欧州委員会は2026年9月21日、データセンターの成績をA〜Gの7段階の電子ラベルで示す委任規則を採択しました。物差しは、エネルギー効率の指標PUEと、水の効率を表すWUEの2つです。初回のラベルは2027年8月15日までに、EUのデータベースが事業者の報告をもとに自動で作ります。 建築の実務から見て目を引くのは、規則が「データセンターが入る建物は、建物の省エネ性能証書(EPC)とデータセンターのラベルの両方にかかるが、重複はない」と書いていることです。建物の主な用途が事務所などなら、エネルギー消費量も、計算機室と運用に必要な設備の分に限って数えることが今回明記されました(水の使用量と床面積には従来から同じ限定があります)。 日本でも、建築物省エネ法の計算ではデータセンターの電算機室は当面の間評価の対象外で、PUEは省エネ・非化石転換法の側で扱われています。2026年4月1日に施行された措置で、2029年度以降に新設するデータセンターには、稼働開始から2年が過ぎた時点の翌年度以降、PUE1.3以下が求められることになりました。EUの原典を読み、日本の制度と並べて整理しました。
① 欧州委員会が2026年9月21日に委任規則 C(2026) 3472を採択。根拠は改正エネルギー効率指令(EED、指令 (EU) 2023/1791)の第33条(3)。EU官報に載った日から20日目に発効する。2026年10月26日時点で官報への掲載は確認できていない(採択済み・未発効)。 ② 物差しはPUE(A:1.15以下〜G:1.9超)とWUE(A:0.1以下〜G:1.0超)の7段階。ラベルには冷房度日(立地の暑さ)、電源の内訳、系統への柔軟性の提供の有無、廃熱を外へ出せる設備の有無も載る。 ③ 2027年8月15日までに、以後毎年、EUのデータベースが自動でラベルを作る。有効期間は原則として8月15日から翌年8月15日まで。事業者は請求した人にラベルを示す義務があり、まぎらわしい独自のラベルは禁止。 ④ 報告義務はIT機器の電力需要500kW以上。500kW未満と、まだ稼働していない施設は任意で参加できる(未稼働の施設は、稼働2年後に見込む設計値で参加)。 ⑤ 建物の主な用途が別(例:事務所ビル)なら、エネルギー消費量・床面積・水の使用量は計算機室と、運用に必要な設備の分に限って数える。 ⑥ 第1回の報告(2024年)では、EU平均のPUEは1.36。今回の区分に当てはめるとDにあたる(当社の当てはめ)。最低性能基準(PUEの上限など)は意見募集中(締切2026年12月14日)で、ラベルとは別の話。 ⑦ 日本では、建築物省エネ法の計算でデータセンターの電算機室は当面の間評価の対象外(建築研究所などの解説)。PUEは省エネ・非化石転換法で扱い、2029年度以降に新設するデータセンターにPUE1.3以下を求める措置が2026年4月1日に施行された。
EUのデータセンターの省エネ政策は、報告 → 格付け → 最低性能基準の3段階で進んでいます。欧州委員会の報告書は、最低性能基準を設けることを「第3段階」と位置づけています。
今回の規則は、同じ日に公表された「データセンターのエネルギー効率パッケージ」の一部で、ほかに、EEDの第12条(5)に基づく報告書(COM(2026) 500)と、最低性能基準の意見募集が含まれます。EEDは報告書の期限を2025年5月15日としていましたが、報告書が出たのは2026年9月21日でした。
規則の説明文書(Explanatory Memorandum)によると、EU域内のデータセンターは2024年に68TWhの電力を使い、2030年には114TWh(EUの電力需要の3.2%)に増える見込みです。PUEを1.6から1.2に改善すれば電力消費は25%減り、WUEを1.0から0.5に改善すれば水の消費は50%減る、とも書かれています。
委任規則は、欧州委員会が採択したあと、欧州議会と理事会に通知されます。EEDの第34条(6)により、通知から2か月の間に両者のどちらからも異議が出なければ発効の条件が整い、この期間は2か月延長できます。規則の第7条は「EU官報に掲載された日から20日目に発効する」と定めています。当社が確認した2026年10月26日の時点では、官報への掲載は確認できていません。「EUがデータセンターのラベルを義務化した」と書くのはまだ早く、正確には「採択した」です。
PUE(Power Usage Effectiveness)は、データセンター全体のエネルギー消費量(EDC)を、IT機器のエネルギー消費量(EIT)で割った値です(2024/1364 附属書III)。IT機器以外のエネルギー消費がなければ1.0で、数字が小さいほど効率がよいことになります。欧州委員会の報告書は、実務上は1.2未満が優秀、1.2〜1.5が良好、1.5超は改善の余地ありと説明しています。
