2025年4月に、住宅を含む原則すべての新築に省エネ基準への適合が義務付けられました。国はその次の段階として、省エネ基準そのものを遅くとも2030年度までにZEH・ZEB水準へ引き上げる方針を掲げています。 非住宅は2024年度に大規模、2026年4月に中規模の基準がすでに上がりました。では住宅はいつ、どの値まで上がるのか。 2026年1月29日に出た社会資本整備審議会の第四次答申と、その審議資料を読むと、方針と目標の値は示されている一方、住宅の施行日や経過措置は書かれていません。2026年10月19日時点で当社が確認した範囲でも、それらを定める省令・告示の案は見当たりません。 決まっていること・まだ示されていないこと、そして仕様基準で見ると何が変わるのかを、国土交通省の一次資料から整理しました。
① 「省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する」は、2025年2月18日閣議決定のエネルギー基本計画・地球温暖化対策計画に書かれた政府の方針。第四次答申(2026年1月29日)は、そのための法制度の整備を含む措置を早急に講じるよう国土交通省に求めた。 ② 審議会資料の目標の値は、住宅BEI0.80・小規模非住宅0.80・300㎡以上の非住宅0.60/0.70。2030年度の値は太陽光発電の自家消費分を含めない注記つき(現行の1.00は含める)。 ③ 住宅のZEH水準の外皮は断熱等性能等級5相当。UAは1・2地域0.4、3地域0.5、4〜7地域0.6(現行の省エネ基準は0.46〜0.87)。 ④ 住宅の施行日・適用の起点・経過措置は、答申にも審議会資料にも書かれていない(当社が確認した範囲では、その後の公表もない)。国は、少なくとも2年前に引上げを決定し周知するとしている(要旨)。 ⑤ 仕様基準(6地域・木造戸建)で比べると、窓の熱貫流率は4.7→2.3、壁は0.53→0.44。いちばん大きく変わるのは窓。 ⑥ 令和5年度のZEH水準への適合率は、新築住宅で46.1%(国交省の推計)。令和5年度の新築住宅の半数強が、ZEH水準に適合していなかったことになる。
まず全体を一枚にまとめます。「決まっている」とは、閣議決定や審議会の答申・資料に書かれていることを指します。住宅の基準を実際に変えるには、基準を定める省令・告示の改正が必要で、その案は2026年10月19日時点で当社が確認した範囲では出ていません。右の列は「本記事で参照した資料に書かれておらず、当社が確認した範囲でも公表が見当たらないもの」です。
表1|住宅の省エネ基準の引き上げ:決まっていること・まだ示されていないこと
| 項目 | 決まっていること(出典) | まだ示されていないこと |
|---|---|---|
| 時期 | 省エネ基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する(エネルギー基本計画・地球温暖化対策計画、2025年2月18日閣議決定) | 住宅の施行日。2030年度より前になるかどうかも含めて示されていない |
| 目指す水準 | ZEH・ZEB基準の水準。審議会資料の目標の値は住宅BEI0.80(第26回建築環境部会 資料2) | 目標の値を義務基準として定める省令・告示(外皮の値の書き方を含む) |
| 進め方 | 答申は、引き上げが円滑に導入される環境の整備を図るため、法制度の整備を含め早急に必要な措置を講じるよう求めた(第四次答申 p30) | 省令・告示の改正案、意見募集の時期 |
| 周知の期間 | 国は「少なくとも2年前に義務基準適合・引上げを決定し、その旨の周知を行うこととしている」(同 資料2 p45) | 「決定」が何を指すか(答申か、省令の公布か) |
| 適用の起点 | (参考)中規模非住宅の引き上げは、施行日以後に省エネ適判を申請する建築物から(国交省 事務連絡) | 住宅で何の日を起点にするか(確認申請・適判申請・着工など)と経過措置 |
| 仕様基準 | 省エネ基準・ZEH水準の仕様基準はすでにある(2022年11月に策定。同 資料2 p8) | 引き上げ後に、いまの省エネ基準の仕様基準をどう扱うか |
