イングランドの建築規則に、住宅の再生可能電力の発電に関する新しい要求事項「L3」が加わりました。 根拠はThe Building Regulations etc. (Amendment) (England) Regulations 2026(S.I. 2026/335)、 L3を挿入する規則3の施行は2027年3月24日(高リスク建築物に関わる工事等は2027年9月24日)です。 2026年3月24日に公表されたApproved Document L 2026年版がその具体の基準を示し、 2026年9月8日には正誤を直した改訂版とFAQが追加されました。 注目したいのは基準の書き方です。求められているのは屋根に敷くパネルの面積ではなく、 「効率0.22kWp/㎡のパネルを、地上階床面積の40%に相当する面積に、南東〜南西向き・傾斜45度・日影なしで敷いたときの年間発電量」以上の発電量。 一方、東京都の建築物環境報告書制度は、事業者の1年間の総量を 「設置可能棟数×算定基準率×棟当たり基準量2kW」で算定します。 棟で縛るか、事業者の総量で縛るか——同じ「太陽光の義務化」の、2つの型を一次資料で整理しました。
① イングランドの建築規則に要求事項L3「再生可能電力の発電——住宅および住宅を含む建築物」が新設されました。 根拠はS.I. 2026/335(2026年3月24日に議会へ提出)です。 ② 施行は2027年3月24日。高リスク建築物(HRB)に関わる工事および既存HRBへの工事については、規則3・4・6・7・8・9が2027年9月24日から施行されます。いずれも経過措置つきです。L3を挿入するのは規則3なので、L3についてはこの2つの日付がそのまま当てはまります。 ③ L3の条文は、「住宅である、または1以上の住宅を含む建築物を建てるときは、敷地内の再生可能電力の発電システムを、当該建築物の上、または当該建築物のカーティレッジ(付属地)の境界内に設置しなければならない」と定めています。 ④ 合理的な出力の基準は発電量(kWh)で書かれています。 効率0.22kWp/㎡のパネルを、その住宅の地上階床面積の40%に相当する面積に敷き、南東〜南西向き・傾斜45度・日影なしで設置した場合の年間発電量——これ以上であればよい、という形です(5.73(a))。 ⑤ もう1つのルートとして、「合理的に実行可能な屋根面積」を効率0.22kWp/㎡のパネルで覆ったときの年間発電量以上、という基準も認められています(5.73(b))。 ⑥ 住宅を含む建築物には3つのルートがあります。建物の地上階床面積の40%(式5.2)/個々の住戸に割り当てた地上階床面積の40%(式5.3)/合理的に実行可能な屋根面積。 複数階の建物の「地上階床面積」は、建物内の全空間の床面積の合計(GIA)を階数で除して求めます(式5.2)。 ⑦ 屋根面積が足りない「例外的な状況」を説明する際の目安は、戸建住宅で年間720kWh、住宅を含む建築物で1住戸あたり「720kWh÷階数」です(5.77)。最低設置量でも自動的な免除でもありません。 ⑧ 5.73(a)・5.74(a)・5.74(b)の水準に達しない太陽光アレイはBRELレポートに明示され、 根拠を建築確認機関へ提出します(5.78・B9)。提出物は必要に応じて、パネルの有無2種の屋根伏図・低い設置量にする理由の陳述・適格者が署名した計算書を含みます。 ⑨ 屋根の離隔寸法が附属書Bに表で規定されています(棟600mm・軒やけらば500mm・界壁の中心線から750mmなど)。主たる用途は「合理的に実行可能な屋根面積」の算定で、実際の設置では異なる離隔が適切な場合もあるとFAQが述べています。 ⑩ 2026年9月8日のFAQは、北向きや日影による発電量の低下だけでは、通常、その屋根面を「合理的に実行可能な屋根面積」から除く十分な理由にならないと示しました。計算方法が方位と日影の影響を織り込んでいるから、という理由です。 ⑪ 東京都の再エネ設置基準は、1棟ごとではなく事業者の1年間の総量です。東京都のガイドラインは棟当たり基準量2kWを「総量を算定する際の『係数』であり、1棟ごとに義務付ける設置量ではない」と明記しています。 ⑫ L3が求めているのは「敷地内の再生可能電力の発電システム」で、太陽光に限られていません。5.70 は「再生可能技術(renewable technologies)によって生み出される最小量」と書いています。本記事が屋根置き太陽光を中心に扱うのは、Approved Document L の適合ガイダンスがその方法を具体的に示しているためです。 ⑬ これはイングランドの建築規則の話であり、日本の制度を変更する資料ではありません。日本の設計・申請の実務がこの件で変わる要素は、当社が確認した範囲では見当たりません。
英国住宅・コミュニティ・地方自治省(MHCLG)は、2026年3月24日付の Building Circular 01/2026で、Future Homes and Buildings Standards(FHBS)に伴う建築規則の改正を通知しました。 この通知は改正の内容を列挙していますが、その筆頭に置かれているのが次の1行です。
Building Circular 01/2026 が挙げる改正の第1項目
「新築の住宅(および住宅を含む建築物)のための再生可能電力の発電の提供に関する新しい機能要求事項を創設する(要求事項L3)」
あわせて同じ通知は、Part L を「温室効果ガスの排出を削減する」と「エネルギーを保全する」という2つの目的を反映するように改正すること、 「固定建築設備(fixed building services)」の定義に、個々の住戸内のものを除く新築建築物のエレベーター・エスカレーター・動く歩道を含めることなども挙げています。 Approved Document L の表題が「Conservation of fuel and power(燃料と電力の保全)」から「Energy and greenhouse gas emissions(エネルギーおよび温室効果ガス排出)」に変わったのは、この改正に対応するものです。
表1|Approved Document L 2026年版 第1巻(住宅)の3つの要求事項
| 記号 | 要求事項の表題 |
|---|---|
| L1 | 建築物における燃料および電力の保全ならびに温室効果ガスの排出の最小化 |
| L2 | 敷地内での電気の発電 |
| L3 | 再生可能電力の発電——住宅および住宅を含む建築物(新設) |
出典:Approved Document L, Volume 1: Dwellings(2026年版)表紙の記載。訳は当社の試訳。
要求事項L3の条文は、Approved Document L 第1巻 37ページに掲げられています。要旨は次のとおりです。
要求事項L3(要旨)
