国土交通省は2026年9月18日、建築確認・検査でBIMデータそのものを審査に使う「BIMデータ審査」の基本構想を策定しました。開始は2029年春の予定です。 省エネ計算に関わる立場で気になるのは、省エネ適判(建築物エネルギー消費性能適合性判定)もBIMデータで審査されるようになるのかという点です。 基本構想は省エネ適判にも導入を進めるとしながら、制度開始時から実装するかどうかは関係機関との協議を経て判断するとしており、まだ決まっていません。 本文・概要・別表・工程表の4つの資料を読み、決まったことと決まっていないことを整理しました。
① BIMデータ審査は、IFCデータそのものを審査の対象にする仕組み。2026年4月に始まった「BIM図面審査」(BIMから書き出したPDFで審査)の次の段階。 ② 開始は2029年春の予定。開始時から全ての規模・用途・構造を対象にすることを目指す。ただし審査項目は優先順位をつけて段階的に広げる。 ③ 省エネ適判は、本文で「BIMデータ審査の導入を進める」とされたが、制度開始時からの実装の可否は今後の協議で判断。 ④ 優先的に検討する審査項目の一覧(別表)に、省エネに関する項目は入っていない。 ⑤ BIMの利用を全ての申請に義務づける記述はない。二次元の設計図書による審査との併用も可能とする方針。 ⑥ 設計者には2028年度内に社内ルール・マニュアル等を策定することが期待されている。
国土交通省住宅局建築指導課は2026年9月18日、報道発表「建築BIMデータを用いた審査開始に向け基本構想をとりまとめました」を出し、「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」を公表しました。資料は本文(全12頁)、概要(全3頁)、別表(対象とする審査項目及び検討の優先順序・全4頁)、別添(工程表・1頁)の4つです。
基本構想は、2019年に設けられた官民の会議体「建築BIM推進会議」での検討を踏まえて、目指すBIMデータ審査の仕組み、導入までの工程、設計者・審査者・ソフトウェアベンダーの役割分担を示したものです。主な内容は次のとおりです。
表1|基本構想で示された主な内容
| 項目 | 基本構想に書かれていること |
|---|---|
| 開始時期 | 2029年春に導入予定。検査(中間・完了検査)でもBIMを活用する予定 |
| 審査の対象 | BIMソフトウェアのネイティブデータから変換したIFCデータそのもの。確認申請用CDE(関係者がデータを共有するクラウド環境)にアップロードし、申請者と審査者がCDEを介してやり取りする |
| 審査の方法 | 審査事項に適した方法で表示して見る「ビュー審査」が基本。IFCデータの情報をプログラムで処理した結果を使う「デジタル審査」(AIによる審査補助を含む)も導入する |
| 自動審査 | 生成AI等を用いた、審査者の判断を介さない自動審査は、審査に係る責任を明確化する観点から当面は検討の対象外 |
| 対象の建築物 | 開始時から全ての規模・用途・構造を対象とすることを目指す |
| 対象の審査項目 | 開始時に全審査事項を対象にするのは困難なため、優先順位をつけて検討し、開始後も順次追加する |
| 従来の審査との併用 | BIMデータ審査と、二次元の設計図書を用いた審査(BIM図面審査を含む)を併用することも可能とする |
| 省エネ適判など | 構造計算適合性判定・省エネ適判・消防同意にも導入を進める。ただし制度開始時からの実装の可否は、関係機関との協議等を通じて判断 |
出典:国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」本文 p3・p5〜p8。表の要約は当社によるものです。
BIMを使った建築確認は、2段階で進められています。第1段階の「BIM図面審査」は、2026年4月1日に始まりました(国土交通省「建築BIM推進会議」のページ)。今回の基本構想は、第2段階の「BIMデータ審査」についてのものです。概要は、BIMデータ審査はBIM図面審査とは異なる新たな仕組みになることが想定される、と書いています。
表2|BIM図面審査とBIMデータ審査
| BIM図面審査 | BIMデータ審査 | |
|---|---|---|