出典:第四次答申(2026年1月29日)本文・参考資料、社会資本整備審議会 建築分科会 第26回建築環境部会(2025年10月10日)資料2、国交省住宅局 事務連絡(2025年11月10日)。「まだ示されていないこと」は、これらの資料に記載がなく、2026年10月19日時点で当社が確認した範囲でも公表資料が見当たらないものです。
「2030年」という数字はよく目にしますが、どの文書に何と書かれているかを押さえておくと、話の確度を見分けられます。政府の方針として閣議決定されているのは「遅くとも2030年度までに引上げを実施する」までで、そのための具体的な制度の手当てを求めたのが第四次答申です。
表2|「遅くとも2030年度まで」が書かれている主な文書
| 文書 | 日付 | 書かれていること(要旨) |
|---|---|---|
| エネルギー基本計画(第7次) | 2025年2月18日 閣議決定 | 2030年度以降に新築される住宅・建築物はZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能の確保を目指す。住宅・建築物における省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。 |
| 地球温暖化対策計画 | 2025年2月18日 閣議決定 | 2030年度以降新築される住宅についてZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指し、誘導基準・住宅トップランナー基準の引上げ、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。 |
| 社会資本整備審議会 第四次答申 | 2026年1月29日 | 遅くとも2030年度までに省エネ基準をZEH・ZEB基準の水準に引き上げることを目指し、基準の引き上げが円滑に導入される環境の整備を図るため、法制度の整備を含め早急に必要な措置を講じることを求める。 |
| 国交省 特設ページ「省エネ基準引き上げへ。」 | — | 建物の省エネ基準は遅くとも2030年までに大きく引き上げられる予定、と一般向けに説明。 |
出典:閣議決定の2文書は、第四次答申 参考資料 p8 に抄録されたものによります。答申は本文 p30(「おわりに」)。国交省の特設ページは「年度」でなく「2030年まで」と書いています。
第四次答申の本文は、新築の省エネ性能について「底上げ(ボトムアップ)」と「より高い省エネ性能の確保(トップアップ)」を分けて書いています。2025年4月の全面義務化で「省エネ性能の底上げ(ボトムアップ)が図られた」として、施行状況を注視しつつ、今後の基準の引き上げも見据えて、設計者・施工者や審査側の体制整備への支援を続けるべきだとしています(本文 p21)。
トップアップの側では、住宅トップランナー制度の対象のうち特に多くの住宅を供給する事業者に、実績を踏まえてより高い性能を求める仕組みと、特殊な構造・設備を使う建築物を大臣が認定する仕組みの導入を求めました(本文 p23)。この2つは、2026年の改正建築物省エネ法(令和8年法律第75号)で制度化され、2027年4月1日に施行されます(法律と施行日の出典は当社の記事「上位住宅トップランナー制度」「先導的な省エネ技術の大臣認定」に示しています)。一方、住宅の義務基準そのものを引き上げる省令・告示の改正(案を含む)は、当社が確認した範囲ではまだ出ていません。
国土交通省は、事業者の技術力の向上を確認しながら、建築物の規模・種類ごとに順次規制を入れてきたと説明しています。適合義務も基準の引き上げも、技術力の高い事業者が担うことの多い大規模非住宅が先頭です。審議会資料にある基準値の推移を表にすると、住宅と小規模非住宅は2025年度に適合義務化されたばかりで、ここから引き上げの対象になることが分かります。
表3|建築物省エネ法の適合義務基準値(一次エネルギー・BEI)の推移
| 用途・規模 | 2017年度〜 | 2021年度〜 | 2024年度〜 | 2025年度〜 | 2026年度〜 | 遅くとも2030年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 大規模非住宅 (2,000㎡以上) | 1.00 | 1.00 | 0.75/0.80/0.85 | 同左 | 同左 | 0.60/0.70 |