L3(1) 住宅である、または1以上の住宅を含む建築物を建てるときは、敷地内の再生可能電力の発電システムを、当該建築物の上、または当該建築物のカーティレッジ(付属地)の境界内に設置しなければならない。
L3(2) この要求事項のために設置するシステムは、次の両方を満たすものでなければならない。
(a) 発電した電気を、住戸の居住者の用に供することができるように設計されていること。
(b) 当該建築物の設計および周辺の状況を考慮したうえで、合理的な出力を発生させることができること。
L3(3) 「再生可能エネルギー源によるエネルギー」は規則25Aの定義による。「マイクロ発電」は、発電に用いる設備のうち、発電にあたって全部または主として再生可能エネルギー源によるエネルギーに依存するものの使用をいう。
Approved Document L, Volume 1(2026年版)p37 の要旨。訳は当社の試訳であり、公式の日本語訳ではありません。
そして3つの適用除外が、同じページに置かれています。
表2|要求事項L3が適用されない建築物
| (a) | Building Regulations 2010 規則7(4)の「relevant building」にあたる建築物 |
|---|---|
| (b) | その設計または周辺の状況のために、合理的な出力を発生させることができる敷地内の再生可能電力の発電システムを設置することが不可能な建築物 |
| (c) | ① 要求事項L3が求めるのと同等の再生可能電力の発電出力が、当該建築物の上にも当該建築物のカーティレッジの境界内にもない敷地内の再生可能電力の発電システムから当該建築物に供給可能であり、② かつそのシステムが、発電した電気を住戸の居住者の用に供することができるように設計されている場合 |
出典:Approved Document L, Volume 1(2026年版)p37。(b)(c)の「合理的/同等の出力」の水準は、5.73・5.74 の記述によります(同 p38)。訳は当社の試訳。
施行と経過措置も、Building Circular 01/2026 に書かれています。
表3|施行日と経過措置
| 施行日(原則) | 2027年3月24日 |
|---|---|
| 施行日(HRB) | 2027年9月24日。高リスク建築物(HRB)に関わる工事および既存HRBへの工事については、規則3・4・6・7・8・9がこの日から施行 |
| 経過措置(HRB以外) | ある建築物について、2027年3月24日より前に building notice/initial notice/全図面を添えた建築確認の申請が所管当局に提出されており、かつその工事が2028年3月24日より前に着手された場合は、改正は適用されない |
| 経過措置(HRB) | 2027年9月24日より前に有効な建築確認の申請が規制当局に提出され、同日以前または以後に却下されていない場合は、改正は適用されない |
| 適用の単位 | 1つの申請が複数の建築物(例:複数戸の住宅)に関わる場合、経過措置は個々の建築物ごとに適用され、着手の条件を満たした建築物だけが対象となる |
| L3はどの規則か | Building Circular 01/2026 の附属書Aによれば、新しいL3を挿入するのは「規則3」。規則3は上記の「2027年9月24日から施行」の対象に含まれるため、L3については2つの日付がそのまま当てはまります |
出典:Building Circular 01/2026 の第1・11・15〜17・23項および附属書A。なお Approved Document L 第1巻の表紙にも、同じ2つの施行日が記載されています。
Approved Document L は、建築規則に適合するための方法を示した法定ガイダンスです。 同文書自身が冒頭で、「承認された文書に記載された以外の方法で要求事項を満たすこともあり得る」、 その場合は早い段階で所管の建築確認機関と合意するよう努めるべきと述べています。 したがって本記事で扱う「地上階床面積の40%」「0.22kWp/㎡」「傾斜45度」といった数値は、要求事項L3の条文そのものではなく、 Approved Document L が示す適合の方法です。 また同文書は、建築工事に責任を負う者として、代理人・設計者・施工者・設置者・建物所有者を挙げています。
この「経過措置が個々の建築物ごとに適用される」という考え方は、当社が以前に扱った 英国の計算プログラムの切替(SAP 10.3からHEMへ)の記事と同じ構造です。 版が変わるときに「どの建物がどの版で審査されるか」を、申請単位ではなく建物単位で決めるという整理になっています。
ここからが本題です。L3(2)(b)の「合理的な出力」とは、具体的にどれだけか。 Approved Document L 第1巻 5.73 が、戸建住宅(dwellinghouse)についての基準を示しています。
5.73|戸建住宅の屋根置き太陽光アレイ(要旨)
屋根に設置する太陽光アレイは、次のいずれかを用いて合理的な出力を達成するように設計すべきである。
(a) 承認された計算方法で算定した当該戸建住宅の年間発電量(kWh)が、次のすべての性状をもつ太陽光アレイの年間発電量以上であること。
i. 効率0.22kWp/㎡の太陽電池パネルを、当該戸建住宅の地上階床面積の40%に相当する面積に設置したときの実装ピーク電力(kWp)に等しいこと(式5.1)
ii. 南東から南西に向いていること
iii. 傾斜45度であること
iv. 日影がないこと
(b) 承認された計算方法で算定した当該住宅の年間発電量が、「合理的に実行可能な屋根面積」を効率0.22kWp/㎡のパネルで覆った太陽光アレイの年間発電量以上であること。
Approved Document L, Volume 1(2026年版)5.73 の要旨。訳は当社の試訳。
読み違えやすいところなので、繰り返します。求められているのは面積ではなく年間発電量です。 「地上階床面積の40%」は、比較対象となる仮想の太陽光アレイを定義するための数値であって、 実際にその面積のパネルを載せなければならないという意味ではありません。 ガイダンスはそのアレイを南東〜南西向き・傾斜45度・日影なしという理想的な条件で置き、 その年間発電量を「達成すべき水準」として使っています(原文は at least equal to=「以上」であり、同じ値でも満たします)。
実装ピーク電力の算定式は、式5.1として示されています。
式5.1|戸建住宅の実装ピーク電力
PPDWELLING[kWp]= APVD[㎡]× EFFPV[kWp/㎡]
EFFPV=太陽電池パネルの効率。0.22kWp/㎡ 以上。
APVD=太陽電池パネルのために利用可能な面積[㎡]。地上階床面積の少なくとも40%に相当する面積。
