「日本の省エネ基準は海外より緩いのか」という質問をよくいただきます。答えは基準の立て方が違うので単純比較はできない、ただし外皮に求める水準は明確に低い、です。本記事では日本・英国・ドイツ・韓国・フランス・米国の一次資料から数値を拾い、東京(6地域)の壁・屋根・窓を並べて確かめます。そのうえで、なぜ日本の基準は数字が違って見えるのか——相対評価の基準年、気候区分の切り方、義務化の範囲、表示制度の役割——を順に切り分けます。
住宅を中心に整理しています。制度の改正動向そのものは海外の省エネ計算とLEED・CASBEEの最新動向にまとめました。日本の非住宅の基準は非住宅建築物の省エネ基準、共同住宅の外皮は仕様基準と性能基準の比較をご覧ください。
各国の省エネ基準を並べようとすると、最初に3つの壁にあたります。
1つ目は指標が違うことです。日本は外皮平均熱貫流率(UA)と一次エネルギー消費量の比(BEI)で評価します。ドイツは参照建築物との比、フランスは一次エネルギー消費量の絶対値(kWh/㎡・年)、米国は部位ごとの断熱抵抗と熱貫流率の処方基準、オーストラリアは星の数。同じ「基準」という言葉が、まったく違うものを指しています。
2つ目は気候区分の切り方が違うことです。日本は8地域、韓国は4地域、米国は9つの気候ゾーン。一方でドイツと英国は全国一律の基準を立て、気候の違いは計算プログラム側の気象データで処理します。
3つ目は義務の範囲が違うことです。日本は2025年4月から全ての新築で省エネ基準への適合が義務になりましたが、既存建築物への強制はありません。EUは新築のゼロエミッション化と並行して、既存ストックのうち性能の悪いものから順に改修を強制する仕組みを持っています。
ですので本記事では、比較可能なところだけを切り出します。もっとも比較しやすいのは部位別の熱貫流率(U値)です。単位は各国共通でW/(㎡・K)、値が小さいほど高性能。これなら並べられます。
比較の基準点として、日本の水準を国土交通省の資料で押さえます。住宅の省エネ基準は、外皮性能基準(UA値・ηAC値)と一次エネルギー消費量基準(BEI)の両方に適合することが必要です。
ここで注意が必要なのは、外皮性能の確認には2つのルートがあることです。性能基準ルートではUA値とηAC値を計算して基準値以下であることを示します。仕様基準ルートでは、部位ごとの熱貫流率と開口部の仕様が表の値を満たしていることを確認します。国際比較で使えるのは後者の部位別の値です。
表1|日本の断熱等性能等級とUA値の基準値(戸建住宅)
| 等級 | 1地域 夕張等 | 2地域 札幌等 | 3地域 盛岡等 | 4地域 会津若松等 | 5地域 水戸等 | 6地域 東京等 | 7地域 熊本等 | 8地域 沖縄等 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 等級7 | 0.20 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | 0.26 | ― |
| 等級6 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 | ― |
| 等級5 ZEH水準・誘導基準 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | ― |
| 等級4 省エネ基準(義務) | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | ― |
| 等級3 | 0.54 | 0.54 | 1.04 | 1.25 | 1.54 | 1.54 | 1.81 | ― |
| 等級2 | 0.72 | 0.72 | 1.21 | 1.47 | 1.67 | 1.67 | 2.35 | ― |
単位はW/(㎡・K)。等級5は2022年4月、等級6・7は2022年10月に施行されました。等級6は暖冷房の一次エネルギー消費量を概ね30%削減、等級7は概ね40%削減できる水準を目安に設定されたもので、8地域については等級6を上回る現実的な日射遮蔽対策が想定されないため等級7を設定していません。一次エネルギー消費量の側は、省エネ基準がBEI≦1.0、誘導基準がBEI≦0.8(太陽光発電による削減を見込まない)です。