| 中規模非住宅 (300㎡以上2,000㎡未満) | — | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.75/0.80/0.85 | |
| 小規模非住宅 (300㎡未満) | — | — | — | 1.00 | 1.00 | 0.80 |
| 住宅 | — | — | — | 1.00 | 1.00 | 0.80 |
出典:社会資本整備審議会 建築分科会 第26回建築環境部会 資料2 p46「建築物省エネ法の適合義務基準値の推移」をもとに当社が表に直したもの。「—」は届出義務・努力義務(適合義務なし)。0.75は工場、0.80は事務所・学校・ホテル・百貨店、0.85は病院・集会所・飲食店。2030年度の0.60は工場・事務所・学校、0.70はホテル・百貨店・病院・集会所・飲食店。2025年度・2026年度までの値は太陽光発電設備とコージェネレーション設備の自家消費分を含み、2030年度の値はコージェネレーション設備の自家消費分だけを含む(=太陽光発電の自家消費分を含めない)と注記されています。増改築は、2025年4月以降、増改築部分の面積の規模に応じて該当する規模の水準を適用するとされています(同資料の注記)。
表3の最後の列は、2025年2月の地球温暖化対策計画の「ZEB基準の水準」の説明(再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を、用途に応じて30%または40%、小規模建築物は20%削減)とそろっています。非住宅の引き上げの詳細は「非住宅建築物の省エネ基準と省エネ計算」にまとめています。
表の注記で見落としやすいのが、太陽光発電の扱いです。いまの住宅の基準値1.00は、太陽光発電の自家消費分を差し引いて評価する前提ですが、2030年度の0.80は太陽光発電の自家消費分を含めない値として書かれています。ZEH水準の一次エネルギーは、屋根の太陽光ではなく、断熱と設備で満たすことが前提です。
住宅でいう「ZEH水準」は、いまの制度では建築物省エネ法の誘導基準と同じ水準です。国土交通省の資料は、住宅の誘導基準を「断熱等級5相当のUA値・ηAC値に適合、省エネ基準▲20%」と説明しています(第四次答申 参考資料 p113)。住宅性能表示では、断熱等性能等級5と一次エネルギー消費量等級6がこれに当たります。
表4|外皮平均熱貫流率UAの基準値:省エネ基準とZEH水準(単位:W/㎡K)
| 地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 省エネ基準(等級4) | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | — |
| ZEH水準(等級5) | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | — |
出典:省エネ基準は国交省「住宅の仕様基準・誘導仕様基準について」p60、ZEH水準は国交省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」p1の「(参考)ZEH基準」。8地域はUAの基準値がありません。地域区分の例は、4地域が会津若松等、5地域が水戸等、6地域が東京等、7地域が熊本等です(同資料p3)。
一次エネルギーは、BEI1.0→0.8(省エネ基準から20%削減)です。住宅性能表示の一次エネルギー消費量等級では、等級4(BEI1.00)が省エネ基準、等級6(BEI0.80)がZEH水準で、2025年12月1日からはその上に等級7(0.70)・等級8(0.65)が加わりました(第四次答申 参考資料 p117)。
ここで注意したいのは、目標の値は示されていても、それを義務基準として定める省令・告示は、当社が確認した範囲ではまだ出ていないことです。審議会資料の目標のBEIは0.80で、ZEH水準と一致していますが、外皮の値を告示にどう書くか、算定の細部をどうするかは、改正の告示等が出るまで確定しません。現段階では、比較設計の目安としてZEH水準(等級5・等級6)を参照するのが現実的、というのが当社の考えです。
