2026年9月11日、J-CAT事務局が「LEED認証においてJ-CATの適用が可能になりました」というお知らせを公表しました。 国内で無償配布されているライフサイクルカーボンの算定ツールJ-CAT-建築が、LEED v5の必須の評価項目である「エンボディドカーボンの定量化および評価」への適合を示すツールとして使えるようになった、という内容です。 当社は9月3日に国のライフサイクルカーボンの届出義務について、J-CATでの計算のしかたまで含めて書きました。今回はその続報で、同じJ-CATの計算が、認証の側でどこまで通用するのかという話です。 お知らせ本文(全1頁)と、その根拠になっているUSGBCのガイダンス(全6頁・英文)の両方を読んで、適用条件・提出物・範囲のズレを整理しました。
① J-CAT-建築がLEED v5 BD+Cの必須項目MRp2「Quantify and Assess Embodied Carbon」への適合を示すツールとして使えるようになった、と2026年9月11日にJ-CAT事務局が告知しました(9月11日は告知の日付で、適用開始日として示されたものではありません)。 ② 適用条件は4つ。評価システム=LEED v5 BD+C: New Construction と Core and Shell、地域=日本国内、算定法=標準算定法(Method 2)または詳細算定法(Method 3)、版=v2.0以降。 ③ MRp2は加点項目ではなく前提条件(プリレキジット)です。今回対象になるBD+Cでは、算定していない建物はそもそも認証が取れません。 ④ 算定範囲はcradle-to-gate(アップフロントカーボン)で、対象部位は構造・外皮・ハードスケープ。J-CATで算定できる範囲の全部を使うわけではありません。 ⑤ 提出物は3点セット=概要報告書(推奨様式のエクセル)/J-CATの「詳細算定結果_GHG」シートのPDF/排出の上位3つの発生源とその削減検討の説明。J-CATの帳票をそのまま出すのではありません。 ⑥ 設計時の数量でも出せますが、設計から施工までで数量が10%を超えて変わっていないことの確認が要ります。 ⑦ Core and Shellの場合は、エンボディドカーボンの測定結果と資材供給者をテナントガイドラインで伝えることが追加で求められます。 ⑧ USGBCのガイダンスは、J-CATについて「ISO 14044・ISO 21930に概ね準拠しているが、いずれについても正式な評価は受けていない」と明記しています。ここは伏せずに読んでおくべき箇所です。
2026年9月11日、IBECs(一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター)のサイトに、J-CAT事務局名義で1頁のお知らせが掲載されました。タイトルは「LEED 認証においてJ-CAT の適用が可能になりました」です。
「このたびJ-CAT(-建築)が、国際的なグリーンビルディング認証システムの一つであるLEED の最新バージョンLEED v5 において、必須の評価項目である「エンボディドカーボンの定量化および評価」への適合を示すツールとして、下記の条件で適用することができるようになったのでお知らせします。」(J-CAT事務局・2026年9月11日)
あわせて、このお知らせは根拠となる英文ガイダンスの所在も書いています。「Japan Carbon Assessment Tool Guidance_August 2026.pdf」という資料で、LEEDを運営するU.S. Green Building Council(USGBC)のWEBページ(North Asia Regional Guidance)に8月28日付で公開されている、とされています。当社はこのガイダンス本体(全6頁)も取得して読みました。以下の適用条件・提出物の記述は、原則としてこのガイダンスの本文によります。
まず押さえておきたいのは、これは「日本がJ-CATを制度上の指定ツールに決めた」という話ではないということです。認めたのはLEEDの側(USGBC)で、しかもLEEDの中の特定の必須項目について、条件を付けて認めた、という構造です。国内制度でのJ-CATの位置づけは、前回の記事で書いたとおり、いまも「国が算定方法を定める」段階のままで変わっていません。
表1|今回のガイダンスの基本情報
| 資料名 | North Asia Regional Guidance: Embodied Carbon Software Tools Using Economic Input/Output LCA Data for Prerequisite Compliance |