この式に付された注記が、実務では効いてきます。
表4|式5.1・5.2・5.3 に共通する注記
| a | 0.22kWp/㎡ は、4.5㎡あたり1kWpの効率をもつ太陽電池パネルの出力である(文書は別途、0.22kWp/㎡が小数第2位に丸めた値であると注記している) |
|---|---|
| b | 地上階床面積には、住戸内の一定の非暖房空間が含まれる。その定義は SAP 10 conventions の 8.05 節による |
| c | 建築物の床面積は、外周壁の内側の面までで測る |
| d | 建築物内の全空間の床面積の合計は、GIA(gross internal area)である |
| e | 建築物の階数は、SAP 10 conventions の 2.08 節の定義による |
出典:Approved Document L, Volume 1(2026年版)式5.3 の直後の NOTE。訳は当社の試訳。
そして計算に使う版について、5.72が重要な制約を置いています。
5.73から5.76までの計算は、住宅排出率(DER)および住宅一次エネルギー率(DPER)の算定に用いたものと同じ版の、承認された計算方法を用いるべきである。
英国は2026年3月に、住宅の計算エンジンをSAP 10.3から新しいHEM(Home Energy Model)へ切り替える枠組みを決め、 両者を一定期間併走させることにしました(諮問回答とNotice of Approvalを一次資料として整理した当社の記事 英国は計算プログラムの切替をこう決めたをご覧ください)。 併走期間中は「どちらの版で計算したか」が案件ごとに分かれ得ます。 5.72 はそこに対して、太陽光の判定だけ別の版で計算することを認めないという歯止めを置いたものと読めます。
集合住宅など「1以上の住宅を含む建築物(buildings containing one or more dwellings)」については、 5.74が3つのルートを示しています。合理的な出力の判定として、どれか1つを満たせばよい構成です。
表5|「合理的な出力」の判定ルート
| 対象 | ルート | 基準とする年間発電量 |
|---|---|---|
| 戸建住宅 (5.73) | (a) | 効率0.22kWp/㎡のパネルを当該戸建住宅の地上階床面積の40%に相当する面積に設置(式5.1)。南東〜南西向き・傾斜45度・日影なし |
| (b) | 合理的に実行可能な屋根面積を効率0.22kWp/㎡のパネルで覆ったとき | |
| 住宅を含む 建築物 (5.74) | (a) | 効率0.22kWp/㎡のパネルを当該建築物の地上階床面積の40%に相当する面積に設置(式5.2)。南東〜南西向き・傾斜45度・日影なし。判定は建築物全体の年間発電量 |
| (b) | 効率0.22kWp/㎡のパネルを個々の住戸に割り当てた地上階床面積の40%に相当する面積に設置(式5.3)。同じく南東〜南西向き・傾斜45度・日影なし。判定は建築物内の各住戸の年間発電量 | |
| (c) | 合理的に実行可能な屋根面積を効率0.22kWp/㎡のパネルで覆ったとき。判定は建築物全体の年間発電量 |
出典:Approved Document L, Volume 1(2026年版)5.73・5.74。訳と整理は当社。
ここで効いてくるのが式5.2です。複数階の建物の「地上階床面積」を、実際の1階の床面積ではなく計算で定義しています。
式5.2|住宅を含む複数階の建築物の地上階床面積
AGRND[㎡]= ATOTAL[㎡]÷ 階数
ATOTAL=当該建築物内の全空間の床面積の合計[㎡](=GIA)
式5.3|個々の住戸に割り当てる地上階床面積
AGRNDDWELL[㎡]=(ADWELL ÷ ATOTAL)× AGRND
ADWELL=当該住戸の床面積[㎡]/ATOTAL=当該建築物内の全空間の床面積の合計[㎡]/AGRND=式5.2による建築物の地上階床面積[㎡]
式5.2は、実務者にとっては見慣れた発想です。 建物内の全空間の床面積の合計(ATOTAL)が同じであれば、階数が増えるほど AGRND は小さくなり、その40%であるパネル面積も小さくなります。 高層の集合住宅では、1住戸あたりに割り当てられる屋根は当然少なくなりますから、 それを基準側にも反映させた形になっています。式5.3も同じ考え方で、 建物全体の地上階床面積を住戸の床面積比で按分しています。
ATOTAL はGIA(gross internal area)とされており、注記cにより外周壁の内側の面までで測ります。 日本の建築基準法施行令第2条第1項第3号は、床面積を「建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。」と定め、同項第4号は延べ面積を「建築物の各階の床面積の合計による。」としています。中心線で囲むか、外周壁の内側の面までとするかで、測り方が異なります。 また注記bのとおり、地上階床面積には住戸内の一定の非暖房空間が含まれます(SAP 10 conventions 8.05節)。 「延べ面積÷階数の40%」と日本語で覚えると、面積の定義がずれます。
屋根の形状によっては、基準の発電量に届かないことがあります。 Approved Document L は、そこを3段階で扱っています。
5.76|まず最大化する
5.73(a)・5.74(a)・5.74(b)の基準を満たせない場合は、可能な範囲で発電量を最大化する努力をすべきである。 これには、より高性能なパネルを指定すること、パネルの向きを変えること、その他の変更(例:屋根の換気口や意匠上の要素の位置)によって、可能な場合に太陽電池パネルを追加で設置できるようにすることが含まれる。
「換気口や意匠上の要素の位置を動かしてでもパネルを載せる」というところまで書いてあるのが特徴的です。 屋根の上の納まりが、太陽光の設置量に従属する関係になっています。
5.77|それでも無理な「例外的な状況」(例示)
(a) 戸建住宅:5.73 および附属書B に従って、年間720kWhを発電できる太陽光アレイを設置するのに十分な屋根面積がないことを示せる場合(発電量は承認された計算方法で算定)。
(b) 住宅を含む建築物:5.74 および附属書B に従って、各住戸について「年間720kWhを階数で除した値」を発電できる太陽光アレイを設置するのに十分な屋根面積がないことを示せる場合。
(b)の書き方に注目してください。1住戸あたりの目安は720kWhを階数で除した値なので、 階数が増えるほど下がります。たとえば5階建てなら、1住戸あたり年間144kWhです(720÷5。当社の計算です)。 この目安は総床面積とは関係なく、階数だけで決まります。 一方、基準側の面積のほうは条件が付きます。式5.2は「建物内の全空間の床面積の合計が同じ場合」に、 式5.3は「当該住戸の床面積が同じ場合」に、階数が増えるほど算定値が小さくなります (式5.2と式5.3を合わせると、AGRNDDWELL=ADWELL÷階数 になります)。