UA値やBEIの数字だけでは、設計の何が変わるのかが見えにくいので、計算をせずに部位の仕様で確認する仕様基準で比べます。国土交通省の「住宅の仕様基準・誘導仕様基準について」には、省エネ基準と誘導基準(ZEH水準)の部位ごとの基準値が並んでいます。6地域の木造戸建住宅で抜き出すと次のとおりです。
表5|仕様基準の部位の熱貫流率:省エネ基準とZEH水準(6地域・戸建・木造/鉄骨造。単位:W/㎡K)
| 部位 | 省エネ基準 | ZEH水準(誘導基準) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 屋根又は天井 | 0.24 | 0.22 | 強化 |
| 壁 | 0.53 | 0.44 | 強化 |
| 床(外気に接する部分) | 0.34 | 0.34 | 同じ |
| 床(その他の部分) | 0.48 | 0.48 | 同じ |
| 土間床等の外周部の基礎壁(外気に接する部分) | 0.52 | 0.52 | 同じ |
| 土間床等の外周部の基礎壁(その他の部分) | 1.38 | 1.01 | 強化 |
| 開口部(窓) | 4.7 参考仕様:アルミサッシ・複層ガラス(A6) | 2.3 参考仕様:アルミ樹脂複合サッシ・Low-E複層ガラス(G14) | 大幅に強化 |
出典:国交省「住宅の仕様基準・誘導仕様基準について」p7(外皮の熱貫流率の基準・戸建・木造/鉄骨造)、p14(開口部の熱貫流率と日射遮蔽対策の基準・戸建)。いずれも5〜7地域の欄。窓は、面積の合計が単位住戸の床面積の2%以下のものを除外できます。日射遮蔽対策の基準は省エネ基準と誘導基準で同じ内容です。
6地域の木造戸建住宅で見ると、床と、土間床等の外周部の基礎壁のうち外気に接する部分は変わらず、壁と窓が主に変わります。とくに窓は4.7から2.3へ、半分以下の熱貫流率が求められます。参考仕様でいえば、アルミサッシ・複層ガラスから、アルミ樹脂複合サッシ・Low-E複層ガラスへの切り替えです。
同じ資料には、鉄筋コンクリート造等や共同住宅の表、断熱材の熱抵抗(R値)で確認する表、設備の仕様基準(暖冷房・換気・照明・給湯)も、省エネ基準の水準と誘導基準の水準を並べて載っています。共同住宅の外皮をZEH水準にするときの断熱厚さの実例は「共同住宅の外皮|仕様基準と性能基準」で、窓の性能を海外と比べた話は「日本と海外の省エネ基準を比較する」で書いています。
施行日が示されていない以上、いつ上がるかを断定することはできません。手がかりになるのは、国土交通省が審議会資料に書いている次の一文です。
「少なくとも2年前に義務基準適合・引上げを決定し、その旨の周知を行うこととしている」(第26回建築環境部会 資料2 p45)
この説明どおりなら、住宅の引き上げも、施行の2年以上前には決定・周知されると考えられます。仮に2030年度中の施行であれば、遅くとも2028年度中には何らかの決定が示される計算です(当社の試算で、公式に予告されたものではありません)。
ただし、この「決定」が何を指すかは資料に書かれていません。参考までに、2026年4月の中規模非住宅の引き上げでは、改正省令の公布が2024年10月16日、施行が2026年4月1日で、公布から施行までは約1年5か月でした(国交省 事務連絡)。公布より前に、方針として決まっていた時期があったと考えられます。
表6|新築の「ZEH・ZEB基準の水準」への適合率(令和5年度・国交省の推計)
| 区分 | 住宅(ZEH水準) | 非住宅(ZEB水準) |
|---|---|---|
| 全体 | 46.1% | 37.4% |
| 大規模 | 38.6% | 45.0% |
| 中規模 | 39.5% | 19.0% |
| 小規模 | 52.3% | 24.3% |
出典:第26回建築環境部会 資料2 p44(第四次答申 参考資料 p112 にも同じ表)。建築着工統計調査やアンケート調査等に基づく国土交通省の推計。同じ年度の省エネ基準への適合率は住宅89.9%、非住宅99.6%です。
答申はこの数字を「留まっている」と書いています(本文 p22)。令和5年度の新築住宅の半数強は、ZEH水準に適合していなかったことになります。規模別では、住宅は大規模・中規模の方が小規模より低い値です。