|---|---|
| 発行 | U.S. Green Building Council(USGBC)。ファイル名は「Japan Carbon Assessment Tool Guidance_August 2026.pdf」(全6頁・英文) |
| 公開 | USGBCのWEBページ(North Asia Regional Guidance)に8月28日付で公開(J-CAT事務局のお知らせの記載による) |
| 国内での告知 | 2026年9月11日 J-CAT事務局「LEED 認証においてJ-CAT の適用が可能になりました」(全1頁) |
| 対象の必須項目 | 内包炭素の定量化に係るLEED v5のMaterials and Resources prerequisite(MRp2: Quantify and Assess Embodied Carbon) |
| ガイダンスの射程 | 日本で使われるJ-CATに向けて示された文書。ただし基礎となる方法論と論拠は、産業連関(economic input-output)型のLCAデータセットを基礎とする他の国際的なツールにも適用できる、と本文に明記されている |
出典:USGBC「North Asia Regional Guidance」(2026年8月・全6頁)1頁、およびJ-CAT事務局のお知らせ(2026年9月11日)より当社作成。
話の重みを測るために、MRp2が何なのかを先に確認します。
LEED v5は2025年4月に公表されたLEEDの大改定で、評価の枠組みが「脱炭素」「生活の質」「生態系の保全と再生」の3つに再編されました。その中で、資材(Materials and Resources)のカテゴリにエンボディドカーボン(内包炭素)の算定が前提条件(プリレキジット)として新設されたのが大きな変更です。当社は8月21日の海外動向の記事でこの点を扱いました。
前提条件(プリレキジット)は、満たしていないとそもそも認証が取れない項目です。点数が取れない、ではありません。 LEED v5では内包炭素の算定が前提条件、内包炭素の削減が加点(最大6点)という建て付けになっています。今回J-CATが使えるようになったのは、前者=入口の必須項目のほうです。 なお今回のガイダンスが対象にしているのはBD+CのNew ConstructionとCore and Shellで、ID+CやO+Mについては何も書かれていません。
つまりこれまで、日本国内の物件でLEED v5を狙う場合、この必須項目をどのツールで満たすかが実務上の悩みどころでした。海外のLCAソフトは国内の資材データや流通の実態と合わず、原単位の出典説明にも手間がかかります。そこに、国内で無償配布されていて国の制度検討とも接続しているJ-CATが使える、という道が開いたのが今回です。
お知らせとガイダンスは、このガイダンスで適用できる条件を明確に区切っています。書かれていることだけを並べます。
表2|J-CATをLEED v5のMRp2に使うための適用条件
| ① 評価システム | LEED v5 BD+C: New Construction および Core and Shell(この2つ。ID+C・O+Mは挙げられていない) |
|---|---|
| ② 地域 | 日本国内(Applicable region: Japan)。このガイダンスが対象とするのは日本国内に所在するプロジェクトです |
| ③ 算定法 | J-CAT-建築 標準算定法(Method 2: Standard Calculation)または詳細算定法(Method 3: Detailed Calculation)。簡易算定法(Method 1)は挙げられていない |
| ④ 版 | ver2.0 以降(ガイダンスの表記は「J-CAT software tool v2.0 or later」) |
出典:J-CAT事務局のお知らせ(2026年9月11日)記1〜3、およびUSGBC「North Asia Regional Guidance」1頁・2頁より当社作成。
④の「ver2.0以降」は、当社が確認できた配布の履歴(次の表3)と照らすと、表に挙げた4版はいずれも版番号のうえでは条件を満たすことになります。ただし版の履歴には実務上の注意が1つあります。
表3|J-CAT-建築の版の履歴と、LEEDの「v2.0以降」条件