5.78・B9|40%基準のルートに届かない場合の記録と提出物
5.78 5.73(a)・5.74(a)・5.74(b)のいずれの水準にも達しない太陽光アレイは、BRELレポートに明示される。 太陽光アレイのために利用可能な屋根の「合理的に実行可能な面積」、または低い設置量とすることを裏づける証拠は、附属書Bに示すとおり、所管の建築確認機関(building control body)に提出すべきである。
B9 提出すべき証拠は、必要に応じて次を含む。
a. 太陽電池パネルを描いたものと描かないものの2種類の屋根伏図。パネルに対する設計上の制約を明確に示すもの
b. より低い設置量とする理由と、設計の変更ができない理由を述べた陳述
c. 5.73(a)・5.74(a)・5.74(b)を裏づけて行った計算で、適格者が署名したもの。適格者には資格をもつ On Construction Domestic Energy Assessor が含まれる
さらにB10は、屋根の勾配・窓・意匠上の要素・空調機器・保守の動線によって十分なパネルを設置できない場合には、 その屋根の配置と向きにおいて可能な最大の容量(kWp)と年間発電量(kWh)であることを示す必要があるとしています。
日本では、太陽光発電設備の容量は一次エネルギー消費量計算の中で設計値を下げる要素として扱われます。 「どれだけ載せられるはずだったか」を建築確認の段階で図面で説明する仕組みは、当社が実務で扱っている範囲では見当たりません。 東京都の制度でも、算定除外可能建築物に該当することを示す屋根伏図の保管は求められますが(第07節)、 それは除外に当たるかどうかの確認であって、「載せられる最大量」の立証ではありません。
「合理的に実行可能な屋根面積」を各社が勝手に判断すると、根拠の提出も審査も成立しません。 そこで Approved Document L は、附属書Bに離隔寸法の表を3本置きました。 屋根のどこからどれだけ離すかが、数値で示されています。
表6|附属書B 表B1(屋根の一般的な離隔)・表B2(陸屋根の離隔)
| 表 | 対象 | 屋根の要素までの最小離隔距離 |
|---|---|---|
| 表B1 一般 | 棟・頂部 | 600 mm |
| 屋根の端部(軒・けらば・パラペット) | 500 mm | |
| 界壁(中心線から測る) | 750 mm | |
| 換気口・煙突 | 300 mm | |
| 窓・扉 | 500 mm | |
| 自動排煙窓 | 1,000 mm | |
| 表B2 陸屋根 | 汚水通気管 | 100 mm |
| エレベーターのオーバーラン | 1,000 mm | |
| 空調機器 | 1,000 mm | |
| 雨水の竪管 | 100 mm | |
| 樋 | 200 mm | |
| ケーブルトレイ | 200 mm | |
| 点検ハッチ | 1,000 mm |
出典:Approved Document L, Volume 1(2026年版)附属書B 表B1・表B2。項目名の訳は当社の試訳。
さらに表B3は、保守のための動線を確保するための、屋根の端部からの最小距離を定めています。
表7|附属書B 表B3(保守の動線の要件)
| 端部の状況 | 屋根の端部までの最小距離 |
|---|---|
| 端部の保護がない | 2,000 mm |
| パラペットがある | 500 mm |
| 墜落防止システム(man-safe system)がある | 300 mm |
| 手すりがある | 300 mm |
出典:Approved Document L, Volume 1(2026年版)附属書B 表B3。訳は当社の試訳。
2026年9月8日のFAQは、附属書Bの離隔寸法について次のように述べています。 これらの離隔寸法は、主として「合理的に実行可能な屋根面積」の大きさを決めるためのものであり、 すべての状況を網羅することを意図したものではない。 パネルが発電量を最大化するように当該屋根面積を覆い、適用される規制要求に適合し、 メーカーの指示に従って設置されるのであれば、実際の設置では異なる離隔が適切な場合もある——とされています。 また離隔は「屋根の要素から、当該パネルの端部まで」測ること、 「合理的に実行可能な屋根面積」を覆うアレイの大きさを決める際に使うパネルの寸法は指定されていないことも示されています (FAQは、多くの場合は市販の住宅用太陽電池パネルの寸法が使われるだろうとしています)。
端部の保護がなければ2m離したうえで面積を数える、というのは効きます。 逆にパラペットや手すりを設ければ離隔が縮み、載せられる面積が増えます。 安全対策の設計が、そのまま太陽光の設置可能量に跳ね返る構造になっています。
附属書B11 は、屋根の形ごとの配置例を3つ示しています。文書は図解であって縮尺どおりではないと注記していますが、 数値が入っているので、量感をつかむには役立ちます。
表8|附属書B 図B1〜B3 に示された例
| 図 | 屋根の形 | Foundation area | 太陽光の面積 | 実装容量 |
|---|---|---|---|---|
| 図B1 | 二戸一または長屋の端部の寄棟屋根 | 39 ㎡ | 16 ㎡ | 3.52 kWp |
| 図B2 | 二戸一または長屋の端部の切妻の勾配屋根 | 39 ㎡ | 20 ㎡ | 4.44 kWp |
| 図B3 | 長屋の中間住戸のドーマー窓つき勾配屋根 | 35 ㎡ | 8 ㎡ | 1.76 kWp |
出典:Approved Document L, Volume 1(2026年版)附属書B 図B1・図B2・図B3 に付された数値。 面積の表記は原典のまま「Foundation area」としています。 本文の40%ルールが用いる用語は「地上階床面積(ground floor area)」であり、原典は両者が同一であるとは述べていないため、当社の側で対応づけや割合の計算は行っていません。 容量は「0.22kWp/㎡のパネルを用いた場合」として原典に示された値をそのまま掲げています(原典は0.22kWp/㎡を4.5㎡あたり1kWpの丸め値と注記しています)。 年間発電量は建物の向きにより異なるため、承認された計算方法で算定すべきものとされています。
3つの例を並べると、Foundation area が同じ39㎡の図B1と図B2でも、寄棟屋根で3.52kWp、切妻の勾配屋根で4.44kWpと差がつくことが分かります。 さらに図B3の「ドーマー窓つき・長屋の中間住戸」(35㎡)は8㎡しか取れず、1.76kWpにとどまっています。 第04節で見た「届かない場合の手順」は、まさにこういう住宅のために用意されているわけです。
