住宅の省エネ計算に使うプログラムは、2026年4月1日にVer.3.9.0からVer.3.10.0へ改定されました。国立研究開発法人建築研究所が公表した「2026年4月における評価方法の変更等の概要」には、評価方法そのものの変更が5項目、それ以外の修正が4項目、あわせて9項目が挙げられています。何がどう変わり、どの技術資料が差し替えられ、実務のどこに効くのかを、原典に沿って整理しました。
住宅(戸建・共同住宅)の計算プログラムの改定内容に絞っています。非住宅の基準引き上げについては非住宅建築物の省エネ基準にまとめました。実際の入力方法や数値の詳細は、必ず建築研究所が公開する技術情報の原典をご確認ください。
住宅の省エネルギー基準に準拠した計算プログラムは、随時改定されています。直近の改定は2026年4月1日付でVer.3.9.0からVer.3.10.0へというもので、建築研究所から「2026年4月における評価方法の変更等の概要」(令和8年4月1日)という文書が同時に公表されました。
この文書は2つの部分に分かれています。前半が「評価方法の変更について」で5項目、後半が「上記以外の修正等について」で4項目です。この区分けは実務上そのまま重要で、前半は評価の中身が動く可能性があるもの、後半は記述の統一や引用規格の更新といった、書きぶりを整えたものにあたります。
改定のタイミングにも規則性があります。ひとつ前の改定はVer.3.8.0からVer.3.9.0で2025年10月1日でした。4月1日と10月1日のおおむね年2回というペースで動いていると読めます。
表1|直近の改定と変更概要の文書
| 改定日 | バージョン | 同時に公表された文書 |
|---|---|---|
| 2025年10月1日 | Ver.3.8.0 → Ver.3.9.0 | 「2025年10月における評価方法の変更等の概要」 |
| 2026年4月1日 | Ver.3.9.0 → Ver.3.10.0 | 「2026年4月における評価方法の変更等の概要」(令和8年4月1日) |
建築研究所「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」の更新履歴、および同時公表された変更概要の文書によります。
まず「評価方法の変更について」に挙げられた5項目です。内訳は暖房設備が2つ、給湯設備が2つ、コージェネレーション設備が1つで、外皮に関するものはこちらには入っていません。
このうち変更の前後で評価結果が変わる場合があると明記されているのは、②のルームエアコンディショナー付温水床暖房だけです。ここは押さえておく価値があります。
表2|評価方法の変更 5項目
| № | 区分 | 変更の内容 | 反映先 |
|---|---|---|---|
| ① | 暖房設備 | 低出力モードを搭載している電気ヒーター床暖房の確認方法について、出力の制御方法が時間制御の場合に、定格消費電力の根拠となるSマークの第三者認証機関として、電気安全環境研究所(JET)以外の機関を含めるように変更 | 第四章 第五節 |
| ② | 暖房設備 | ルームエアコンディショナー付温水床暖房の評価方法において、補機の消費電力量を算定する式が変更。変更の前後で評価結果が変わる場合がある | 第四章 第八節 |
| ③ | 給湯設備 | ヒートポンプ給湯機について、引用規格からJIS C 9220:2011およびJRA4050:2007Rを削除。あわせて、給湯機の効率にJRA4050に基づく年間給湯効率(APF)を換算した値を用いる方法を廃止し、確認するべき設備機器の性能値からも同規格に基づくAPFを削除 | 第七章 第一節・第四節 第十一章 第四節 |
| ④ | 給湯設備 | マルチバス方式を採用する電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機を、評価対象として新たに追加 | 第七章 第一節・第六節 |
| ⑤ | コージェネレーション設備 | 引用規格にJIS C 8852:2024「小形燃料電池発電システムのエネルギー消費量の測定方法及びエネルギー消費量推定に用いる設備仕様の算定方法」およびJIS S 2075:2011「家庭用ガス・石油温水機器のモード熱効率測定法」を追加。これに伴い、コージェネレーション設備の仕様の根拠としてJIS C 8852を追加 | 第八章 |
内容は建築研究所「2026年4月における評価方法の変更等の概要」(令和8年4月1日)の記載に沿っています。①〜⑤の番号は本記事で整理のために付したものです。
後半の「上記以外の修正等について」は4項目です。外皮が2つ、給湯設備が1つ、自然エネルギー利用設備が1つという内訳になっています。外皮に関する変更はこちらに入っていて、文言の修正と引用規格の更新という位置づけです。