| 公表日 | 版 | 主な内容(J-CAT事務局のお知らせによる) | v2.0以降 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月1日 | v2.2 | EPDを2025年3月末時点のデータに更新/更新回数・建替回数のカウント方法をAIJ-LCAツール最新版と整合/バグ修正 | 満たす |
| 2026年5月11日 | v2.3 | EPDを2026年3月31日時点に更新(400→587データ)/B6とB7を切り分けて算定/用途別エネルギー種別構成比率をCASBEE-建築(新築)2024年版の値に更新/名称を「J-CAT」から「J-CAT-建築」へ/チェックリスト追加 | 満たす |
| 2026年6月1日 | v2.3.1 | 標準算定法として公開(内容の詳細は8月24日のお知らせの中で言及されているもの) | 満たす |
| 2026年8月24日 | v2.3.2 | v2.3.1のEPD組込みデータの誤記(EPDの単位表記・発生品目データ・名称・流通段階における発生値・更新周期等)を修正した改訂版。標準算定法のファイル名は「2_J-CAT_Software_Standard Calculation_v2.3.2.xlsx」 | 満たす |
出典:J-CAT事務局のお知らせ(2025年8月1日/2026年5月11日/2026年8月24日)より当社作成。v2.3.1の内容そのものを告知した単独のお知らせは確認できていません(8月24日のお知らせに「さる6月1日に公開した、J-CAT-建築 算定ソフト(標準算定法v.2.3.1)」と記載されています)。
2026年8月24日のお知らせは「EPD 組込みデータの一部に、EPD の単位表記、発生品目データ・名称、流通段階における発生値及び更新周期等の誤記がありました」として、標準算定法v2.3.2の配布開始を告げています。LEEDの「v2.0以降」という条件はv2.3.1でも形式的には満たしますが、EPD組込みデータに誤記があった版で出した結果を、認証の提出物にするのは避けたほうが安全です。8月24日付のお知らせで配布が案内された版を、使用登録・ダウンロードページから取り直してください。
ここが今回いちばん実務に効く部分です。J-CATで計算して、その帳票を出せば終わり、ではありません。
表4|LEED v5 MRp2 に出すもの
| 提出物 | 中身(ガイダンスの記載) | どこから作るか |
|---|---|---|
| ① 概要報告書 (Summary report) | LCA結果を資材区分・資材種別・単位・資材数量・GWP原単位・データ出典に分解したもの。これが最低要件。あわせて、資材数量が竣工時の最終数量であること、または設計時の数量であること(設計から施工までで数量が10%を超えて変わっていない場合に限る)の確認を含める | 推奨様式「LEEDv5_ |
| ② 算定結果のPDF | J-CATの「詳細算定結果_GHG」(Detailed results_GHG)シートを印刷したPDF | J-CATから直接。ガイダンス内で表記が揺れています(2頁は「Detailed results_GHG」、標準算定法の手順の4頁は「Detailed calculation results_GHG」、詳細算定法の手順の6頁は「Detailed calculation results」でGHGが付いていません) |
| ③ 上位3つの説明 (Narrative) | そのプロジェクトのエンボディドカーボンの発生源の上位3つを特定し、その「ホットスポット」の影響を減らすためにどのようなプロジェクト固有の方策を検討したかを記述する | J-CATの算定結果を読んで、プロジェクト固有の検討内容を説明文として用意する |
| ④ Core and Shell のみ | エンボディドカーボンの測定結果と資材供給者をテナントガイドラインで伝えること | テナントガイドライン |
出典:USGBC「North Asia Regional Guidance」2頁(Embodied Carbon/High-Priority Embodied Carbon Sources/Core and Shell only)より当社作成・翻訳。原典の構成は、①の概要報告書に「最低限含めるべき事項」として内訳表・数量の確認・②の算定結果PDFが並び、そのブロックと③が「AND」でつながれている、という形です(①と②を別の行に分けたのは当社の整理で、ガイダンスの手順が「概要報告書(.xlsx)と算定結果(PDF)の両方を提出する」としていることによります)。④はCore and Shellのみの追加要件です。