WUE(Water Usage Effectiveness)は、今回の改正で「データセンターに入る淡水の量(WIN-FRE)÷ EIT」に改められました。改正前の2024/1364は、淡水に限らない水の投入量(WIN)を使う式でした。数字が小さいほど、IT機器の電力量あたりに使う水が少ないことになります。
表1|エネルギー効率の区分(PUE)
| 区分 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| PUE | 1.15以下 | 1.15超 1.25以下 | 1.25超 1.35以下 | 1.35超 1.5以下 | 1.5超 1.7以下 | 1.7超 1.9以下 | 1.9超 |
出典:委任規則 C(2026) 3472 附属書I 表1(附属書 p1)。PUEの計算は委任規則 (EU) 2024/1364 附属書III (a) によります。
表2|水効率の区分(WUE)
| 区分 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| WUE | 0.1以下 | 0.1超 0.2以下 | 0.2超 0.4以下 | 0.4超 0.6以下 | 0.6超 0.8以下 | 0.8超 1.0以下 | 1.0超 |
出典:委任規則 C(2026) 3472 附属書I 表2(附属書 p1〜p2)。WUEの計算は2024/1364 附属書III (b)(今回の附属書IIIで改正)によります。
区分の境目は、第1回の報告期間に事業者が出したデータの分析と、既存の法令・認証・規格の調査をもとに決めた、と説明文書は書いています。第6条は、欧州委員会が2028年12月31日までに、以後3年ごとに規則を見直すと定め、見直しで検討する例として、目盛りや値の変更、指標をまとめた総合評価、IT機器そのものの効率の指標、報告データの(部分的な)認証や監査を挙げています。区分の境目は固定ではなく、定期的に検証し、必要に応じて改める物差しです。
測り方も細かく決められています。全体のエネルギー消費量(EDC)は欧州規格 EN 50600-4-2 などに従い、受電の切替開閉器より手前の入口で測ります。冷却に使う燃料なども含みます。IT機器のエネルギー消費量(EIT)は、ラックの電源タップ・ラックのプラグで測る方法(カテゴリ3)を原則とし、できなければPDU(電源分配装置)で測る方法(カテゴリ2)によります。2024/1364は、使った計測点と計測器の記録を10年以上残すよう求めています。
ラベルに載る項目は附属書IIで18項目と決められています。どれも、事業者がすでにデータベースに報告している値か、データベースが割り当てる値です。説明文書は、追加の事務負担をかけないために、報告済みのデータから自動でラベルを作ると説明しています。
表3|ラベルに載る項目(附属書II 2.)
| 分類 | 項目(ローマ数字は附属書IIの番号) |
|---|---|
| 施設の基本情報 | (I) 名称、(II) 種別、(III) 運営者、(IV) 対象の報告期間、(V) 所在地(EUの地域区分 NUTS3 のコード)、(VI) 規模の区分、(VII) QRコード(データベースの公開ページへのリンク)、(VIII) 稼働開始の年月 |
| 効率の格付け | (X) PUEのA〜Gの目盛り、(XI) PUEの区分、(XII) WUEの区分、(XIII) WUEのA〜Gの目盛り |
| 立地の気候 | (XIV) 冷房度日(CDD)=データベースが所在地から自動で入れる |
| 電源の内訳 | (IX) 全体のエネルギー消費量(EDC)を、再エネ・原子力それぞれの「敷地内の発電」「電力購入契約(PPA)」「原産地証明」と、電源を特定していない分に分けた内訳、(XVII) 条件を満たす再エネ・原子力のPPAの合計(データセンターと連系する入札区域にあり、報告年の10暦年前以内に稼働した、または運転期間を延ばす大規模改修をした発電所からの購入)、(XVIII) 条件を満たす再エネ・原子力の原産地証明の合計(同じ年数の条件に加え、その加盟国で発行される原産地証明の最も細かい時間単位で発電と消費の期間が対応し、発電所が同じ入札区域か同じ加盟国のうち広いほうにあること) |
| 系統と廃熱 | (XV) 系統への柔軟性(ピークの移動など)を提供しているか、(XVI) 「廃熱再利用レディ」か=熱交換器・専用の配管系統・熱量計など、敷地の境界で外部に廃熱を出せる設備を備えているか(境界の外に熱導管があるかは問わない) |
出典:委任規則 C(2026) 3472 附属書II 2.(附属書 p3〜p4)、第5条(1)(「廃熱再利用レディ」の定義・規則本体 p11)、附属書III (2)(a)(8)〜(14)(附属書 p8〜p10)。分類と表の並びは当社によるものです。