Approved Document L 2026年版は2026年3月24日に公表されましたが、2026年9月8日に更新されました。 更新内容は、gov.uk の記載によれば「Approved Document L の第1巻・第2巻の改訂版を追加(軽微な誤りの修正)。よくある質問を追加」です。 このFAQが、実務で迷いやすい点にいくつか答えています。
表9|2026年9月8日公表のFAQが示した解釈
| 論点 | FAQの回答(要旨) |
|---|---|
| 年間発電量の計算手順 | 住宅の年間発電量(kWh)を算定する手順は、SAP 10.3 の附属書M1「M1 Photovoltaics」に記述されている。式5.1で適切な実装ピーク電力を求め、その値を附属書M1の手順に入れて、設計すべき年間発電量を決める |
| 北向きの屋根 | 「はい(含める)」。北向きであることによる発電量の低下は、その屋根面を「合理的に実行可能な屋根面積」から除外する理由として十分とは考えにくい。承認された計算方法が、パネルの向きによる発電量への影響を織り込んでいるため |
| 強い日影のある屋根 | 「はい(含める)」。日影による発電量の低下も、除外の理由として十分とは考えにくい。理由は北向きの場合と同じで、承認された計算方法が日影による影響を織り込んでいるため |
| 「合理的に実行可能な屋根面積」の特定 | 関連する設計上の制約を考慮したうえで、何がそれにあたるかを特定し、その判断を所管の建築確認機関に対して正当化する責任は開発者にある |
| パネル効率の算出 | パネルの出力(kWp)÷ パネル全体の面積。面積にはフレームを含め、水切り(flashings)は除く |
| 独立車庫の床面積 | 40%の計算には含めない。主たる屋根の投影面積の外にある非暖房空間は、40%相当のアレイの必要出力を計算する目的では算入しない。SAP 10 conventions における、想定建物(notional building)の付属車庫の扱いに整合させたもの |
| 独立車庫の屋根面積 | 「合理的に実行可能な屋根面積」には含めない。同面積は、住宅または住宅を含む建築物の屋根を指す(5.73(b)・5.74(c)) |
| 独立車庫へのパネル設置 | 可能。その独立車庫が当該建築物のカーティレッジの境界内にあり、要求事項L3の条件が満たされるなら、そこに設置して必要な出力を満たすことができる(他の関連要求への適合が前提) |
| 附属書Bの離隔の使い方 | 主として「合理的に実行可能な屋根面積」の大きさを決めるためのもの。すべての状況を網羅する意図ではなく、発電量を最大化し、適用される規制要求に適合し、メーカーの指示に従うのであれば、実際の設置では異なる離隔が適切な場合もある |
| 離隔の測り方 | 屋根の要素から、当該パネルの端部まで測る |
| 使用するパネルの寸法 | 指定はない。目標とする出力が、利用可能な屋根の実現可能な出力を正確に反映するようにするための柔軟性。建物の設計の文脈に適した寸法を使うべきで、多くの場合は市販の住宅用パネルの寸法が使われるとされる |
| カーティレッジの範囲 | 建築物と密接かつ直接に結びつき、その「一部をなす(part and parcel)」土地。戸建では庭・車庫・車路など、住宅を含む建築物ではサービスヤード・中庭なども含まれ得る。物理的な配置、所有関係、用途・機能を踏まえて個別に判断する |
| 要求事項L2との関係 | L3のために設置するシステムも、L2を含む他の関連するすべての建築規則に適合しなければならない。L2の観点で「敷地と利用可能なインフラに対して適切な規模」とされる出力が、5.73・5.74 で算定した出力と異なることはあり得る。適切かどうかは個別の事案の事実による |
| L2の適切性の判断材料 | 敷地内のエネルギー需要/利用可能なインフラの容量と性質(配電事業者が定める逆潮流の上限を含む)/逆潮流の上限・発電量・敷地内需要の関係/システムの規模や出力に影響し得るその他の敷地の特性。各要素の重みは事案による |
出典:GOV.UK「Approved Document L: Energy and greenhouse gas emissions, frequently asked questions」(2026年9月8日公表)。訳と要約は当社。
最後の2行は、読み飛ばせないところです。 L3を満たすために大きく載せた結果、L2(適切な規模)の側で問題になり得るという構造を、FAQは正面から認めています。 配電事業者が定める逆潮流の上限が具体例として挙げられているとおり、 系統側の制約と、建築規則の要求量とが、必ずしも一致しないことを前提にした書き方です。 日本でも系統連系の制約は実務の悩みどころですから、ここは共感しやすい論点だと思います。
日本で「新築住宅への太陽光の義務化」といえば、東京都の建築物環境報告書制度です。 令和4年12月の条例改正(令和4年東京都条例第141号)により新設され、令和7年度から施行されました。 英国の要求事項L3と並べると、同じ目的の制度でありながら、書き方がほとんど正反対であることが分かります。
東京都の再エネ設置基準の算定式
再エネ設置基準[kW]= 年間の設置可能棟数[棟]× 算定基準率 × 棟当たり基準量[kW/棟]
年間の設置可能棟数[棟]= 1年間に都内に建設等する中小規模特定建築物の棟数 − そのうち算定除外可能建築物の棟数
棟当たり基準量=2kW(適合義務)/5kW(誘導すべき基準・努力義務。分譲戸建住宅は4kW)
出典:東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度に関するガイドライン(第2.0版)」第2章 第4。
この制度の性格を決定づけているのは、ガイドラインの次の一文です。
「再エネ設置基準は、建設等する中小規模特定建築物1棟ごとの設置容量ではなく、特定供給事業者に対し、1年間に都内に建設等する中小規模特定建築物等に設置する総容量として設定する。」
「この棟当たり基準量(2kW)は、再エネ設置基準(特定供給事業者ごとの総量)を算定する際の「係数」として設定するものであり、中小規模特定建築物1棟ごとに義務付ける設置量ではない。」
算定基準率は、都内を3つに区分して設定されています。 区分の根拠は「都内に存する建築物のうち、一定以上の太陽エネルギーの利用に適した建築物の割合」です。
表10|東京都の算定基準率
| 区域の区分 | 区市町村 | 算定基準率 |
|---|---|---|
| 1 | 千代田区、中央区、檜原村及び奥多摩町 | 0.30 |