手順の側も、ガイダンスの3頁以降に画面図つきで書かれています。要約すると次のとおりです。
表5|算定法ごとの手順の違い(ガイダンス3〜6頁)
| 手順 | 標準算定法(Method 2) | 詳細算定法(Method 3) |
|---|---|---|
| 1 | 概要報告書の「Standard calculation method」シートに延べ面積(m²)を入力 | 概要報告書の「Detailed calculation method」シートに延べ面積(m²)を入力 |
| 2 | J-CAT標準算定法の「input」シートから資材数量を転記(資材コードとGWP原単位が対応していることを確認) | AIJ-LCAツールの「input-2」シートから資材数量を転記(資材コードが対応していることを確認) |
| 3 | 「詳細算定結果_GHG」シートをPDFで出力 | 「詳細算定結果」シートをPDFで出力 |
| 4 | 付随するデータを入力し、必要書類をMRp2のLEEDフォームにアップロード。概要報告書(.xlsx)と算定結果(PDF)の両方を提出する | |
出典:USGBC「North Asia Regional Guidance」3〜4頁(Standard calculation method)・5〜6頁(Detailed calculation method)より当社作成。ガイダンスには各シートの画面図(Image 1〜6)が添えられています。
注目しておきたいのは、詳細算定法の転記元が、J-CATのシートではなくAIJ-LCAツールの「input-2」シートと書かれている点です。詳細算定法で進める案件ではAIJ-LCAツールのinput-2シートの資材数量を、そのまま概要報告書へ転記できる形に整理しておく必要があります(提出するのは概要報告書と算定結果のPDFで、input-2シートそのものではありません)。
J-CATは建物のライフサイクル全体(資材の製造から、建設、使用、解体・廃棄まで)を通した温室効果ガス排出量を算定するツールです。国の届出制度を見据えるならこの全体が必要になります。
ところが、今回のガイダンスがMRp2のために求めているのは、その一部だけです。ガイダンスの2頁は、はっきりこう書いています。
「新築(建物または建物の一部)については、J-CATソフトウェアを用いて、プロジェクトの構造(structure)・外皮(enclosure)・ハードスケープ(hardscape)の資材について、cradle-to-gate(アップフロントカーボン評価)のライフサイクルアセスメントを行う」(USGBC「North Asia Regional Guidance」2頁・当社試訳)
cradle-to-gate は「原材料の採取から、工場の出荷ゲートまで」という意味で、いわゆるアップフロントカーボンです(この工程の説明はLCAの一般的な用語のもので、ガイダンス本文に定義は書かれていません)。今回のガイダンスが求めているのはここまでで、使用段階や解体・廃棄の段階は入っていません。対象部位も建物のすべてではなく構造・外皮・ハードスケープに限られます。
実務としては、次のように整理しておくと混乱しにくいはずです。
J-CATを1回まわす(全ライフサイクル・全部位)
↓ 国の届出には、国が定める算定方法に沿った全体の結果を使う
↓ LEEDのMRp2には、そこから構造・外皮・ハードスケープの、cradle-to-gate分を切り出して概要報告書に転記する
元データは共通、切り出す範囲と様式が別。——ただしこの2段構えは当社の整理です。ガイダンスが書いているのは「MRp2ではcradle-to-gateの構造・外皮・ハードスケープを算定する」ところまでで、国の届出との共通利用については何も述べていません。
なお、J-CATが算定できるライフサイクル区分の内訳(A・B・C・Dの各段階が何を指すか、どこまで算定するか)は、前回の記事の第06節・第07節で整理しています。本記事では重複を避けます。
ここは読み飛ばされやすいところですが、ガイダンスはJ-CATを無条件に持ち上げてはいません。1頁の「Rationale and Purpose」に、率直な留保が書かれています。