国土交通省の解説資料には、住宅の一次エネルギー消費量基準は「2012年時点の一般的な設備機器の省エネ性能」より策定したと明記されています(非住宅は2010・2011年度の省エネ計画書の届出データから標準的な仕様を策定)。つまりBEI 1.0は「2012年頃の標準的な設備を入れた住宅と同じ」という意味です。相対評価であること自体が問題なのではなく、比較の相手が固定されていることが、他国との数字の見え方の差を生みます。この点は第5節で詳しく扱います。
ここからが本題です。東京(6地域)で日本が義務として求める部位別の値と、英国・ドイツ・韓国が求める値を、同じ単位で並べます。
並べる相手の性格を先に整理しておきます。英国は建築規則の承認文書(Approved Document L Volume 1, 2026 edition)の表3.1に「新築住宅の限界U値」が定められています。これはこれ以上悪くしてはいけないという下限値で、実際の適合判定は仮想の参照住宅(notional dwelling)との比較で行われますので、実務上必要になる性能はこの下限値より高くなります。ドイツは建物近代化法(GModG、旧GEG)の別表1に参照建築物の仕様が定められ、実際の建物は年間一次エネルギー需要が参照建築物の0.55倍以下、かつ伝達熱損失が参照建築物の1.0倍以下でなければなりません。韓国は「建築物の省エネ設計基準」の別表1で、地域別・部位別の熱貫流率が法定されています。
表2|東京(6地域)と各国の部位別 熱貫流率の要求水準
| 国・区分 | 外壁 | 屋根・天井 | 窓(開口部) | 性格 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 6地域 戸建・木造/省エネ基準 | 0.53 | 0.24 | 4.7 | 仕様基準ルートの部位別基準値(義務水準) |
| 日本 6地域 戸建・木造/誘導基準 | 0.44 | 0.22 | 2.3 | ZEH水準(等級5相当) |
| 日本 6地域 共同・RC内断熱/省エネ基準 | 0.97 | 0.92 | 4.7 | 仕様基準ルートの部位別基準値(義務水準) |
| 日本 6地域 共同・RC内断熱/誘導基準 | 0.70 | 0.56 | 2.9 | ZEH-M水準 |
| 英国 新築住宅 | 0.26 | 0.16 | 1.6 | 限界U値(下限)。設計目標は参照住宅比較で決まる |
| ドイツ 参照建築物(住宅) | 0.28 | 0.20 | 1.3 | 参照建築物の仕様。実建物は一次エネルギーで参照建築物の0.55倍以下 |
| 韓国 中部2地域 ソウル・共同住宅 | 0.170 | 0.180 | 1.000 | 法定の熱貫流率(外気に直接面する場合) |
| 韓国 南部地域 釜山等・共同住宅 | 0.220 | 0.250 | 1.200 | 同上 |
単位はW/(㎡・K)。日本の値は国土交通省「住宅の仕様基準・誘導仕様基準について」の部位別基準表(戸建は木造・鉄骨造、共同は鉄筋コンクリート造等の内断熱)によります。日本は性能基準ルートを選べば部位別の値に縛られませんので、この表は「仕様基準ルートで通す場合に最低限どこまで必要か」を示すものです。ドイツの値には別途、熱橋加算ΔUWB=0.05 W/(㎡・K)が加わります。
数字を見ていただくと、傾向がはっきりします。外壁と屋根は、桁は違わないものの2倍から3倍の差があります。戸建木造の外壁0.53に対して英国0.26、ドイツ0.28。共同住宅のRC内断熱に至っては0.97で、韓国ソウルの0.170とは5倍以上の開きです。
そして窓は桁が違います。6地域の義務水準4.7に対して、英国1.6、ドイツ1.3、ソウル1.000。日本の誘導基準(ZEH水準)まで上げても2.3で、まだ英国の下限値に届きません。
この差は、参考仕様を見ると理由が分かります。国土交通省の仕様基準表には、各基準値に対応する参考仕様が併記されています。
6地域の省エネ基準(U≦4.7)の参考仕様はアルミサッシ・複層ガラス(A6)です。アルミの枠に、中空層6mmの複層ガラス。これが東京で義務として求められる最低ラインということになります。1〜2地域(夕張・札幌等)では2.3で、参考仕様は樹脂サッシ・Low-E複層ガラス(A12)。3地域が3.5でアルミサッシ・Low-E複層ガラス(A9)です。