| 2 | 港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、大田区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区及び武蔵野市 | 0.70 |
| 3 | 目黒区、世田谷区、八王子市、立川市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市、瑞穂町及び日の出町 | 0.85 |
| 一律 | 建設等する場所に関係なく一律の算定基準率を用いる方法(事業者が選択) | 0.85 |
出典:東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度に関するガイドライン(第2.0版)」表8。 区域の区分ごとの率を用いる方法と、一律の率を用いる方法のいずれかを、特定供給事業者が選択します。
算定除外可能建築物も、英国の「不可能な場合」とは書き方が違います。東京都は屋根の面積の数値で線を引いています。
表11|東京都の算定除外可能建築物
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| ①(ア) | 傾斜又は方位が異なる南面等屋根が1つ以下の場合:南面等屋根の水平投影面積が20㎡未満であること |
| ①(イ) | 南面等屋根が2つ以上の場合:最も大きい南面等屋根の水平投影面積が20㎡未満であり、かつ2番目に大きい南面等屋根の水平投影面積が10㎡未満であること |
| ② | 地域の建築制限等、法令により再エネ設備を設置できない建築物 |
出典:同ガイドライン 第2章 第4 の1(3)。「南面等屋根」は、水平屋根又は方位が南を含む東から西までに面する屋根をいいます。 水平屋根(傾斜角0度以上3度未満)は水平投影面積に5/6倍の補正ができるものとされ、傾斜屋根は傾斜角3度以上60度未満とされています。 該当が確認できる図面等(屋根伏図に縮尺・方位・南面等屋根の水平投影面積・勾配角度を明示したもの)は、報告書を提出した翌年度の末日まで保管が必要です。
以上を踏まえて、2つの制度を並べます。
表12|英国の要求事項L3と、東京都の再エネ設置基準
| 項目 | 英国(イングランド)要求事項L3 | 東京都 再エネ設置基準 |
|---|---|---|
| 義務の単位 | 建築物1棟ごと | 特定供給事業者の1年間の総量 |
| 義務を負う者 | 建築工事に責任を負う者(Approved Document L は代理人・設計者・施工者・設置者・建物所有者を挙げている) | 特定供給事業者 |
| 対象者の規模要件 | Approved Document L 第1巻には規定なし | 対象となる中小規模特定建築物の都内年間供給面積が20,000㎡以上の建物供給事業者。都へ申請し承認を受ければ、単独では5,000㎡以上20,000㎡未満の事業者も、各社5,000㎡未満でも合計5,000㎡以上なら複数事業者の連名でも参加できる |
| 対象建築物 | 住宅である、または1以上の住宅を含む建築物の新築(L3の適用除外あり) | 1棟当たりの延べ面積が2,000㎡未満の規格建築物の新築(中小規模特定建築物)。制度の対象外である種類の建築物は除く |
| 基準の単位 | 年間発電量(kWh) | 定格出力(kW) |
| 基準の立て方 | 効率0.22kWp/㎡のパネルを地上階床面積の40%に相当する面積に敷き、南東〜南西向き・傾斜45度・日影なしで置いたときの年間発電量以上(または合理的に実行可能な屋根面積で覆ったときの年間発電量以上)。これは条文ではなく Approved Document L の適合ガイダンス | 設置可能棟数 × 算定基準率 × 棟当たり基準量2kW |
| 地域差の扱い | Approved Document L 第1巻には地域別の係数を置いていない。方位・日影の影響は承認された計算方法が織り込む | 算定基準率を区域ごとに0.30/0.70/0.85の3区分(一律0.85も選択可) |
| 除外の書き方 | 規則7(4)の建築物/設計または周辺の状況により設置が不可能/当該建築物の上にも、そのカーティレッジの境界内にもない敷地内の再生可能電力の発電システムから同等の出力が供給可能で、居住者の用に供せるよう設計されている場合 | 南面等屋根の水平投影面積による数値基準(20㎡未満など)/法令により設置できない場合 |
| 屋根が足りない場合 | 「例外的な状況」を説明する際の目安として年間720kWh(住宅を含む建築物は1住戸あたり720kWh÷階数)。最低設置量でも自動的な免除でもない | 2kW相当の設置が物理的に困難な建築物は、棟数の算定から除くことができる(上記の面積基準で判定) |
| 40%基準に届かない場合 | 最大化の努力(5.76)+BRELレポートに明示+根拠を建築確認機関へ提出(5.78)。提出物は必要に応じて屋根伏図・陳述・署名入り計算書(B9)。対象は5.73(a)・5.74(a)・5.74(b)に達しないもの | 除外要件に当たらない限り棟数に算入され、他の棟の設置量を含めた総量で適合を判断 |
| 屋根の離隔 | 附属書Bの表B1・B2・B3に数値で規定(主に「合理的に実行可能な屋根面積」の算定用。実際の設置では異なる離隔が適切な場合もある) | ガイドラインには離隔寸法の規定を置いていない(除外判定に必要な屋根の水平投影面積の算定方法を規定) |
| 施行 | L3を挿入する規則3の施行は2027年3月24日(HRBに関わる工事および既存HRBへの工事は2027年9月24日) | 令和7年度から施行 |
出典:英国側は Approved Document L, Volume 1(2026年版)および Building Circular 01/2026、東京都側は「東京都建築物環境報告書制度に関するガイドライン(第2.0版)」。 表の対比と整理は当社によるものです。両制度は法体系も対象も異なるため、優劣を示すものではありません。
最後に、設計事務所・建築主の立場から見たときに意味があると当社が考える点を3つ挙げます。 ここから先は一次資料の記載ではなく、当社の整理です。
1つ目は、「発電量で書く」と技術の進歩が自動的に効いてくること。 仮に「屋根面積の◯%にパネルを敷け」と面積で書いていたら、 高効率パネルを使っても載せる面積は減りません。 英国は基準側を「効率0.22kWp/㎡の仮想パネルを40%の面積に敷いたときの発電量」に固定し、 設計側の発電量がそれ以上であればよい形にしました。 その結果、効率の高いパネルを選べば、より小さい面積で適合できます。 逆に言えば、パネルの選定が「載る/載らない」を左右する設計判断になったということでもあります。