「J-CATはISO 14044およびISO 21930に概ね準拠している(generally compliant)が、いずれについても正式な評価は受けておらず(has not been evaluated formally to meet either)、基礎となるデータセットは他のソフトウェアツールとは根本的に異なる。たとえば『建築物のLCA指針』(日本建築学会・2014年)のデータセットは産業連関分析に基づいており、どのライフサイクルモジュール(A〜C)が含まれているのかが明確に示されていない」(USGBC「North Asia Regional Guidance」1頁・当社試訳)
そのうえでガイダンスは、なぜそれでも使えるのかを説明しています。J-CATの排出原単位は主に日本建築学会(AIJ)の「AIJ-LCA原単位データベース」に基づき、これは総務省が公表する産業連関表から導かれたものです。AIJ-LCA原単位データベースは資材価格や契約見積額を使って排出量を計算する仕組みですが、J-CATでは資材数量に基づいて排出量を計算することもでき、この場合は価格の上昇や契約金額の変動に影響されません——という論建てです。
ガイダンスが求める概要報告書が資材数量・GWP原単位・データ出典の内訳であることと、この説明はつながって読めます。ただし「金額に基づく算定は認めない」とまでは書かれていません。原典が書いているのは、数量に基づく算定も可能であること、そして概要報告書に数量と原単位の内訳を含めること、の2点です。
ガイダンスにはもう一つ、書き添えられている推奨があります。
「J-CATの利用者は、J-CATを運営し国の政策と強いつながりを持つIBECsに対して、LCAの結果を自主的に報告することが推奨される」(同ガイダンス2頁・当社試訳)。義務ではありませんが、LEEDの側から国内の運営団体へのフィードバックを促す記述が入っている点は、覚えておくと話の見通しがよくなります。
また、この文書は日本で使われるJ-CATに向けて示されたガイダンスですが、1頁には、その基礎となる方法論と論拠は、同様の手法で建材の内包炭素原単位を求める他の国際的なソフトウェアツールにも適していると明記されています。具体的には産業連関型のLCAモデルを基礎とするデータセットを持つツールであれば、ガイダンスに示されたのと同様の指針に従うことでMRp2への適合を示すために使える、という書き方です。「日本のJ-CATだけが例外的に認められた」と読むのは、やや不正確です。
当社のお客様にとって本当に重要なのは、おそらくここです。2026年7月に成立した改正建築物省エネ法で、ライフサイクルカーボン評価(建築物通算炭素排出量評価)の届出が義務になります。制度開始の目途は2028年度です。その準備と、今回のLEEDの話はどうつながるのか。
今回のガイダンスとお知らせは、国のライフサイクルカーボン届出制度について何も述べていません。次の表6の「国の建築物通算炭素排出量評価」の列は、当社が9月3日の記事で扱った別の一次資料(改正建築物省エネ法の条文・国交省の報道発表・建築物LCA制度検討会の中間とりまとめ)によるものです。また、2つの制度で計算をどこまで共通化できるかは、国の算定方法と届出様式が公表されていないため、現時点では確定できません。この節の見通しは当社の見方です。
表6|LEED v5 MRp2 と 国のライフサイクルカーボン届出の対照
| 項目 | LEED v5 BD+C(NC/CS)のMRp2 =今回のガイダンスによる | 国の建築物通算炭素排出量評価 |
|---|---|---|
| 性格 | 任意の認証の必須項目(取らなければ関係ない) ※ガイダンスに記載なし・当社の整理 | 法律上の届出義務(対象なら避けられない) |
| 算定範囲 | cradle-to-gate(アップフロントカーボン) | ライフサイクル全体(資材製造・施工から使用・解体段階まで) |
| 対象部位 | 構造・外皮・ハードスケープ | 建築物(部位の限定は本記事執筆時点で政令・告示待ち) |
| 使うツール | J-CAT-建築 標準算定法/詳細算定法(v2.0以降)=今回のガイダンスで明示 | 国が定める算定方法による。J-CATが制度上の指定ツールとされたわけではない |
| 提出先・様式 | LEEDフォーム。概要報告書(.xlsx)+算定結果PDF+上位3つの説明 | 国への届出(様式は今後) |
| 時期 | プロジェクトの認証申請にあわせて ※ガイダンスに記載なし・当社の整理 | 着工の14日前まで(認証があれば3日以上14日未満に短縮)。制度開始の目途は2028年度 |
| 対象規模の例 | LEED v5 BD+C(NC/CS)を取る物件 ※規模要件の有無はガイダンスに記載なし | 5,000㎡以上の事務所が示されている(政令待ち) |
