアルの日付は2026年8月)が出ました。 住宅の省エネ計算プログラム(エネルギー消費性能計算プログラム〔住宅版〕)がVer.3.10で、太陽光発電の自家消費分などの符号の表示を「正」に統一したことに合わせたものです。 日本サステナブル建築協会(JSBC)がこの変更に伴って更新したのが、戸建のv2.0と低層共同住宅のv3.0で、どちらも自家消費分などを正の値のまま入力する版です。 新旧の入力マニュアルと判定ツールの式を突き合わせて、版の選び方と、符号を取り違えたときに結果がどちらへずれるかを整理しました。
① 省エネ計算プログラムの「発電設備の発電量のうち自家消費分」などは、Ver.3.9までは計算結果画面で「正」、計算結果PDFで「負」と表示が分かれていた。Ver.3.10で「正」に統一された。 ② 日本サステナブル建築協会(JSBC)は、これに合わせて判定ツールを更新。戸建=2019年版 v2.0、低層共同住宅=2024年版 v3.0が「正」で入力する版。旧版(戸建v1.0・低層共同v2.0)も「負」で入力する版として残っている。 ③ JSBCは入力の符号の変更への対応以外に変更はないとしており、マニュアルの収支の式も項の前の「-」が「+」に替わっただけ。ただしExcelの式では、コージェネの売電量(G)の項も「+」から「-」に書き換えられている。 ④ 符号を取り違えると、収支が実際より有利に出る。コージェネなしなら、ずれは自家消費分の2倍。 ⑤ IBECsのLCCM住宅認定でも、Ver.3.10以降ならv2.0、それ以外ならv1.0を選ぶよう注意書きが出ている。 ⑥ 既存建築物省エネ化推進事業(LCCO2評価実施型)は非住宅の改修が対象で、算定ツールは特定の指定なし(例:J-CAT)。この判定ツールの話ではない。
LCCM住宅は、建設時・運用時・廃棄時までを通して、できるだけCO2を減らし、太陽光発電などでつくるエネルギーも含めて、生涯のCO2の収支をマイナスにする住宅です。LCCM適合判定ツールは、この収支を計算して「適合/不適合」を判定するExcelのツールで、JSBCが開発・公開しています。戸建の「LCCM住宅部門」と、その拡張版の「LCCM低層共同住宅部門」の2種類があります。
判定ツールには、住宅の省エネ計算プログラムの計算結果から、基準一次エネルギー消費量・設計一次エネルギー消費量・発電量などの値を転記します。JSBCのページには、次の趣旨の説明が載っています。
新しい入力マニュアルの表紙の日付は、戸建v2.0・低層共同v3.0とも2026年8月です(当社が2026年10月15日に確認)。省エネ計算プログラムVer.3.10.0は2026年4月の改定版で、2026年10月にはVer.3.11.0も公開されていますが、JSBCとIBECsの案内はいずれも「Ver.3.10以降」として新しい版を指定しています。
JSBCのダウンロード欄には、新旧の版が並んで掲載されています。使う版は、一次エネルギー消費量をどのバージョンのプログラムで計算したかで決まります。
表1|省エネ計算プログラムのバージョンと、使う判定ツールの版
| 部門 | 判定ツールの版 | 自家消費分などの入力 | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| 戸建(LCCM住宅部門) | 2019年版 v2.0 | 正で入力 | プログラムVer.3.10以降の計算結果 |
| 戸建(LCCM住宅部門) | 2019年版 v1.0 | 負で入力 | それ以外(Ver.3.10より前) |
| 低層共同住宅部門 | 2024年版 v3.0 | 正で入力 | プログラムVer.3.10以降の計算結果 |
| 低層共同住宅部門 | 2024年版 v2.0 | 負で入力 | それ以外(Ver.3.10より前) |
出典:JSBC「LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅・建築物に関する研究」のツール・マニュアルのダウンロード欄、IBECs「LCCM住宅認定」ページの注意書き。「使う場面」の戸建の行はIBECsの案内によります。低層共同住宅部門について、JSBCのページはVer.3.10の変更に伴って更新した版(v3.0)と各版の入力の符号を示していますが、プログラムのバージョンとの対応を戸建のように明記した案内は当社が確認した範囲にはなく、「使う場面」は戸建と同じ考え方になると考えられます。対象となる3項目は、PVの自家消費分、CGSの自家消費分、CGSの売電量に係る控除量です。