| 開始 | 2026年4月1日 | 2029年春(予定) |
| 審査に使うもの | 入出力基準に従って作成したBIMデータから書き出したPDF形式の図書 | IFCデータそのもの(IFCデータによる審査対象項目以外は、従前どおりPDF形式の図書) |
| IFCデータの役割 | BIMビューアで閲覧し、形状の把握・理解に利用する。図書に明示されていない情報(IFCデータのみに含まれる情報)に基づいた判断は行わない | 審査の対象。審査項目に応じたIFCデータ作成基準への適合を求める |
| 効率化のしくみ | 設計者の誓約に基づき、入出力基準に従って作成した図書の記載事項について、整合性確認を省略できる | IFCデータそのものが審査対象になるため、図書間の整合性確認が不要になる。ビュー審査とデジタル審査で効率化 |
| 検査 | 保存された正本(PDF)で中間検査・完了検査を行う。IFCデータとの照合による検査は認めない | 建築確認に使用したIFCデータを使い、二次元の設計図書の提出を不要とする |
出典:建築BIM推進会議 審査TF「建築確認におけるBIM図面審査ガイドライン(初版 令和8年3月24日版)」p5・p9〜p11(ページ下部のノンブル)、国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」本文 p5〜p7、同 概要 p1。
基本構想の中で、省エネ適判(本文では「建築物エネルギー消費性能適合性判定」)に触れている箇所は、本文に4か所、概要に1か所あります。どれも、構造計算適合性判定・消防同意と並べて書かれています。
表3|基本構想のうち、省エネ適判に触れている箇所
| 箇所 | 書かれていること(要約) |
|---|---|
| 本文 p3 (基本構想の目的) | 建築確認だけでなく、構造計算適合性判定、建築物エネルギー消費性能適合性判定、消防同意等の建築行政手続での活用も想定している |
| 本文 p6 (BIMデータ審査の方法) | 建築確認と合わせて行われる、構造計算適合性判定、建築物エネルギー消費性能適合性判定、消防同意などの行政手続きについても、BIMデータ審査の導入を進める |
| 本文 p8 (対象となる審査項目) | 建築確認と合わせて行われる審査等についても、BIMデータ審査の導入による負担軽減効果等を踏まえた関係機関との協議等を通じて、制度開始時からの実装の可否について判断する |
| 本文 p10 (検討事項と実施主体) | 「他の行政手続への適用の検討」として、関連する建築行政手続(構造計算適合性判定、建築物エネルギー消費性能適合性判定、消防同意等)への適用可能性を検討し、実施に向けて関係部局との調整を行う。実施主体は国土交通省 |
| 概要 p1 (審査項目の一覧の注記) | 構造・省エネ適判、消防同意等への制度開始時からの実装については今後協議 |
出典:国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」本文 p3・p6・p8・p10、同 概要 p1。
つまり、省エネ適判にもBIMデータ審査を入れる方向は示されたものの、2029年春の開始時に間に合わせるかどうかは決まっていない、というのが現時点の位置づけです。工程表でも「他の行政手続への適用の検討」は点線の帯で2026年度から2028年度にかけて描かれており、結論の時期を示す★印は付いていません。
概要には「2029年春開始を目指す審査項目の一覧(優先的に検討するもの)」として、建築基準法の10の条項が挙がっています。入力に係る負担と効果のバランスを考えて選んだもので、審査TFのもとに設けるWGの検討の結果、今後変わることがあるとされています。
表4|2029年春開始を目指す審査項目(優先的に検討するもの)
| 条項 | 内容 |
|---|---|
| 法28条 | 居室の採光・換気 |
| 法35条 | 排煙設備(令第5章第3節)、非常用の照明装置(令第5章第4節) |
| 法35条の2 | 内装制限 |
| 法36条 | 防火区画(令第112条) |
| 法52条 | 容積率(許可を除く) |
| 法53条 | 建蔽率(許可を除く) |
| 法53条の2 | 建築物の敷地面積(許可を除く) |