出典:LEED側のうち算定範囲・対象部位・使うツール・提出物はUSGBC「North Asia Regional Guidance」1〜2頁(提出物の形式は4頁・6頁)。「性格」「時期」「対象規模の例」の3行はガイダンスに記載がなく、当社が実務の見取り図として補ったものです。国の制度側は当社記事「ライフサイクルカーボンの届出が義務になります」で扱った一次資料(改正建築物省エネ法の条文・国交省の報道発表・建築物LCA制度検討会の中間とりまとめ)によります。国の制度の詳細は政令・告示が出るまで確定しません。
結論としては「計算は使い回せるが、提出物は使い回せない」と考えています。J-CATに資材数量を入れる作業——ここがいちばん手間のかかるところ——は1回で済むはずです。一方で、切り出す範囲(全ライフサイクルか、cradle-to-gateか)と、出す様式(国の届出様式か、LEEDの概要報告書か)は別々に作ることになります。ただし国の算定方法と届出様式はまだ公表されていませんので、どこまで共通化できるかが確定するのは政令・告示が出てからです。
それでも、これは実務にとっては良い知らせだと考えています。「国の届出のためにJ-CATを覚える」ことが、そのまま「LEEDにも出せる下地」になりうるからです。海外のLCAソフトを別途導入し、国内の資材データを海外の原単位に読み替える、という二重の作業を避けられる道が示されました。
以下は一次資料にそのまま書かれているものではなく、当社の実務判断による整理です。
1つ目は、手元のJ-CATが訂正後の版かを確かめることです。前述のとおり、2026年8月24日に標準算定法v2.3.2の配布が始まっています。使用登録済みの方には改訂版の案内がメールで届く旨がお知らせに書かれていますので、手元のファイル名(「2_J-CAT_Software_Standard Calculation_v2.3.2.xlsx」)を確認しておいてください。
2つ目は、標準算定法以上で一度まわしてみることです。LEEDに出せるのは標準算定法(Method 2)または詳細算定法(Method 3)です。簡易算定法だけで慣れていると、資材数量の拾い方の粒度が足りません。構造・外皮の主要部材について数量表を出せる体制——BIMの有無にかかわらず、拾い出しの段取り——を先に作っておくと、あとが楽になります。
3つ目は、「上位3つの発生源」を説明する練習です。提出物③は自動では出てきません。算定結果を読んで、どの部材が効いているのか、それを減らすためにどんな設計上の選択を検討したのかを、文章で書く必要があります。これは認証のためというより、設計判断そのものの記録です。基本設計の段階で一度出しておくと、あとから書けるようになります。
4つ目は、Core and Shellの案件でテナントガイドラインを意識しておくことです。エンボディドカーボンの測定結果と資材供給者をテナントガイドラインで伝える、という要件は、設計図書とは別の成果物の話です。誰が作るのかを早い段階で決めておかないと、認証申請の直前に慌てます。
なお、当社では省エネ計算の代行とCASBEEの評価、東京都建築物環境計画書の作成を一級建築士が直接お引き受けしています。ライフサイクルカーボンの算定については、対象規模や図面の揃い方によって進め方が変わりますので、概算お見積りからご相談内容をお知らせいただければ、進め方の整理からお手伝いできます。
ツールの使い勝手という意味では関係があります。今回のできごとは「J-CATで出した数字が、国内制度の外側でも通用する形になった」という一点です。日本では2026年7月に改正建築物省エネ法が成立し、ライフサイクルカーボン評価が法律の枠組みに入りました(制度開始の目途は2028年度)。その算定をこれから覚えるとき、J-CATを選んでおけば、あとで海外投資家や外資系テナントからLEEDを求められたときにも同じ計算を土台にできる可能性が出てきた、という話です。逆に、LEEDを取る予定がまったくないのであれば、今日から実務が変わることはありません。
今回のガイダンスには挙げられていません。USGBCのガイダンスは「J-CAT Method 2: Standard Calculation または Method 3: Detailed Calculation Method」の概要報告書を出すことと書いており、Method 1(簡易算定法)は記載されていません。J-CAT事務局のお知らせも「標準算定法 ver2.0以降/詳細算定法 ver2.0以降」と書いていて、簡易算定法には触れていません。簡易算定法は基本設計段階で当たりを付けるには有効ですが、LEEDの提出には標準算定法以上が必要とお考えください。