旧版が残されているのは、Ver.3.10より前のプログラムで計算した物件のためだと考えられます。逆に言えば、旧版を手元に持ったまま新しい計算結果を転記するのが、想定される取り違えの一つです。判定ツールの「判定」シートの見出しには、使用評価ソフトとして「LCCM_2019v2.0」のように版が表示されるので、作業の前に確かめられます。
入力マニュアルは、LCCO2排出量を0以下にするには、次の式で求めるエネルギー消費量の年間収支がマイナスになる必要があるとしています。新旧のマニュアルで、式の書き方は次のように変わりました。
表2|エネルギー消費量の年間収支の式(戸建・入力マニュアルp10〜11)
| 項目 | v1.0(2019年4月) | v2.0(2026年8月) |
|---|---|---|
| B 設計一次エネルギー消費量 | + | + |
| C 発電設備の発電量のうち自家消費分 | -(負の値を入力) | +(正の値を入力) |
| D コジェネ設備の売電量に係る控除量 | -(負の値を入力) | +(正の値を入力) |
| E 発電量(コージェネレーション) | - | - |
| F 発電量(太陽光発電) | - | - |
出典:JSBC「LCCM住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール2019年版 入力マニュアル」ver.1.0/ver.2.0。どちらも「G 売電量(コージェネレーション)は計算過程で用います」との注記があります。低層共同住宅部門(v2.0→v3.0)でも、住戸と共用部分を合算したC(太陽光の自家消費分)・D(コージェネの自家消費分)・E(コージェネの売電量に係る控除量)の前の符号が「-」から「+」に替わっており、F・G・I(その他の設備)は「-」のままです。
旧版は「負の値を引く」、新版は「正の値を足す」ので、マニュアルの式の上では、値を正しい符号で入れれば、どちらも同じ収支になります。JSBCも「上記対応以外の変更はない」としています。
なお、設計一次エネルギー消費量(B)に自家消費分(C)を足し戻し、発電量の全量(F)を差し引く組み立てになっているのは、省エネ計算プログラムの設計一次エネルギー消費量が、太陽光の自家消費分を差し引いた後の値だからだと読み取れます。
取り違え方は2通りあります。旧版(v1.0)に、Ver.3.10以降の「正」の値をそのまま入れる場合と、新版(v2.0)に、Ver.3.9以前のPDFの「負」の値を入れる場合です。マニュアルの式に仮の数値を入れて比べます。
表3|仮の数値で見る、符号の取り違えの影響(戸建・コージェネなし)
| ケース | 式 | 年間収支 |
|---|---|---|
| 正しい入力(v2.0に正の値) | 45,000 + 15,000 - 55,000 | +5,000 MJ/年 |
| v1.0に正の値を入力 | 45,000 - 15,000 - 55,000 | -25,000 MJ/年 |
| v2.0に負の値を入力 | 45,000 +(-15,000)- 55,000 | -25,000 MJ/年 |
数値は説明のための仮の値です(B 設計一次エネルギー消費量45,000 MJ/年、C 自家消費分15,000 MJ/年、F 太陽光の発電量55,000 MJ/年)。判定ツールは、この収支に加えて建設・修繕・更新・解体のCO2なども合わせてLCCO2を計算するため、表の収支の符号がそのまま判定結果になるわけではありません。
どちらの取り違えでも、収支が正しい値より自家消費分の2倍(この例では30,000 MJ/年)だけ小さく、つまり有利に出ます。コージェネを採用して売電する住宅で、コージェネの売電量に係る控除量(D)も取り違えれば、その2倍の分も同じ向きにずれます。この例では、本来は消費が発電を上回る(+5,000)住宅が、発電のほうが多い(-25,000)ように見えます。
判定ツールのExcelの式(「CO2計算」シート)でも、旧版は自家消費分のセルを引き、新版は足すように書き換えられていることを当社で確認しました。同じ式では、コージェネの売電量(G)の項も旧版の「+」から新版の「-」に書き換えられています。JSBCが符号の変更の対象として挙げた3項目には入っていないので、コージェネを採用して売電する住宅では、入力マニュアルの例と照らして入力を確かめることをおすすめします。このGの変更が最終的な判定にどう効くかは、式の差分だけでは確定できません。一方、表3のように自家消費分の符号を取り違えた場合は、不適合のはずが適合に見える方向にずれるので、結果が「適合」と出ても安心せず、入力の符号を確かめる必要があります。