誘導基準(ZEH水準・U≦2.3)の参考仕様はアルミ樹脂複合サッシ・Low-E複層ガラス(G14)または樹脂サッシ・Low-E複層ガラス(A12)です。共同住宅の誘導基準はU≦2.9で、参考仕様はアルミ樹脂複合サッシ・Low-E複層ガラス(A9)。
つまり日本の制度は、東京においてアルミサッシを使い続けられるように義務水準が置かれているという構造になっています。これに対して英国の1.6、ドイツの1.3という水準は、枠の熱伝導を抑えないと物理的に成立しません。韓国の共同住宅1.000はさらに厳しく、樹脂サッシとLow-E三層ガラスの領域です。
実務的に言えば、これは外皮の弱点がどこに集中しているかの違いでもあります。日本の住宅で熱が最も逃げるのは窓であることが多く、そこに手をつけないまま壁と天井の断熱材を厚くしても、費用対効果は落ちていきます。当社で共同住宅の外皮計算をお受けするときも、UA値が届かない案件でまず提案するのは窓の変更です。
部位別の値だけを見ると日本が一方的に低いように見えますが、それは制度の一部分でしかありません。ここで枠組みの違いを整理します。
各国の方式は、大きく相対評価と絶対評価に分かれます。日本のBEI、ドイツの参照建築物比、英国の参照住宅比は相対評価。フランスのCep、パッシブハウスの15 kWh/㎡・年は絶対評価です。
表3|評価の枠組みと指標
| 国 | 主な指標 | 方式 | 基準の立て方 |
|---|---|---|---|
| 日本 | UA/ηAC/BEI | 外皮は絶対値 設備は相対 | BEIの基準一次エネルギー消費量は2012年時点の一般的な設備機器の性能から策定。8地域区分 |
| ドイツ | 年間一次エネルギー需要/伝達熱損失H'T | 相対 (係数付き) | 法律の別表1が参照建築物の仕様を固定。実建物は参照建築物の0.55倍以下、H'Tは1.0倍以下。気候区分なし(全国一律) |
| 英国 | 一次エネルギー率/CO2排出率/外皮効率(FEE) | 相対 (3指標) | 参照住宅との比較。参照住宅の仕様が改定ごとに引き上げられる。外皮のみの指標(FEE)を別に持つ点が特徴。気候区分なし |
| フランス | Bbio/Cep・Cep,nr/DH/Ic | 絶対値 | 戸建はCep,nr≦55、共同住宅は同70 kWhep/㎡・年など(2021年8月4日のアレテ)。夏季の不快度(DH)と建設に係る炭素(Ic)も同時に規制 |
| 米国 | 部位別R値・U値/ERI | 処方基準が主 | 気候ゾーン別の処方基準(IECC)。性能ルートやERI(エネルギー格付指数)も選択可。州単位で採用 |
| 韓国 | 部位別熱貫流率/ZEB等級 | 絶対値 | 別表1で地域別・部位別の熱貫流率を法定。加えてZEB認証5等級(エネルギー自立率20%以上40%未満)を義務化(2025年6月30日から民間共同住宅30戸以上・1,000㎡以上) |
フランスの閾値は気候ゾーン・面積・住戸形式などにより調整(modulation)されますので、表の値は代表的な水準です。日本のUA・ηACは地域別の絶対値ですが、BEIは相対評価という混成になっています。
ここで見えてくるのが、相対評価は「比較の相手」の設計で厳しさが決まるということです。
ドイツは参照建築物の仕様を法律の別表に固定したうえで、そこに0.55という係数を掛けています。参照建築物の暖房はガス潜熱回収型ボイラーですから、参照建築物そのものは決して先進的ではありません。しかし0.55倍という縛りがあるため、実際の建物は参照建築物より大幅に良くならざるを得ません。係数で絶対水準を担保するやり方です。
英国は参照住宅の仕様そのものを改定ごとに引き上げます。2026年版のFuture Homes Standardでは、参照住宅がヒートポンプと太陽光発電を前提とする構成になりました。相手を強くすることで水準を上げるやり方です。加えて英国は、設備の影響を除いた外皮のみの指標(Target Fabric Energy Efficiency rate)を別に持っています。設備で外皮の弱さを埋める設計を、指標の側で封じているわけです。
日本はBEIの基準側が2012年時点の設備で作られており、係数も掛かっていません(誘導基準で0.8、一次エネ等級6で0.8)。この結果、外皮が弱くても、給湯や照明の効率でBEIを作れる設計が制度上成立します。エコキュートやLED、節湯水栓で削減量を確保するという実務は、まさにこの構造から出てきています。良い悪いではなく、そういう設計になっているということです。