ガイダンスの条件は「v2.0以降」ですので、当社が確認できた配布の履歴(本文の表3)にある4版は、いずれも版番号のうえでは条件を満たします。ただし2026年8月24日にJ-CAT事務局から「J-CAT-建築における訂正のお詫びと改訂版配布のお知らせ」が出ており、6月1日に公開された標準算定法v2.3.1のEPD組込みデータに、EPDの単位表記・発生品目データ・名称・流通段階における発生値・更新周期等の誤記があったことが公表されています。修正版は標準算定法v2.3.2です。認証の提出に使うのであれば、この2026年8月24日付のお知らせで配布が案内された版を、使用登録・ダウンロードページから取り直しておくのが安全です。
条件つきで設計数量が使えます。ガイダンスは概要報告書に「報告書の資材数量が、竣工時の最終数量であること、または設計時の数量であること(設計から施工までで数量が10%を超えて変わっていない場合に限る)の確認」を含めるよう求めています。つまり設計時の数量で提出する場合は、設計から施工までの変動が10%以内に収まっていることを確認する形になります(原文は「did not change more than 10%」で、ちょうど10%は除外されていません)。逆にいえば、10%を超えて動いた場合、その設計数量は原文の条件を満たしません。ただし、そのときの出し直しの時期や手続はガイダンスには書かれていません。
共通化できる範囲は、現時点では確定できません。国の算定方法と届出様式がまだ公表されていないためです。そのうえで分かっていることを書きます。国の建築物通算炭素排出量評価は建物のライフサイクル全体を対象にしますが、今回のガイダンスがMRp2のために求めているのは、そのうち構造・外皮・ハードスケープの資材について、資材の製造段階まで(cradle-to-gate=アップフロントカーボン)を算定した部分です。また提出は、USGBCのガイダンスが推奨するエクセル様式に転記した概要報告書(.xlsx)と、J-CATの算定結果シートをPDF出力したものを出す形で、J-CATの帳票をそのまま出すわけではありません。当社は「J-CATを1回まわせば両方の提出物ができる」のではなく「両方の元になる数量と計算を1か所に持てる」という見通しで準備を進めていますが、これは当社の見方で、国の要件との照合は政令・告示を待つ必要があります。
USGBCへのメール請求です。ガイダンスには推奨様式となるエクセル(ファイル名は本文の表4に記載しています)が挙げられており、この資料については materials@usgbc.org にメールするように、と書かれています。一般公開のダウンロードリンクは示されていません。なお、この様式の使用は「advised(推奨)」という書き方で、必須とまでは書かれていません。ただし様式が求める項目(資材区分・資材種別・単位・資材数量・GWP原単位・データ出典)は概要報告書の最低要件として明記されていますので、実務上は様式を取り寄せて使うのが早いはずです。
EPDの有効期限・業界平均は最悪値・1%ルールと、日本の届出制度との違い。
太陽光の自家消費分は「正」で入力。取り違えると収支が有利にずれます。
RE2020の算定範囲と上限値の補正、日本の算定ルール案との違い。
法第30条の2「同等性の認定」。誘導基準に「同等以上」で性能向上計画認定と容積率の特例。
この記事の前編。国の制度とJ-CATでの計算のしかた。
LEED v5・BREEAM V7が内包炭素を必須化した経緯。
参照期間50年とモジュール。J-CATとの対照つき。
CASBEE-建築(新築)2024年版はJ-CAT準拠のLCCO2評価です。
都の改正案。LCCO2の段階評価もここに入っています。
BEI・BPIと3つの計算方法の基本。
Sources — 出典・参考資料
J-CAT事務局「LEED 認証においてJ-CAT の適用が可能になりました」(2026年9月11日・全1頁)。第01節・第03節の適用条件(評価システム・地域・算定法・版)と、提出物の概要はこの資料によります。