2つ目は、「載せられなかった理由」を図面で説明させる仕組みになっていること。 第04節で見たとおり、5.73(a)・5.74(a)・5.74(b)の水準に届かない場合は、必要に応じてパネル有無2種の屋根伏図と、設計を変更できない理由の陳述と、適格者が署名した計算書を提出します。 日本の実務では、太陽光は一次エネルギー消費量計算の中の一項目であり、 「載せなかったこと」自体を説明する書類は、当社が実務で扱っている範囲では見当たりません。 東京都の制度でも保管が求められるのは除外に当たることを示す屋根伏図であって、 「載せられる最大量」の立証ではありません。 この「説明させる」という設計が、制度の実効性をどこまで押し上げるかは、施行後に見えてくるところだと思います。
3つ目は、棟で縛るか総量で縛るかで、設計者が向き合う相手が変わること。 東京都の方式では、適合判断の相手は事業者の年度の集計です。 個々の住宅の屋根に載るかどうかは、事業者の中で吸収されます。 英国の方式では、適合判断の相手はその1棟(屋根と、そのカーティレッジ)であり、 届かなければその棟について根拠を出すことになります。 設計の自由度という点では東京都の方式のほうが緩く、 1棟ごとの確実性という点では英国の方式のほうが強い——という、分かりやすいトレードオフになっています。
この記事はイングランドの建築規則について書いたものです。 日本の建築物省エネ法、省エネ適合性判定、WEBプログラムの計算、東京都の制度のいずれについても、 この改正によって変わる要素は、当社が確認した範囲では見当たりません。 また英国の要求事項L3は2026年9月時点では施行前であり、 L3を挿入する規則3の施行は2027年3月24日(高リスク建築物に関わる工事および既存HRBへの工事は2027年9月24日)です。 「英国ではすでに義務化されている」という書き方は、現時点では正確ではありません。 さらに、要求事項L3が求めているのは「敷地内の再生可能電力の発電システム」であって、太陽光に限られていません(5.70は「再生可能技術」と書いています)。 本記事が屋根置き太陽光を中心に扱っているのは、Approved Document L の適合ガイダンスがその方法を具体的に示しているためです。 そして本記事で扱った数値は、いずれも条文そのものではなく、適合の方法として示されたものです。
合同会社テトは、住宅・非住宅の省エネ計算(外皮計算・一次エネルギー消費量計算)、 省エネ適合性判定・BELS・低炭素・ZEH/ZEB、東京都の建築物環境計画書、CASBEEの各種届出を代行しています。 海外制度そのものの申請は扱っていませんが、国内制度の計算と届出については、根拠資料の作成から審査対応まで一貫してお引き受けします。 太陽光発電設備を含む一次エネルギー消費量計算や、東京都の各種届出についても、まずはお気軽にお問い合わせください。
これはイングランドの建築規則(Building Regulations 2010)を改正するものであり、日本の制度を変更する資料ではありません。日本の建築物省エネ法、省エネ適合性判定の手続、WEBプログラムの計算について、この改正によって変わる要素は、当社が確認した範囲では見当たりません。読む意味があるとすれば、「再生可能電力の設置の義務を、法令でどう定め、適合ガイダンスでどう具体化するか」の実例としてです。英国は要求事項を法令に置いたうえで、適合の方法を1棟ごとの計算式で示し、東京都は事業者の1年間の総量で基準を立てました。同じ「太陽光の義務化」でも、設計者が図面の上で向き合う制約の形がまったく違います。
おおむねそのとおりですが、3点の補足が要ります。1つ目は時期です。Approved Document L 2026年版の表紙には、2027年3月24日から(高リスク建築物に関わる工事は2027年9月24日から)効力を生じると記載されています。つまり2026年9月時点ではまだ施行前です。2つ目は対象です。要求事項L3が対象とするのは「住宅である、または住宅を含む建築物」を建てる場合で、Building Circular 01/2026 も「新築の住宅(および住宅を含む建築物)のための再生可能電力の発電に関する新しい機能要求事項」と説明しています。また設置が不可能な場合などの適用除外も条文に置かれています(本文の第01節)。3つ目は「太陽光」という言い方です。要求事項L3が求めているのは「敷地内の再生可能電力の発電システム」であって、太陽光に限られていません。Approved Document L 5.70 も「再生可能技術(renewable technologies)によって生み出される最小量」と書いています。本記事が屋根置きの太陽光を中心に扱っているのは、Approved Document L の適合ガイダンスがその方法を具体的に示しているためです。
違います。Approved Document L 2026年版 第1巻 5.73(a) が示しているのは「年間発電量(kWh)」の水準であって、設置面積ではありません。ガイダンスは、「効率0.22kWp/㎡のパネルを、その住宅の地上階床面積の40%に相当する面積に敷き、南東〜南西向き・傾斜45度・日影なしで設置した場合」の年間発電量を計算し、実際の計画の年間発電量がそれ以上(at least equal to)であればよいという書き方です。したがってより高効率のパネルを使えば、より小さい面積で同じ発電量に届きます。なお、この年間発電量は承認された計算方法で求めるもので、2026年9月8日のFAQはSAP 10.3 の附属書M1「M1 Photovoltaics」の手順によるとしています。また Approved Document L は適合の方法を示した文書であり、同文書自身が「承認された文書に記載された以外の方法で要求事項を満たすこともあり得る」と述べています。
Approved Document L 2026年版 第1巻は、段階を踏んだ手順を示しています。まず5.76で、基準に届かない場合は可能な範囲で発電量を最大化する努力をすべきとし、より高性能なパネルの採用、パネルの向きの変更、屋根の換気口や意匠上の要素の位置の変更などを挙げています。次に5.77が「例外的な状況」の例を挙げ、戸建住宅では年間720kWhを発電できるだけの屋根面積がないこと、住宅を含む建築物では1住戸あたり「720kWhを階数で除した値」を発電できるだけの屋根面積がないことを、5.73/5.74 と附属書B に従って示せる場合としています。この720kWhは「これだけ設置すれば必ず適合する」という最低設置量でも、自動的に免除されるしきい値でもありません。5.77 は「こうした状況には次のものが含まれる(These circumstances include)」という書き方で、例を挙げたものです。そして5.78により、5.73(a)・5.74(a)・5.74(b) の水準に達しない太陽光アレイはBRELレポートに明示されることになり、根拠は建築確認機関へ提出します。提出物は附属書B9 に「必要に応じて」列挙されています(本文の第04節)。