判定ツールの結果がそのまま使われる代表的な手続きが、住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)の「LCCM住宅認定」です。IBECsのページには、判定ツールのバージョンアップについての注意書きが載っています。
表4|LCCM住宅認定(IBECs)の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象建築物 | 新築の一戸建て専用住宅、竣工後3年以内の一戸建て専用住宅 |
| LCCM適合判定ルート | CASBEE-戸建(新築)に基づく「LCCM住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール」で評価した結果が「適合」であること |
| CASBEE認証ルート | CASBEEの戸建評価認証で、環境効率ランクがSまたはA、かつライフサイクルCO2ランクが緑の5つ星であること |
| 判定ツールの版の注意 | 省エネ計算プログラムVer.3.10以降を使う場合は2019年版(v2.0)、それ以外の場合は従来と同じv1.0 |
| 主な提出書類(判定ルート) | 認定申請書、LCCM適合判定結果(判定に必要な資料を含む)、判定ツールの建築士による工事内容確認書、WEB掲載確認書。判定に必要な資料には、一次エネルギー消費量計算結果(住宅版)とその入力根拠(太陽光発電設備・外皮性能の資料)を含む |
| 認定料・期間 | 33,000円/戸(税込)。受付から認定まで通常2週間程度 |
出典:IBECs「LCCM住宅認定」ページ、同「LCCM住宅認定フロー(LCCM適合判定ルート)」(2026.01.05改訂)。
一次エネルギー消費量の計算結果も提出するので、計算に使ったプログラムのバージョンと判定ツールの版が合っていなければ、審査で質疑になることが考えられます(IBECsがそう明記しているわけではありません)。フローには、質疑対応があると認定まで余分に時間がかかることがある、と書かれています。
国の補助事業には、名前に「LCCO2」が付くものがあります。そのうち、2026年秋に公募が予告されている既存建築物省エネ化推進事業(LCCO2評価実施型)は、LCCM適合判定ツールとは対象も算定の道具も別です。
表5|LCCM住宅認定と、既存建築物省エネ化推進事業(LCCO2評価実施型)の違い
| 項目 | LCCM住宅認定(判定ルート) | 既存建築物省エネ化推進事業(LCCO2評価実施型) |
|---|---|---|
| 対象 | 一戸建て専用住宅(新築・竣工後3年以内) | 既存のオフィスビル等の非住宅の省エネ改修 |
| 算定の道具 | LCCM住宅部門の適合判定ツール | 特定の指定なし。資材製造・施工・使用(資材関連・光熱水関連)・解体の5区分で算定でき、数量の分からない部分を合理的なシナリオで算定できるもの(例:J-CAT、One Click LCA) |
| 算定の範囲 | 建設・修繕・更新・解体と、居住時のエネルギー・水 | 改修で解体・廃棄した資材の解体段階と、投入した資材の資材製造・施工・使用(資材関連・光熱水関連)・解体段階。評価年数は用途によらず60年 |
| 今後の予定 | IBECsに申請(受付から認定まで通常2週間程度) | 令和8年度(第2回)の公募が令和8年10月中旬〜11月下旬の予定と予告(詳細は公募開始時に公表) |
出典:IBECs「LCCM住宅認定」ページ、既存建築物省エネ化推進事業「お知らせ一覧」(2026年9月15日更新)、同「公募要領」(v3)1.2、同「既存建築物省エネ化推進事業におけるCO2等排出量の算定・評価の方法」(2026/06)。後者の2つは令和8年度(第1回)の資料で、第2回の要件は公募開始時の資料で確認が必要です。
また、改正建築物省エネ法で導入される建築物通算炭素排出量評価(ライフサイクルカーボンの届出)も、LCCM適合判定ツールとは別の枠組みです。こちらはライフサイクルカーボンの届出の記事で整理しています。
当社では、住宅の一次エネルギー消費量の計算から、CASBEE-戸建の評価、LCCO2の算定までまとめてお受けしています。判定ツールへの転記の確認だけのご相談もお気軽にどうぞ。