残る3つの軸を整理します。
気候区分について興味深いのは、ドイツと英国が全国一律の基準を立てていることです。気候の違いは基準値ではなく、計算プログラム側の気象データで扱います。一方、日本(8地域)、韓国(4地域)、米国(9ゾーン)は基準値そのものを地域別に緩めます。「暖かい地域は基準を緩める」という発想があるかどうかが、制度設計の分かれ目になっています。
義務化の範囲では、新築についてはどの国も同じ方向を向いています。日本は2025年4月に全新築で省エネ基準適合を義務化し、2030年に新築でZEH・ZEB水準を目指しています。EUは2028年に公共の新築、2030年に全ての新築をゼロエミッション建築物とします。英国は2027年3月24日からFuture Homes Standardが施行されます。韓国は2025年6月30日からZEB 5等級を義務化しました。
差がつくのは既存ストックです。EPBD改正は非住宅について、最も性能の悪い16%を2030年まで、26%を2033年までに改修させる最低性能基準(MEPS)を導入します。住宅についても、平均一次エネルギー消費量を2030年に16%、2035年に20〜22%削減する目標を各国に課します。日本には既存建築物への性能要求はありません。
表示制度も役割が違います。EUのEPCは売買・賃貸時の交付が義務で、A〜Gの共通尺度です。EPBD改正では、Gが各国のストックのうち最も性能の悪い15%に相当するよう再調整されます。ストック全体を順位づけて、下から改修させる装置として設計されています。日本のBELSは第三者評価による任意の表示制度で、省エネ性能ラベルは2024年4月から販売・賃貸事業者の努力義務です。良い建物を選んでもらうための表示という位置づけです。
表4|気候区分・義務化の範囲・表示制度
| 国・地域 | 気候区分 | 新築の義務 | 既存への規制/表示制度 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 8地域 | 2025年4月から全新築で省エネ基準適合を義務化(6地域でUA≦0.87・BEI≦1.0)。2030年にZEH・ZEB水準を目標 | 既存への性能要求なし/BELSは任意、省エネ性能ラベルは2024年4月から販売・賃貸時の努力義務 |
| EU | 各国が個別に設定 | 2028年1月1日に公共の新築、2030年1月1日に全ての新築をゼロエミッション建築物へ | 最低性能基準(MEPS)で非住宅の下位16%を2030年まで、26%を2033年までに改修/EPCはA〜G・交付義務 |
| ドイツ | なし(全国一律) | 一次エネルギーが参照建築物の0.55倍以下、H'Tが1.0倍以下 | エネルギー証明書(Energieausweis)/2026年7月に建物近代化法(GModG)へ改正 |
| 英国 | なし(全国一律) | Future Homes Standardが2027年3月24日施行。新築住宅に2013年基準比75%以上のCO2削減 | EPC(売買・賃貸時)/賃貸物件の最低エネルギー効率基準(MEES) |
| 韓国 | 4地域 +済州 | 2025年6月30日から民間共同住宅30戸以上・1,000㎡以上にZEB 5等級を義務化 | 建築物エネルギー効率等級認証/緑色建築認証(G-SEED) |
| 米国 | 9ゾーン (CZ0〜8) | 州が採用したIECCの版に従う(2024年版はDOEの判定期限が2026年12月30日) | 州・自治体単位(ニューヨーク市のLL97など)/Home Energy Score等 |
EUの数値はEPBD改正(Directive (EU) 2024/1275)によるもので、加盟国の国内法化期限は2026年5月29日でした。各国の国内法での具体的な運用は国ごとに異なります。
ここまでを踏まえて、最初の問いに答えます。
外皮に求める水準は、明確に低いと言えます。東京で窓のU値4.7が義務水準として成立している国は、比較した先進国のなかにはありません。共同住宅のRC内断熱の外壁0.97も同様です。気候の差では説明しきれません——ソウルより温暖な韓国南部地域でも、共同住宅の窓は法定で1.200、外壁0.220です。