ただし⑨だけは性格が違います。空気集熱式太陽熱利用設備の算定式に数学的な不備があったため修正したという、いわば誤りの訂正です。この設備を採用している住宅では、改定前の結果をそのまま使い続けないほうがよいということになります。
表3|上記以外の修正等 4項目
| № | 区分 | 修正の内容 | 反映先 |
|---|---|---|---|
| ⑥ | 外皮 | 開口部の面積に関する文言を一部修正 | 第三章 第二節 |
| ⑦ | 外皮 | ガラス、窓及びドア、サッシに関連するJISとISOについて、最新の改訂内容に対応するために引用規格を更新 | 第三章 第一節〜第四節 |
| ⑧ | 給湯設備 | 水優先吐水機構について、本文「3. 用語の定義」と付録Dとで記述内容が一致するように修正 | 第七章 第一節 |
| ⑨ | 自然エネルギー利用設備 | 空気集熱式太陽熱利用設備について、算定式の一部に数学的な不備があったため、これを修正 | 第九章 第三節 |
9項目の変更に対応して、技術情報(住宅)の6つの章・あわせて12節が2026年4月1日付で差し替えられています。どの節が動いたかを一覧にすると、担当している住宅に関係があるかどうかを短時間で判断できます。
表4|2026年4月1日付で差し替えられた技術情報(住宅)
| 章 | 節 | 版 | 対応する変更 |
|---|---|---|---|
| 第三章 暖冷房負荷と外皮性能 | 第一節 全般 | v20 | ⑦ |
| 第三章 | 第二節 外皮性能 | v13 | ⑥⑦ |
| 第三章 | 第三節 熱貫流率及び線熱貫流率 | v26 | ⑦ |
| 第三章 | 第四節 日射熱取得率 | v20 | ⑦ |
| 第四章 暖冷房設備 | 第五節 電気ヒーター床暖房 | v13 | ① |
| 第四章 | 第八節 ルームエアコンディショナー付温水床暖房 | v09 | ② |
| 第七章 給湯設備 | 第一節 全般 | v30 | ③④⑧ |
| 第七章 | 第四節 電気ヒートポンプ給湯機 | v30 | ③ |
| 第七章 | 第六節 電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯温水暖房機の給湯部 | v30 | ④ |
| 第八章 コージェネレーション設備 | コージェネレーション設備(章全体) | v21 | ⑤ |
| 第九章 自然エネルギー利用設備 | 第三節 空気集熱式太陽熱利用設備 | v06 | ⑨ |
| 第十一章 その他 | 第四節 建材、設備、部品等の性能確認方法 | v06 | ③ |
版は建築研究所が公開しているPDFの版数です。「対応する変更」の丸数字は表2・表3の番号に対応します。網かけの行は、評価方法そのものが変わった暖房設備・給湯設備です。
9項目のうち、日々の計算業務で実際に手が止まるのは限られています。優先順位をつけるとすれば、次の3つです。
唯一「評価結果が変わる場合がある」と明記された項目です。補機の消費電力量の算定式が変わりましたので、この設備を採用している住宅では、改定前に出した一次エネルギー消費量をそのまま使わず、計算し直すのが安全です。共同住宅で温水床暖房を採用している計画は少なくありませんので、該当があれば早めに確認しておきたいところです。
JRA4050に基づくAPFを換算して効率とする方法が廃止され、確認するべき性能値からも同規格に基づくAPFが削除されました。ここは入力そのものというより、根拠資料の集め方が変わる話です。手元にある古いカタログや性能証明書を根拠に入力していると、審査で根拠の規格を問われる可能性があります。メーカーから最新の資料を取り直しておくのが確実です。
算定式の数学的な不備が修正されました。採用例そのものが多い設備ではありませんが、該当する住宅では計算のやり直しが必要になります。
逆に、④のマルチバス方式の追加はこれまで評価方法が用意されていなかったものを評価できるようになったという前向きな変更です。採用を検討している計画では、選択肢が広がったことになります。
外皮側の⑥⑦については、評価結果が変わるという記載はありません。ただし建具の性能値をJISやISOの試験成績で確認している場合は、参照している規格の版が現行のものかどうかを一度見ておくとよいと思います。
建築研究所は、現行版の技術情報とは別に「エネルギー消費性能の算定方法(次期更新版)」という形で、次の版の資料を先行して公開しています。更新履歴を見ると、2026年に入ってからも1月・2月・4月・7月と繰り返し更新されています。
つまり次にプログラムが改定されたときに何が変わるのかは、改定日を待たなくてもある程度は把握できるということです。設計の初期段階で設備の方針を決めるような場面では、この次期更新版まで見ておくと、後から計算をやり直す事態を避けやすくなります。
過去の改定日は4月1日と10月1日に集中していますので、次の節目は2026年10月1日である可能性が高いと考えられます。ただしこれは公表された改定履歴からの推測であって、公式に予告されているものではありません。