ラベルには、欧州委員会が作る共通の解説文書が付きます。解説する項目として、PUEと立地の気候(冷房度日)の関係、PUEと規模・築年数の関係、PUEとWUEのトレードオフ(水を使う冷却はPUEを下げやすいが水を使う)、WUEと地域の水不足の関係などが挙げられています。同じPUEでも、寒い地域と暑い地域では意味が違う、という前提で読ませる作りです。
同じ日に出た報告書(COM(2026) 500)は、第1回の報告期間(2024年5〜9月)のデータを分析しています。区分の表と並べると、EUのデータセンターの「いまの位置」が見えます。
表4|第1回の報告の主な結果と、ラベルの区分への当てはめ
| 項目 | 報告書の値 | ラベルの区分に当てはめると(当社) |
|---|---|---|
| 報告した施設 | 770施設=報告義務の対象と推計される施設の約36%。報告0件の加盟国が6か国、3件未満が5か国 | — |
| PUE(EU平均・2024年) | 1.36(加盟国別の平均は1.15〜1.66) | D(1.35超1.5以下)。加盟国別ではA〜Eにまたがる |
| PUE(小規模:500〜1,000kW) | 1.64 | E(1.5超1.7以下) |
| WUE(EU平均・2024年) | 0.58(加盟国別の平均は0.07〜1.28) | 当てはめない(下の注) |
| 再エネの比率(REF) | 加重平均 0.86 | (区分なし) |
| 廃熱の再利用 | 何らかの廃熱再利用を報告したのは67施設。再利用されているのはデータセンターが出す熱の約1.8% | (区分なし。「廃熱再利用レディ」の有無を表示) |
| 最低性能基準の目安との比較 | 報告した施設のおよそ半数が、推奨の基準線(PUE1.5/WUE0.4)の一方または両方を上回る | PUE1.5はDとEの境目 |
出典:COM(2026) 500 final 2.1(p4)・2.2.1〜2.2.4(p6〜p10)・3.3(p14)。平均はいずれも施設ごとのエネルギー消費量で重み付けした値で、PUEは信頼できる値を出した681施設、WUEは水の使用量が0より大きい458施設が対象です(報告書の脚注)。報告書のWUEは、改正前の定義(淡水に限らない水の投入量÷IT機器のエネルギー消費量。単位は m³/MWh)による値です。改正後の式は分子が淡水に限られ、条文はIT機器のエネルギー消費量をkWhで表すと書いているため、報告書の0.58を表2の区分にそのまま当てはめることはできません。比較として、報告書はPUEの世界平均を1.58(2023年)、米国の全国平均を1.4としています。PUEの区分への当てはめは、表1の境目に平均値を置いた当社の読みで、個々の施設の区分の分布を示すものではありません。
PUEの平均はD、ただし国によってAからEまでばらつく。報告書は、このばらつきに効率の差と技術の選び方の違いが表れているとし、データの分析では気候の違いはPUEを左右する主な要因ではないと書いています。また、小規模な施設ほどPUEが高い(効率が悪い)傾向も示しています。報告したのが対象の約36%にとどまることも、データの取れ方がまだ粗いことを示しています。ラベルは、この「同じ物差しで並べると差が見える」状態を、施設ごとに公開するための仕組みです。
建築の実務にいちばん関わるのが、データセンターと建物の線の引き方です。今回の附属書IIIは、2024/1364の測り方を次のように改めました。
そのうえで説明文書は、建物との関係を次のように整理しています。「データセンターが入る建物は、EPBD(建物のエネルギー性能指令)の対象でもある。データセンターが入る建物は、EPBDのエネルギー性能証書(EPC)の規定と、データセンターの格付け制度の両方にかかる。ただし、両者に重複はない」。
規則が書いているのは「両方にかかり、重複はない」というところまでで、どの設備をどちらで数えるかの細かな分担までは示していません。ただ、上の測り方と合わせて読むと、建物は建物の証書(EPC)で、計算機室とその運用のための設備はデータセンターのラベル(PUE・WUE)で、それぞれ別の物差しで表示する形になると考えられます(当社の読みです)。1棟の建物に、性格の違う2枚の成績表が付くわけです。
日本も、データセンターを「建物の省エネ基準」と「PUE」の2本立てで扱っています。ただし、PUEの側では、EUより先に基準値と罰則を法令の措置として決めました。