一方で、制度全体としては「緩い」という一語で片付けられません。日本は外皮と設備を合わせた総合評価(BEI)を採っており、設備側の技術水準はむしろ高いほうです。ヒートポンプ給湯機の普及率や高効率エアコンの標準化は、欧州の多くの国より進んでいます。基準の立て方が「設備で稼げる」構造になっているために、外皮の要求が相対的に低く据え置かれてきた、という関係です。
そして海外の「最低ライン」は、日本の「上位等級」に近い位置にあるというのが、数字を並べた結論です。ドイツの参照建築物(外壁0.28・屋根0.20・窓1.3)は、日本の断熱等性能等級6(6地域でUA≦0.46)から等級7(同0.26)のあいだの水準に近い位置にあります。日本で「かなり高断熱」と呼ばれる領域が、ドイツでは新築の出発点です。
これは日本の設計が劣っているという話ではありません。基準がどこに線を引いているかという話です。実際に建つ住宅の性能は、基準の線とは別に、施主の要望と工事費で決まります。
この比較を、日々の設計にどう使うか。3つに整理します。
1つ目は窓から決めることです。第4節で見たとおり、日本と海外の差は窓に集中しています。逆に言えば、外皮性能を上げたいときに最も効くのも窓です。UA値が届かない案件で、壁と天井の断熱材を厚くしていく前に、窓の仕様を1段上げたときの効き方を試算しておく。当社では共同住宅の外皮計算で、窓の仕様を変えた複数案の必要断熱厚さを並べてお返ししています。
2つ目は等級で会話することです。「海外並みの断熱」という言葉は幅が広すぎて設計判断になりません。等級5(ZEH水準)、等級6、等級7という日本の等級に置き換えれば、必要な仕様と工事費の見当がつきます。ドイツや英国の新築水準に近いのは等級6以上、という目安を持っておくと、施主との会話が具体的になります。
3つ目は2030年を織り込むことです。日本は2030年に新築でZEH・ZEB水準の確保を目標としています。等級5が義務水準になれば、6地域の窓は2.3の領域が最低ラインになります。いま設計している建物が長期に使われることを考えれば、義務化を待たずに等級5以上で組んでおく判断は十分に合理的です。制度改正の動きについては海外の省エネ計算とLEED・CASBEEの最新動向にまとめました。
省エネ計算(外皮・一次エネルギー消費量・BEI)とBELS、CASBEE、東京都建築物環境計画書は、一級建築士が直接お引き受けしています。仕様の組み立てからご相談いただければ、等級ごとに成立する仕様の組み合わせを並べてお返しします。概算お見積りからお気軽にお声がけください。
外皮に求める水準だけを取り出すと、明確に低いと言えます。国土交通省の仕様基準では、6地域(東京)の戸建住宅で窓の熱貫流率はU≦4.7 W/(㎡・K)、木造の外壁はU≦0.53です。これに対して英国の新築の限界値は窓1.6・壁0.26、ドイツの参照建築物は窓1.3・外壁0.28、韓国ソウル(中部2地域)の共同住宅は法定で窓1.000・外壁0.170です。一方で日本の基準は外皮と設備を合わせた一次エネルギー消費量(BEI)で評価しますので、給湯や照明の効率で数字を作る設計が成立します。「基準の立て方が違うので単純比較はできないが、外皮の要求水準は低い」というのが正確な言い方です。
BEIは設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った値ですので、1.0は「基準どおり」を意味します。ここで重要なのは基準の中身です。国土交通省の資料は、住宅の基準は2012年時点の一般的な設備機器の省エネ性能をもとに策定したと明記しています。つまりBEI 1.0は、2012年頃の標準的な設備を入れた住宅と同じ、という意味になります。相対評価そのものは悪い仕組みではありませんが、基準側が更新されない限り、絶対的な水準は年々相対的に低くなっていきます。ドイツが参照建築物の値に0.55という係数を掛けているのは、この問題を係数で処理しているためです。
外皮の部位別の値で見るかぎり、ドイツの参照建築物(外壁0.28・屋根0.20・窓1.3)は、日本の断熱等性能等級6から等級7のあいだの水準に近い位置にあります。等級6は6地域でUA≦0.46、等級7はUA≦0.26です。ただしドイツの値は参照建築物の仕様であって、実際の建物はこれと同等以上の性能で、かつ一次エネルギーが参照建築物の0.55倍以下でなければなりません。ですので実際に建つ住宅はさらに上になります。日本の義務水準である等級4(6地域でUA≦0.87)とは、比較の対象になりません。