U.S. Green Building Council「North Asia Regional Guidance: Embodied Carbon Software Tools Using Economic Input/Output LCA Data for Prerequisite Compliance」(2026年8月・全6頁・英文)。表1のうち資料名・対象の必須項目・射程、表2の適用条件、表4、表5、表6のLEED側のうち原典に記載のある行、および第03節〜第06節の適用範囲・提出物・手順・USGBCによるJ-CATの説明は、この資料の1〜6頁によります(表1のファイル名・「8月28日付で公開」・国内告知の日付は、次のJ-CAT事務局のお知らせによります)(表3の版の履歴はJ-CAT事務局の3本のお知らせ、第07節の国の制度側と共通化の見通しは別資料および当社の見方です)(適用システムと地域・留保とAIJ-LCA原単位データベースの説明 1頁/IBECsへの自主報告の推奨・cradle-to-gate・概要報告書・上位3つの説明・Core and Shellの追加要件 2頁/標準算定法の手順 3〜4頁/詳細算定法の手順 5〜6頁)。
J-CAT事務局「J-CAT-建築における訂正のお詫びと改訂版配布のお知らせ」(2026年8月24日・全1頁)。v2.3.1のEPD組込みデータの誤記と、v2.3.2の配布開始はこの資料によります。
同「J-CAT-建築(更新版)の公開のお知らせ」(2026年5月11日・全1頁)/同「J-CAT のマニュアル、ツールの改訂についてのお知らせ」(2025年8月1日・全1頁)。表3の版の履歴は、この2資料と上記の2026年8月24日のお知らせの計3資料によります(v2.2=2025年8月1日/v2.3=2026年5月11日/v2.3.1・v2.3.2=2026年8月24日)。
IBECs「J-CAT(英文ページ)」。Method 1(簡易算定法)・Method 2(標準算定法)・Method 3(詳細算定法)という英語名称と日本語名称の対応は、このページの表記によります(USGBCのガイダンスとJ-CAT事務局のお知らせのどちらにも、この対応そのものは書かれていません)。
IBECs「建築物WLC算定ツール(J-CAT)」(お知らせの掲載元)
※USGBCのガイダンスは英文です。本記事中の「一次資料の書きぶり(試訳)」および表4・表5の内容は当社の試訳で、公式の日本語訳ではありません。原文の確認が必要な場合は上記PDFをご参照ください。
※これは「日本がJ-CATを制度上の指定ツールに決めた」という話ではありません。認めたのはLEEDを運営するUSGBCの側で、LEED v5の特定の必須項目について条件付きで認めたものです。国のライフサイクルカーボン評価の算定方法は、本記事執筆時点では政令・告示待ちです。
※ガイダンスの公開日(8月28日付)は、J-CAT事務局のお知らせの記載によるものです。当社が取得したPDFはファイル名に「August 2026」とあるだけで、本文には公開日の記載がありません。
※表3の v2.3.1 については、その版を単独で告知したお知らせを確認できていません。2026年8月24日のお知らせの本文中の記載(「さる6月1日に公開した」)によります。
※第08節「いま準備できること」は当社の実務判断による整理であり、一次資料にそのまま書かれているものではありません。
※LEED v5の評価項目の構成(前提条件と加点の関係、削減で最大6点など)は、当社の2026年8月21日の記事で扱った内容です。LEED v5の要件本文そのものはUSGBCの会員向けページにあり、本記事では参照していません。
※概要報告書のエクセル様式について、J-CAT事務局のお知らせは「LEEDの指定様式」と書いていますが、USGBCのガイダンスの原文は「It is advised to use ...(使用が推奨される)」です。本記事は原典に合わせて「推奨様式」と書いています。
※第05節の「cradle-to-gate=原材料の採取から工場の出荷ゲートまで」は、LCAの一般的な用語の説明です。ガイダンス本文は「cradle-to-gate life-cycle assessment (upfront carbon assessment)」と書いているだけで、工程の定義までは示していません。
※IBECsの名称は「一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター」です(英文ガイダンスでは Institute for Built Environment and Carbon Neutral for SDGs と表記されています)。
※第02節のLEED v5全体の構成(2025年4月公表、3つのインパクトエリア、削減で最大6点など)は、当社の2026年8月21日の記事で扱った内容で、今回の2資料には書かれていません。
※本記事は2026年9月11日時点で確認できた内容です。