1. 建築物省エネ法:電算機室は当面の間、評価の対象外。建築研究所などの「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)解説」(Ver.3.3.2)は、使われ方がさまざまで標準的な使用条件を決めにくい建築物の部分は、当面の間、一次エネルギー消費量の算出の対象に含めないとし、評価の対象外とする室の例に「データセンター(コンピュータやデータ通信のための設備を設置・運用することに特化した建築物又は室)における電算機室」を挙げています。その室の環境を保つための空調設備なども評価の対象外です。一方、同じ建物の事務室や共用部などは通常どおり評価します。建物の省エネ基準(BEI)では、計算機室の冷却の効率は問われていないことになります。
2. 省エネ・非化石転換法:PUEで事業者を規制。工場・事業場の省エネを扱う省エネ・非化石転換法(旧省エネ法)では、2022年4月から、業種ごとの省エネの目安を示すベンチマーク制度にデータセンター業が加わり、指標はPUE、目標は1.4以下とされました。資源エネルギー庁の資料は、1.4を「上位15%の事業者が満たす水準」として、アンケート結果をもとに決めたと説明しています。さらに2026年4月1日、データセンター業への追加の措置が施行されました。
表5|EUのラベルと、日本のデータセンター業の措置
| 項目 | EU(委任規則 C(2026) 3472) | 日本(省エネ・非化石転換法のデータセンター業の措置) |
|---|---|---|
| 状況 | 2026年9月21日 採択。官報掲載後20日目に発効(10月26日時点で掲載は未確認) | 2026年4月1日 施行 |
| 対象 | IT機器の電力需要500kW以上のデータセンター(500kW未満・未稼働は任意参加) | データセンター業のエネルギー使用量が原油換算で年1,500kl以上の事業者 |
| 何をするか | 成績の表示(ラベル)。PUE・WUEをA〜Gで表示し、公開する | 目標・実績の報告と一部の公表に加え、新設のデータセンターが満たすべき基準を設定 |
| PUEの基準値 | なし(最低性能基準は意見募集中) | 2029年度以降に新設したデータセンター:PUE1.3以下(稼働開始から2年が過ぎた時点の翌年度以降)。事業者平均:PUE1.4以下(目標年度2030年度・ベンチマーク) |
| 守らない場合 | (ラベルは格付けのみ。模倣表示の禁止など) | 合理化計画の作成指示 → 従わなければ公表・命令 → 命令に従わなければ罰金 |
| 公表 | ラベルをEUのデータベースで全公用語で公開 | 2025年度以降に新設したデータセンター(転用・受電設備の共有・小規模などの対象外あり)の名称・PUEなどを事業者が公表(初回期限2027年3月31日)。PUEは前年度比の改善率を書けば所定の区分での公表も可 |
| PUEの測り方 | 欧州規格 EN 50600-4-2(IT機器はカテゴリ3、無理ならカテゴリ2) | 日本データセンター協会(JDCC)の「PUE計測・計算方法に関するガイドライン」 |
| 水の効率 | WUEをA〜Gで表示 | (資料に水の指標の規定は見当たらない) |
出典:委任規則 C(2026) 3472 第3条・第4条・第5条・第7条・附属書I〜III、EED 第12条(1)、資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」(2026年4月)p13・p15・p18・p19・p22・p24・p28、同「ベンチマーク制度 令和3年度見直し事項の概要」(令和4年2月1日)p1・p4。日本の基準1.3には、設計時のPUEが1.28以下で、未達の理由がIT機器などの稼働率の低さにあると確認できる場合は合理化計画の作成を指示しない、という例外があります(同 p24)。
日本の基準を表1に当てはめると、PUE1.3はC(1.25超1.35以下)、1.4はD(1.35超1.5以下)の範囲に入ります(当社の当てはめ)。ただし、EUは欧州規格、日本は日本データセンター協会のガイドラインで測るので、測り方が同じとは限らず、数字をそのまま比べることはできません。比べられるのは「どのくらいの水準を目安にしているか」までです。
制度の作り方の違いもはっきりしています。EUは先に報告対象の施設(と任意で参加した施設)の成績を同じ物差しで公開し、基準はそのデータを見てから決める順番です。日本は新設に絞って基準値と罰則を先に置き、公表は2025年度以降に新設したデータセンターから始めます。一方で、建物の省エネ基準(日本のBEI、EUのEPC)とは別の物差しでデータセンターを扱う、という点は両者に共通しています。
表6|EUと日本のデータセンターの制度の日程
| 時期 | 地域 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年4月1日 | 日本 | データセンター業の追加の措置が施行 |
| 2026年7月31日 | 日本 | データセンター業の目標・達成方針と定期報告(2025年度の実績)の初回の提出期限 |