| 法54条 | 第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離 |
| 法55条 | 第一種低層住居専用地域等内における建築物の高さの限度(許可を除く) |
| 法56条 | 建築物の各部分の高さ(天空率を除く) |
出典:国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」概要 p1。法35条は2項目を1行にまとめているため、行数は10行です。
別表(全4頁)は、建築基準法施行規則第1条の3第1項の表1などに規定される条項をもとに、審査項目ごとに優先順位を「◎」「○」で示したものです。この別表に、省エネに関する項目は1つもありません。別表の注記には、構造計算書、増改築(法第87条の7)、建築基準関係規定(令第9条)及び告示に関する審査事項は、別表では対象外としていると書かれています。
省エネ適判の扱いは、別表の審査項目とは別に、上の表3の「関係機関との協議」で決まることになります。
別添の工程表は、2026年度から2029年度以降までを、「BIMデータ審査の仕組み等の検討」「BIMデータ審査の実施に必要な環境整備」「CDEの開発・運用」の3段に分けて描いています。★印の付いた節目を年度ごとに並べると次のとおりです。★印の年度は、工程表の図で★が置かれている位置から当社が読み取ったものです。
表5|BIMデータ審査の開始に向けた工程表の主な節目
| 年度 | 節目(★)と主な作業 |
|---|---|
| 2026年度 | ★基本構想の公表。審査項目ごとの審査・検査方法の検討、モデル作成ルールとIFCデータ作成基準の検討、CDEの仕様検討。本文 p10 は「2026年度末までに制度開始時の対象審査項目毎の審査・検査方法を確定する」としている |
| 2026年度末〜 2027年度初め | ★審査項目毎の審査・検査方法の公開(工程表では2026年度と2027年度の境目に置かれている) |
| 2027年度 | ★モデル作成ルール・IFC仕様等の公開。ガイドライン案とサンプルモデルの作成、民間ベンダーによるBIMソフトウェア開発。年度の後半から関連法令の改正検討 |
| 2028年度 | ★ガイドライン案の公開・★CDEデモ版の公表(2027年度と2028年度の境目付近)、ロールプレイ、各種の最終化、★CDEの正式公開、★ガイドライン等のセット。申請者・審査者の制度利用準備・トレーニング、審査機関への導入展開 |
| 2029年度〜 | ★BIMデータ審査開始、★関連法令の改正施行。運用と追加機能の開発 |
| 2026〜2028年度 | 「他の行政手続への適用の検討」(点線の帯。★印なし) |
出典:国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」別添「BIMデータ審査の開始に向けた工程表」、同 本文 p10。工程表の注記によれば、このスケジュールは2029年春にBIMデータ審査の対象とする審査項目について示したものです。
本文の「関係者への期待」には、時期の目安も書かれています。設計者は、公表されたIFCデータ作成基準、ガイドライン、BIMソフトウェアごとのマニュアル等をもとに2028年度早期から制度利用の検討を進め、2028年度内に社内ルール・マニュアル等を策定すること。審査者は、2028年度初めから対応の検討を行い、下半期に業務フローを制定し、可能な限り2029年春当初から申請受付を開始すること。BIMソフトウェアベンダーは、なるべく早期にBIMデータ審査に対応した機能をリリースすること、とされています。
ここまでの資料から、省エネ計算と省エネ適判に関わる設計事務所・建築主の立場で言えることを整理します。
なお、概要の「IFCデータ作成基準(イメージ)」の図では、外壁を「簡素な外壁モデル」と、躯体・断熱材・下地・仕上材まで描いた「詳細な外壁モデル」のいずれも許容するとしています。形状情報は必要最低限の内容のみ定め、性能・仕様・材質などは属性情報として審査に必要な事項を網羅的に定める方針です。省エネ適判がいずれ対象になれば、断熱材の種類や厚さ、窓の性能などを属性情報として入力することになると考えられますが、これは当社の見方で、基本構想に書かれたものではありません。