当社では、国土交通省・建築研究所の公表資料の更新を毎週確認しています。実務に影響のある改定があったときは、このページと同じ形で内容を整理して公開していきます。
□ ルームエアコンディショナー付温水床暖房を採用している案件があるか
□ ヒートポンプ給湯機の性能値の根拠資料が、現行の規格に基づくものになっているか
□ 空気集熱式太陽熱利用設備を採用している案件があるか
□ 建具の性能値の根拠としているJIS・ISOの版が現行のものか
□ 年度をまたぐ案件について、提出先とどの版で計算するかを確認したか
建築研究所が公表した「2026年4月における評価方法の変更等の概要」のうち、評価結果が変わる場合があると明記されているのはルームエアコンディショナー付温水床暖房の1項目だけです。補機の消費電力量を算定する式が変更されましたので、この設備を採用している住宅では、同じ入力でも一次エネルギー消費量が動く可能性があります。残りの項目は、評価対象の追加、確認方法や引用規格の変更、記述の統一といった内容ですので、該当する設備を使っていない住宅であれば結果に影響しません。ただし該当設備がある場合は、改定前に出した数値をそのまま流用せず、計算し直しておくほうが安全です。
建築研究所は過去の算定方法と、それに対応するプログラムのバージョンをアーカイブとして公開し続けていますので、旧版の根拠資料が参照できなくなるということはありません。一方で、どの版で計算したものを受け付けるかは、所管行政庁や登録省エネ判定機関、評価機関の取扱いによります。年度をまたぐ案件や、先に外皮だけ出して一次エネルギーが後になるような進め方をしている案件では、提出先に事前に確認しておくと差し戻しを避けられます。当社で代行する場合も、提出先とバージョンの確認を含めて進めています。
引用規格からJIS C 9220:2011「家庭用ヒートポンプ給湯機」と、日本冷凍空調工業会標準規格JRA4050:2007R「家庭用ヒートポンプ給湯機」が削除されました。これに伴って、給湯機の効率にJRA4050に基づく年間給湯効率(APF)を換算した値を用いる方法が廃止され、確認するべき設備機器の性能値からも同規格に基づくAPFが削除されています。実務上は、メーカーのカタログや性能証明書からどの数値を拾うかという話に直結しますので、古い資料を根拠に入力していた場合は、根拠となる規格が現行のものかどうかを確認する必要があります。
マルチバス方式を採用する電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機が、評価対象として新たに追加されました。従来は評価方法が用意されていなかったため、実際には設置していても計算上は別の扱いを取らざるを得ませんでしたが、Ver.3.10.0からは技術情報の第七章第一節および第六節に示された方法で評価できます。採用を検討されている場合は、機器の性能値としてどの数値を用意すればよいかを、設備設計の早い段階でメーカーに確認しておくとスムーズです。
2項目あります。ひとつは開口部の面積に関する文言の一部修正、もうひとつはガラス・窓およびドア・サッシに関連するJISとISOについて、最新の改訂内容に対応するために引用規格を更新したものです。いずれも技術情報の第三章に反映され、第一節「全般」・第二節「外皮性能」・第三節「熱貫流率及び線熱貫流率」・第四節「日射熱取得率」の4節が差し替えられています。変更の概要には、これらについて評価結果が変わるという記載はありません。ただし建具の性能値をJISやISOの試験成績で確認している場合は、参照している規格の版が現行のものかどうかを見ておくとよいと思います。
直近の改定は、Ver.3.8.0からVer.3.9.0が2025年10月1日、Ver.3.9.0からVer.3.10.0が2026年4月1日でした。この経緯からは、4月1日と10月1日のおおむね年2回のペースで改定されていると読めます。そのうえで建築研究所は「エネルギー消費性能の算定方法(次期更新版)」という形で、次の版の資料を先行して公開しており、2026年に入ってからも複数回更新されています。断定はできませんが、次の改定に何が含まれるのかは、この次期更新版を見ておくとおおよそ把握できます。当社では毎週この更新を確認しています。
EPBD改正・LEED v5・BREEAM V7と、日本のライフサイクルカーボン評価。
2026年12月1日に lowenergy.jp から lowenergy.mlit.go.jp へ。対象16システム。
外皮計算・一次エネルギー消費量計算・BEI算出を一級建築士が直接。
ZEH-M Orientedを満たす設備仕様の組み合わせ。
住戸分類と断熱厚さの実例、納まりの制約まで。
2026年4月からのBEI引き上げと3つの計算方法。
計算をやり直したとき、再申請が要るのか要らないのか。
UA値・ηAC値・BEI・一次エネルギーなどを平易に。
Sources — 出典