1. ZEH水準の案を一度は試算しておく。2026年10月19日時点の義務基準は省エネ基準(等級4・BEI1.0)で、ZEH水準は義務ではありません。それでも、長期優良住宅・低炭素建築物の認定基準はすでにZEH水準(第四次答申 参考資料 p102)で、国の資料(令和7年度予算等の時点)では住宅ローン減税にも「ZEH水準省エネ住宅」の区分があります(同 p127)。答申も、補助・税制やフラット35で基準引き上げに先行してZEH水準への適合を要件にすることを検討するよう求めています(本文 p23〜p24)。設計の途中でZEH水準が必要になったときに慌てないよう、省エネ基準の案とZEH水準の案の差(窓・断熱厚さ・設備)を最初に把握しておくのがおすすめです。
2. 窓から決める。表5のとおり、仕様基準で最も大きく変わるのは窓です。当社の経験では、窓は後から仕様を上げると、サッシの見付けや納まり、コストが連鎖して変わります。基本設計の段階でアルミ樹脂複合・樹脂サッシとLow-E複層ガラスを前提にしておくと、ZEH水準への移行が楽になります。マンションの窓は、メーカー側の規制(建材トップランナー制度)でも同じ方向に動き始めています(「マンションのサッシを建材トップランナー制度に加える改正案」)。
3. 太陽光に頼った達成のしかたは見直す。表3の注記のとおり、2030年度の目標のBEIは太陽光発電の自家消費分を含めない値です。いまは太陽光で省エネ基準を満たしている計画でも、引き上げ後は断熱と設備だけで0.80を満たせるかを確かめておく必要があります。
4. 共同住宅は評価方法に注意する。共同住宅で使われるフロア入力法は、ZEH水準(誘導基準)には対応していません(当社の記事で出典とともに整理しています)。ZEH水準を狙う計画では、標準計算か誘導仕様基準かを早めに決めておくのが安全です(「共同住宅の外皮」)。
5. 東京都の大規模な物件は、都の動きも見る。東京都の建築物環境計画書制度(延べ面積2,000㎡以上が対象)の改正案は、省エネ性能基準(義務基準)を国の義務基準を上回る水準に引き上げる方向を示していて、住宅の案はUA値0.8・BEI0.85、改正施行は令和10年4月の予定とされています(案の段階。詳しくは「東京都の新しい省エネ基準の数値」)。
省エネ基準の案とZEH水準の案の比較試算は、省エネ計算 代行でお引き受けしています。外皮計算と一次エネルギー消費量の計算を同じ図面から行い、窓と断熱の組み合わせを複数並べてお返しします。
住宅の施行日は、本記事で参照した国の資料には書かれておらず、2026年10月19日時点で当社が確認した範囲でも示されていません。決まっているのは、2025年2月18日に閣議決定されたエネルギー基本計画や地球温暖化対策計画にある「省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する」という方針です。2026年1月29日の社会資本整備審議会の第四次答申も、遅くとも2030年度までに省エネ基準をZEH・ZEB基準の水準に引き上げることを目指し、法制度の整備を含め早急に必要な措置を講じるよう求めています。
国土交通省の資料では、住宅の誘導基準(ZEH水準)は、外皮が断熱等性能等級5相当のUA値・ηAC値、一次エネルギーが省エネ基準から20%削減(BEI0.8)と説明されています。UA値は1・2地域0.4、3地域0.5、4〜7地域0.6です。住宅性能表示では断熱等性能等級5と一次エネルギー消費量等級6がZEH水準に当たります。ただし、審議会資料に示されているのは目標の値(住宅BEI0.80)までで、義務基準としての値を定める省令・告示の改正は、当社が確認した範囲ではまだ出ていません。
国土交通省は審議会資料で、「少なくとも2年前に義務基準適合・引上げを決定し、その旨の周知を行うこととしている」と説明しています。この説明どおりなら、住宅の引き上げも施行の2年以上前に決定・周知されると考えられます。ただし、ここでいう「決定」が何を指すかは資料に書かれていません。2026年4月の中規模非住宅の引き上げでは、改正省令の公布(2024年10月16日)から施行(2026年4月1日)までは約1年5か月でした。