義務を負う単位が違います。英国の要求事項L3は建てる建築物1棟ごとにかかります。東京都の建築物環境報告書制度の再エネ設置基準は、特定供給事業者が1年間に都内に建設等する中小規模特定建築物の総容量として設定されます。東京都のガイドラインは、算定に使う棟当たり基準量(2kW)について「総量を算定する際の『係数』として設定するものであり、中小規模特定建築物1棟ごとに義務付ける設置量ではない」と明記しています。その結果、東京都ではある1棟に載せられなくても、他の棟で総量を満たせば適合しますが、英国ではその棟ごとに判断され、届かない場合は根拠の提出が要ることになります。また単位も、英国は発電量(kWh)、東京都は定格出力(kW)で異なります(本文の表12)。
2026年9月8日に公表されたFAQは、原則として含めるという立場を示しています。「合理的に実行可能な屋根面積(reasonably practicable roof area)」の計算に北向きの屋根面を含める必要があるかという問いに対し、FAQは「はい」と答えたうえで、北向きであることによって発電量が下がることは、その屋根面を除外する理由として十分とは考えにくい(unlikely to be sufficient justification)と述べています。理由として、承認された計算方法が方位による発電量への影響を織り込んでいるからと説明されています。強く日影になる屋根面についても、同じ理由で同じ回答がされています。つまり「方位や日影による発電量の低下だけでは、通常、除外の十分な理由にならない」という趣旨であって、設計上の制約を個別に検討する余地まで否定したものではありません。FAQは、関連する設計上の制約を考慮したうえで、何が「合理的に実行可能な屋根面積」にあたるかを特定し、それを建築確認機関に対して正当化する責任は開発者にあるとも述べています。
2026年4月の見直しと、英国の改正案との違い。
2030/31年度に18%へ上げる案と、日本の給湯器の新制度との違い。
v7の2枚の証書と移行スケジュール。日本のBELS・CASBEEとの違い。
SAP 10.3とHEMの24か月併走、6か月前予告。版が変わるときの決め方。
燃料を名指しせず閾値で書いた政令。住宅2027年・その他2030年。
改正案のUA値0.8・BEI0.85。改正後のBEIは創エネを除いた値。
窓のU値・BEIの基準年・気候区分・義務化範囲。評価の枠組みがどこで違うか。
EPBDの期限、欧州9か国のエンボディドカーボン規制、認証制度の対応。
建築物環境計画書・CASBEE・省エネ適判。都内の届出をまとめて。
Sources — 出典
英国住宅・コミュニティ・地方自治省(MHCLG)「Approved Document L: Energy and greenhouse gas emissions (2026)」(2026年3月24日公表/2026年9月8日更新)所収の Approved Document L, Volume 1: Dwellings(2026年版・全120ページ)。表1・表2・表4〜表8、要求事項L3の条文の要旨、5.70・5.72・5.73・5.74・5.76・5.77・5.78、式5.1・5.2・5.3とその注記、附属書B9・B10・B11および表B1・表B2・表B3、図B1〜図B3の数値、施行日の記載は、この資料によります。また「承認された文書に記載された以外の方法で要求事項を満たすこともあり得る」こと、建築工事に責任を負う者として代理人・設計者・施工者・設置者・建物所有者が挙げられていることは、同書 p4(Building Regulations 2010 の説明)によります。更新の内容(改訂版の追加とFAQの追加)は同ページの更新履歴の記載によります。
GOV.UK「Approved Document L: Energy and greenhouse gas emissions, frequently asked questions」(2026年9月8日公表)。表9の内容(SAP 10.3 附属書M1、北向きの屋根と日影の扱い、合理的に実行可能な屋根面積を特定する責任、パネル効率の算出方法、独立車庫の床面積・屋根面積・パネル設置の扱い、附属書Bの離隔寸法の使い方と測り方、使用するパネルの寸法、カーティレッジの範囲、要求事項L2との関係とその判断材料)は、この資料によります。第05節の「この離隔寸法の使いどころ(FAQの留保)」も同資料によります。
英国住宅・コミュニティ・地方自治省(MHCLG)「The Future Homes and Buildings Standards: Building Circular 01/2026」(2026年3月24日付)。S.I. 2026/335 の名称と提出日、要求事項L3を創設するという記述、Part Lの目的の改正、固定建築設備の定義へのエレベーター等の追加、施行日(2027年3月24日/HRBに関わる工事等は規則3・4・6・7・8・9が2027年9月24日)、L3を挿入するのが規則3であること(附属書A)、表3の経過措置(第15項〜第17項・第23項)は、この資料によります。
東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度の概要」所収の「東京都建築物環境報告書制度に関するガイドライン(第2.0版)」。第07節の再エネ設置基準の算定式、棟当たり基準量(2kW/5kW/分譲戸建住宅4kW)とそれが「係数」であるという記述、年間の設置可能棟数の定義、表10の算定基準率と区域の区分、表11の算定除外可能建築物の要件、南面等屋根の定義と水平屋根の5/6倍の補正、図面等の保管、特定供給事業者の要件(都内年間供給面積20,000㎡以上・単独での任意参加は5,000㎡以上20,000㎡未満・複数事業者の連名参加)、中小規模特定建築物の定義(1棟当たりの延べ面積2,000㎡未満の規格建築物で、制度の対象外である種類の建築物を除く)、条例改正(令和4年東京都条例第141号)と令和7年度からの施行は、この資料によります。
e-Gov法令検索「建築基準法施行令」第2条第1項第3号(床面積)・第4号(延べ面積)。第03節の「日本の実務者向けの注記」で引用した床面積・延べ面積の定義は、この条文によります。
なお、表12の対比、第05節・第06節の解説、第08節の整理、および各節の「日本の実務との違い」に関する記述は、出典の記載ではなく当社の整理です。「日本には相当する仕組みが見当たらない」という趣旨の記述は、当社が実務で扱っている範囲についての所見であり、日本のすべての制度に存在しないことを確認したものではありません。英語資料の訳はすべて当社の試訳であり、公式の日本語訳ではありません。