| 2026年9月21日 | EU | 格付けの委任規則を採択/最低性能基準の意見募集を開始 |
| 2026年12月14日 | EU | 最低性能基準の意見募集の締切 |
| 2027年3月31日 | 日本 | 目標・達成方針と定期報告の一部の、初回の公表期限 |
| 2027年第2四半期 | EU | 最低性能基準の法案(規則案)の提出予定 |
| 2027年8月15日まで | EU | 初回のラベルをEUのデータベースが自動で作成(以後毎年) |
| 2028年12月31日まで | EU | 格付けの規則の見直しの報告(以後3年ごと) |
| 2029年4月1日 | 日本 | 2029年度以降に新設したデータセンターのPUE1.3以下の基準の適用開始 |
| 2030年度 | 日本 | ベンチマークの目標年度(事業者平均PUE1.4以下) |
| 2032年4月1日 | 日本 | 基準の遵守状況に応じた行政措置(合理化計画の作成指示など)の開始 |
出典:委任規則 C(2026) 3472 第3条・第6条、欧州委員会 Have your say「Minimum performance standards for data centres in Europe」(意見募集の終了 2026年12月14日、規則案の採択予定 2027年第2四半期)、資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」(2026年4月)p13・p28。EUのラベルの日付は、規則が予定どおり発効した場合のものです。
EUのラベルが日本の建物に直接かかることはありません。それでも、データセンターや大きなサーバ室を含む建物の計画では、次の点が効いてきます。
1. 省エネ計算で「電算機室」の範囲を早めに決める。建築物省エネ法の計算では、データセンターの電算機室は当面の間評価の対象外ですが、例示は「データセンター(…に特化した建築物又は室)における電算機室」です。事務所ビルの一角のサーバ室などが当てはまるかどうかは、室の用途と使われ方の資料をそろえて、判定機関に早めに確認するのが確実です。対象外にする室の範囲で、計算に入る床面積と設備が変わります(当社の「省エネ計算に必要な図面・資料」でも、算定の対象に含めない部分の整理を扱っています)。
2. PUEの算定に備えて、計量の設計を早めに行う。EUは計測点(受電の入口、ラック、PDU)まで決め、日本の措置も日本データセンター協会のガイドラインに従ってPUEを計算するよう求めています。IT機器と付帯設備の電力量を分けて測れる計量の設計は、竣工後に足すより設計段階で入れるほうが確実です。EUの「建物の主な用途が別なら計算機室と運用設備の分だけ数える」ルールは推定も認めていますが、計算機室の系統を分けて測れれば、推定に頼らずに済みます(当社の考えです)。
3. 設計時のPUEを記録に残す。日本の措置では、定期報告の項目に「設計時PUE」があり、PUE1.3を上回っても、設計時のPUEが1.28以下で、未達の理由が稼働率の低さにあると確認できれば合理化計画の作成は指示されません。2029年度以降に新設するデータセンターでは、設計時のPUEの根拠を設計図書と合わせて残しておく意味が大きくなります。
4. 2つの物差しを分けて説明する。データセンターを含む建物では、建物のBEI(建築物省エネ法)と、データセンターのPUE(省エネ・非化石転換法)は、対象も目的も違う数字です。EUも、建物のEPCとデータセンターのラベルを「重複しない」別の制度として並べました。海外の事業者が建築主の案件では、EUのラベルやPUEの話が出たときに、日本の建物側の手続き(省エネ適判・BELS)とどうつながるかを整理して伝えることが求められます。
テトでは、非住宅建築物の省エネ計算と省エネ適合性判定の手続きを、図面からお引き受けしています。電算機室を含む建物の計算範囲の整理もご相談ください(省エネ適合性判定 代行/非住宅の省エネ計算)。
まだです。欧州委員会が委任規則を採択したのは2026年9月21日で、EU官報に載った日から20日目に発効します。欧州議会と理事会は、通知から2か月(延長すれば4か月)の間に異議を出せます。当社が確認した2026年10月26日の時点では、官報への掲載は確認できていません。初回のラベルは、発効後に、2027年8月15日までにEUのデータベースが自動で作る予定です。
PUEは、データセンター全体のエネルギー消費量をIT機器のエネルギー消費量で割った値です。IT機器以外のエネルギー消費がなければ1.0になり、小さいほど効率がよいことを表します。WUEは、データセンターに入る淡水の量をIT機器のエネルギー消費量で割った値で、IT機器の電力量あたりにどれだけ水を使ったかを表します。欧州委員会の報告書は、PUEについて1.2未満を優秀、1.2〜1.5を良好、1.5超を改善の余地ありとしています。