また、基本構想は発注者にとっての意義として、カーボンニュートラルを目指す社会では、ライフサイクルカーボンの算定等への対応を進めるうえで、BIMを中心とした情報連携は必須となる、と書いています(本文 p4)。ライフサイクルカーボンの届出制度については「ライフサイクルカーボンの届出が義務になります」で整理しています。
当社は、二次元の図面からでも、BIMから書き出した図書からでも、省エネ計算と省エネ適判の申請を代行しています。省エネ適判へのBIMデータ審査の適用について新しい資料が出たら、このページでお知らせします。
まだ決まっていません。基本構想の本文は、省エネ適判などの建築確認と合わせて行われる審査についてもBIMデータ審査の導入を進めるとしたうえで、制度開始時からの実装の可否は、負担軽減効果等を踏まえた関係機関との協議等を通じて判断するとしています。概要にも「構造・省エネ適判、消防同意等への制度開始時からの実装については今後協議」と書かれています。
基本構想には、BIMの利用を全ての申請に義務づける記載はありません。本文は、申請者のBIM活用の程度に応じて、BIMデータ審査と従来どおりの二次元の設計図書を用いた審査(BIM図面審査を含む)を併用することも可能とするとしています。ただし、併用する場合も、BIMデータ審査の実施に最低限必要な入力事項はIFCデータ作成基準として定めるとしています。概要にも、IFCデータによる審査対象項目以外のものは、従前どおりPDF形式の図書を用いて審査を行うと書かれています。
BIM図面審査は、入出力基準に従って作成したBIMデータから書き出したPDF形式の図書で審査する方法で、IFCデータは形状の把握・理解に使う参考です。BIMデータ審査は、IFCデータそのものが審査の対象になり、審査事項に適した表示で見るビュー審査と、プログラムやAIで審査を補助するデジタル審査を行います。
建築BIM推進会議 審査TFの「BIM図面審査ガイドライン」では、適合性判定機関(省エネ適判を行う所管行政庁・登録建築物エネルギー消費性能判定機関を含む)は、PDF形式の図書を用いて審査を行うとしています。審査者と適合性判定機関が共通の図書で補正等に対応するので、審査者は適合性判定図書との整合性確認が不要になる、とも書かれています。
基本構想は、生成AI等を用いた審査者の判断を介さない、いわゆる自動審査については、審査に係る責任を明確化する観点から、当面は検討の対象外とするとしています。AIやプログラムは、審査を補助する「デジタル審査」として導入する位置づけです。
基本構想は設計者に対して、公表されたIFCデータ作成基準やガイドライン等をもとに2028年度早期から制度利用の検討を進め、2028年度内に社内ルール・マニュアル等を策定することを期待するとしています。工程表には、審査項目ごとの審査・検査方法の公開(2026年度と2027年度の境目付近)、モデル作成ルール・IFC仕様等の公開(2027年度)、ガイドライン案の公開(2027年度と2028年度の境目付近)が示されています。
改正建築士法の施行日は2027年4月1日。見積書の作成も努力義務に。
建築物通算炭素排出量評価の中身と、LCCO2の計算のしかた。
確認申請図と根拠図をそろえるために。
断熱ラインの決め方と記載項目。
住棟単位登録と住戸単位登録の違い。
2026年4月のBEI引き上げと3つの計算方法。
住宅・非住宅の省エネ計算から適合判定の申請まで。
Sources — 出典・参考資料
国土交通省 報道発表資料「建築BIMデータを用いた審査開始に向け基本構想をとりまとめました」(令和8年9月18日・住宅局建築指導課)
国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」本文(2026年9月・全12頁。表1・表3はこの資料によります)・概要(全3頁。表4)・別表 対象とする審査項目及び検討の優先順序(全4頁)・別添 BIMデータ審査の開始に向けた工程表(表5)
建築BIM推進会議 審査TF「建築確認におけるBIM図面審査ガイドライン」(初版 令和8年3月24日版・全19頁。表2)
国土交通省「建築BIM推進会議」(R8.4.1「BIM図面審査が開始されました」、R8.9.18 基本構想の公開)