一次エネルギー消費量を計算したエネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)のバージョンで決めます。IBECsのLCCM住宅認定のページでは、Ver.3.10以降を使った場合は「適合判定ツール2019年版(v2.0)」を、それ以外の場合は従来と同じ「v1.0」を選ぶよう案内されています。低層共同住宅部門では、日本サステナブル建築協会のページで、v3.0が「正」で入力する版、v2.0が「負」で入力する版と示されています。
日本サステナブル建築協会は、符号の表示の統一への対応のほかに変更はないとしています。入力マニュアルでも、エネルギー消費量の年間収支の式は、自家消費分などの項の前の符号が「-」から「+」に替わっただけで、足し引きする項目は同じです。マニュアルの式の上では、値を正しい符号で入れれば、v1.0とv2.0で同じ収支になる組み立てです。なお、判定ツールのExcelの式では、コージェネの売電量(G)の項の扱いも書き換えられているので、コージェネで売電する住宅では入力マニュアルの例と照らして確認してください。
コージェネがない住宅で、マニュアルの式で確かめると、v1.0に正の値を入れた場合も、v2.0に負の値を入れた場合も、エネルギー消費量の年間収支が正しい値より自家消費分の2倍だけ小さく(有利に)出ます。コージェネを採用して売電する住宅では、さらにコージェネの売電量に係る控除量(D)の符号も取り違えると、その2倍の分も同じ向きにずれます。本来は消費が発電を上回る住宅でも、収支がマイナスに見えることがあるので、適合と出たときほど入力の符号を確かめてください。
IBECsの案内では、Ver.3.10より前のプログラムを使った場合はv1.0を使うとされており、計算し直すよう求める記載はありません。ただし、Ver.3.10より前の計算結果PDFに出ている負の値を、v2.0にそのまま転記すると符号がずれます(Ver.3.9までも、計算結果画面の表示は正でした)。計算結果のプログラムのバージョンと、判定ツールの版がそろっているかを確認してください。
この事業でLCCM適合判定ツールが指定されているわけではありません。この事業は既存のオフィスビル等の非住宅の改修が対象で、CO2等排出量の算定ツールは特定のものの指定はなく、資材製造・施工・使用・解体の段階に分けて算定できることなどの条件を満たすツール(例:J-CAT、One Click LCA)を使うとされています。名前に「LCCO2」が付いていても、LCCM適合判定ツールとは別の算定です。令和8年度(第2回)の公募は10月中旬〜11月下旬の予定と予告されていますが、詳細は公募開始時に公表されます。
2026年4月改定で変わった9項目。
正式版で11項目になった変更と入力画面。
建築物通算炭素排出量評価とLCCO2の計算。
日本国内・BD+C限定の適用条件。
建築評価員が目標ランクから逆算して評価します。
住宅・非住宅の一次エネルギー消費量計算。
Sources — 出典・参考資料
一般社団法人 日本サステナブル建築協会「LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅・建築物に関する研究」(ツール・マニュアルのダウンロード欄)
同「LCCM住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール2019年版 入力マニュアル ver.2.0」(2026年8月)/「同 ver.1.0」(2019年4月)と、判定ツール「2019年版 v2.0」
同「LCCM低層共同住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール2024年版 入力マニュアル ver.3.0」(2026年8月)/「同 ver.2.0」(2024年5月)
一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター「LCCM住宅認定」/「LCCM住宅認定フロー」(2026.01.05改訂)
既存建築物省エネ化推進事業(LCCO2評価実施型)「お知らせ一覧」(令和8年度〔第2回〕公募の予告・2026年9月15日)/「公募要領」(記事の作成時はv3を参照。2026年10月28日時点のリンク先は令和8年10月版の第2回募集要領)/「CO2等排出量の算定・評価の方法」(2026/06)