今回決まったのは、成績を表示するラベル(格付け)です。PUEの上限のような最低性能基準は、まだ意見募集の段階で、締切は2026年12月14日、法案の提出は2027年第2四半期の予定です。ラベルは「下位の施設を使えなくする」制度ではなく、成績を同じ物差しで公開する制度です。
EUの報告義務は、IT機器の電力需要が500kW以上のデータセンターにかかります。500kW未満は任意で参加できます。建物の主な用途が事務所などデータセンター以外の場合は、エネルギー消費量も床面積も水の使用量も、計算機室と、データセンターの運用に必要な設備の分だけに限って数えます。建物全体の省エネ性能はEPBD(建物のエネルギー性能指令)の省エネ性能証書(EPC)で表示され、規則は両者に重複はないと書いています。
建築研究所などの「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)解説」は、標準的な使い方を決めにくい室の例として「データセンター(コンピュータやデータ通信のための設備を設置・運用することに特化した建築物又は室)における電算機室」を挙げ、当面の間、その室の環境を保つための空調設備などを評価の対象外としています。事務室や共用部など、それ以外の部分は通常どおり評価します。該当するかどうかは、室の用途と使われ方の資料をそろえて、判定機関に確認するのが確実です。
省エネ・非化石転換法の措置で、データセンター業のエネルギー使用量が原油換算で年1,500kl以上の事業者が、2029年度以降に新設したデータセンターが対象です。稼働開始から2年が過ぎた時点の翌年度以降、PUEを1.3以下にする必要があります。ここでいう稼働開始は、ハウジング型・ホスティング(オーナー)型では、新設後にそのデータセンターのエネルギー使用量が原油換算で年1,500kl以上、または稼働しているサーバがあるサーバ室の面積が300㎡以上に達した時点です(テナント型は専有部分の面積で判定します)。2028年度以前に新設したもの、データセンターではない建物を転用したもの、エネルギー使用量が1,500kl未満かつサーバ室の面積が300㎡未満のものなどは対象外です。
EPBDの違反手続の3段階と、日本の基準の決まり方・日付の読み方。
BEIによる適合判定と、モデル建物法・標準入力法の考え方。
算定の対象に含めない部分の整理と、ご用意いただく資料。
EPBD改正の期限と、各国の義務化・認証制度の版。
EPBDで建物に求める炭素の開示の算定ルール。
電気の一次エネルギー換算係数の決め方と、日本の9.76との比較。
非住宅の省エネ計算と適判の手続きを、図面からお引き受けします。
Sources — 出典・参考資料
欧州委員会「Commission Delegated Regulation establishing a common Union rating scheme for data centres and Annexes」(2026年9月21日)
欧州委員会 委任規則 C(2026) 3472 final(本体 全15頁:説明文書 p1〜p7、前文・第1〜7条 p8〜p14/附属書I〜III 全12頁)
欧州委員会「Report on the energy efficiency of data centres in the EU」COM(2026) 500 final(2026年9月21日・全18頁)/掲載ページ
指令 (EU) 2023/1791(改正エネルギー効率指令) 第12条・第33条・第34条
委任規則 (EU) 2024/1364 第2条・附属書II・附属書III
欧州委員会 Have your say「Minimum performance standards for data centres in Europe」(PLAN/2025/2968)
資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」(2026年4月。p8・p13〜p15・p18・p19・p22・p24・p26・p28)
資源エネルギー庁「ベンチマーク制度 令和3年度見直し事項の概要」(令和4年2月1日・参考資料2。p1・p4)
国土交通省 国土技術政策総合研究所・建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版) 解説」Ver.3.3.2(2023年1月。p.vii〜p.viii)
※ 本文・表の注に示したページは、各資料の紙面に印刷されたページ番号です(「全15頁」などの頁数はPDFの総ページ数)。区分の表への当てはめ(EU平均・日本の基準値)、表3の分類、第5節の分担の読み、第6節・第8節の整理は当社によるものです。