審議会資料では、2030年度に目指す住宅のBEI0.80について、太陽光発電の自家消費分を含めない(コージェネレーション設備の自家消費分は含める)注記が付いています。現行の住宅の基準値1.00は、太陽光発電設備とコージェネレーション設備の自家消費分を含めて評価する注記です。つまり、ZEH水準の0.80は、太陽光発電に頼らず断熱と設備で達成することが前提の値です。
義務になるのは改正の施行後で、2026年10月19日時点の義務基準は省エネ基準(等級4・BEI1.0)です。ただし、長期優良住宅・低炭素建築物の認定基準はすでにZEH水準に引き上げられていて、国の資料(令和7年度予算等の時点)では住宅ローン減税にも「ZEH水準省エネ住宅」の区分があります。また答申も、補助・税制やフラット35で基準引き上げに先行してZEH水準への適合を要件にすることを検討するよう求めています。当社は、これから設計する住宅は、少なくともZEH水準を満たす仕様の案を一度は試算しておくことをおすすめしています。
できます。2022年11月にZEH水準の仕様基準(誘導仕様基準)が策定され、部位ごとの基準値と照合して確認できます。6地域の木造戸建住宅では、壁の熱貫流率が0.53から0.44に、窓が4.7から2.3に、土間床等の外周部の基礎壁(外気に接する部分以外)が1.38から1.01へと強化され、とくに窓と壁の水準が上がります。なお共同住宅では、計算で確認する場合の簡易な方法であるフロア入力法がZEH水準に対応していない点に注意が必要です。
住宅省エネ2026キャンペーンと、新築の性能ラベル・既存の部位ラベルの使い分け。
EPBDの違反手続の3段階と、日本の基準の決まり方・日付の読み方。
法律が基準の効力を住宅都市開発省の採用に結びつけた。日本の仕組みとの比較。
DOEの費用対効果の計算方法の見直しと、IECCの基本版・上乗せ版への分割。
柱・梁・間柱の3種類の熱橋の数え方と、モデル住宅の計算例。
水準は据え置き。変えたのは壁の熱橋の数え方。
2026年4月の中規模非住宅のBEI引き上げと3つの計算方法。
ZEH水準にするときの断熱厚さの実例と、フロア入力法の制約。
答申のトップアップ施策の1つ目。2027年4月施行。
答申のトップアップ施策の2つ目。誘導基準への同等性の認定。
窓のメーカー側の規制も2030年度を目標に。
省エネ基準の案とZEH水準の案を、同じ図面から比較試算。
Sources — 出典・参考資料
国土交通省 報道発表「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第四次答申)について」(2026年1月29日)
同 別紙1「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第四次答申)「脱炭素社会の実現に向けた建築物のライフサイクルカーボン評価の促進及び省エネルギー性能の一層の向上について」」(本文 p3・p21〜p24・p30)
同 別紙3「参考資料」(p8 閣議決定の抄録、p24 基準引上げスケジュール、p102 認定基準、p112 適合率、p113 誘導基準、p117 住宅性能表示の等級、p127 税制等の支援措置)
社会資本整備審議会 建築分科会 第26回建築環境部会(2025年10月10日)資料2「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第四次報告案)に向けた主な審議事項と議論の方向性」(p8・p44・p45・p46)
国土交通省「住宅の仕様基準・誘導仕様基準について」(p7・p14・p60・p62)
国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」(p1・p3)
国土交通省住宅局参事官(建築企画担当)事務連絡「令和8年度からの中規模非住宅建築物の省エネ基準の引き上げについて(周知)」(2025年11月10日。日本建築士会連合会の掲載ページ)
国土交通省 特設ページ「省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。」
※表1の「まだ示されていないこと」、表3・表5の抜き出し、第6節の試算と第7節のおすすめは当社の整理です。