そのとおりで、そこが比較を難しくしている一番の要因です。ただし論点は2つに分かれます。ひとつは気候区分の切り方で、日本は8地域、韓国は4地域、米国は9つの気候ゾーンですが、ドイツと英国は全国一律の基準を立てて、気候の違いは計算プログラム側の気象データで扱います。もうひとつは、同じくらいの気候どうしで比べたときの水準です。東京とソウルの冬の厳しさはソウルの方が上ですが、緯度の近い韓国南部地域でも共同住宅の窓は法定でU≦1.200、外壁0.220です。6地域の4.7とは桁が違います。気候の差だけでは説明しきれない開きがある、というのが実務での実感です。
似ていますが、制度の役割が違います。EUのEPC(エネルギー性能証明書)は売買・賃貸のときに交付が義務で、A〜Gの共通尺度で表示されます。EPBD改正では、Gが各国のストックのうち最も性能の悪い15%に相当するよう再調整されることになっています。つまりストック全体を強制的に順位づけて、下から改修させる装置です。日本のBELSは第三者評価による任意の表示制度で、省エネ性能ラベルは2024年4月から販売・賃貸事業者の努力義務として始まりました。良い建物を選んでもらうための表示という位置づけで、悪い建物を改修させる仕組みにはなっていません。
窓です。同じ計画で外皮を上げていくと、断熱材の厚さより先に窓の性能で行き詰まります。6地域の仕様基準では、省エネ基準の参考仕様がアルミサッシ・複層ガラス(A6)、誘導基準(ZEH水準)がアルミ樹脂複合サッシ・Low-E複層ガラス(G14)または樹脂サッシ・Low-E複層ガラス(A12)です。ここから英国やドイツの水準に近づけるなら、樹脂サッシとLow-E三層ガラスの領域に入ります。共同住宅では、これに加えてRC造の内断熱の熱橋補強と、サッシの納まり寸法が制約になります。設計の早い段階で窓の仕様を決めておくと、後戻りが少なくなります。
EPBD改正・LEED v5・BREEAM V7と、日本のライフサイクルカーボン評価。
住戸分類と断熱厚さの実例、納まりの制約まで。
ZEH-M Orientedを満たす設備仕様の組み合わせ。
2026年4月のBEI引き上げと、3つの計算方法。
外皮計算・一次エネルギー消費量計算・BEI算出を一級建築士が直接。
表示や等級の取得を、省エネ計算と一体で。
UA値・BEI・ηAC値などをまとめて。
Sources — 出典・参考資料
国土交通省「住宅の仕様基準・誘導仕様基準について」(部位別U値・開口部の基準値・UA/ηACの基準値・BEIの水準)
国土交通省「資料2-1 住宅性能表示制度の見直しについて」(断熱等性能等級2〜7のUA・ηAC基準案)/「住宅性能表示制度の省エネ上位等級の創設」
国土交通省「建築物省エネ法 木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック 誘導基準編 4〜7地域版」(開口部U≦2.3と参考仕様)
HM Government「Approved Document L, Volume 1: Dwellings(2026 edition)」Table 3.1 Limiting U-values for new fabric elements
ドイツ連邦法務省「GModG Anlage 1(参照建築物の技術仕様・住宅)」/「§15 Gesamtenergiebedarf(0.55倍)」/「§16 Baulicher Wärmeschutz(1.0倍)」
韓国 国家法令情報センター「建築物の省エネ設計基準」別表1 地域別建築物部位の熱貫流率表
European Commission「Energy Performance of Buildings Directive」(Directive (EU) 2024/1275)
※フランスRE2020の閾値(Cep,nr等)は2021年8月4日のアレテによるもので、本記事の数値は実務解説を参照した代表的な水準です。米国IECC 2021の部位別値は専門解説サイトの整理を参照しており、州の採用状況により適用される版が異なります。
※本記事は2026年8月21日時点の公表資料に基づいています。海外制度の記述は日本語による要約であり、法的な解釈は各国の原文によります。基準は改正されることがあるため、実際のご判断にあたっては各公表元の最新情報と、計画地の所管行政庁・審査機関の取扱いをご確認ください。