住宅の外皮計算で基礎断熱の熱損失を数える「基礎の線熱貫流率」には、新旧2つの評価方法があります。旧評価方法は2026年10月31日で廃止の予定で、業界団体も「11月1日から新評価方法に統一される」と案内していました。 ところが期限の10日前、国土交通省は2026年10月21日の事務連絡で、「経過措置として、当面の間、引き続き旧評価方法も使用できる」としました。 ただし、建築研究所の技術情報の本文はまだ「令和8年10月31日まで」のままで、国が「原則」とするのは新評価方法です。事務連絡と技術情報を読み、新旧の違いと11月以降の注意点を整理しました。
① 国土交通省は2026年10月21日の事務連絡で、基礎の線熱貫流率の旧評価方法を、経過措置として当面の間、引き続き使えるとした。理由は「新評価方法の習熟状況に鑑み」。終わりの日付は示されていない。 ② 旧評価方法は、令和6年7月29日の事務連絡で令和8年10月31日に廃止とされていた。 ③ 旧評価方法は、土間床等の外周部と地盤面から400mmまでの基礎壁を一体で評価する方法。新評価方法は、土間床等の外周部を線熱貫流率、基礎壁を熱貫流率で別々に評価する方法(基礎壁は、土間床上端が地盤面と同じか高ければ土間床上端より上、低ければ地盤面より上)。 ④ 同日の概要資料では、新評価方法は「原則、使用すること」、旧評価方法は「廃止とするが、経過措置として当面の間、使用可能」。 ⑤ 対象は基礎の線熱貫流率だけ。鉄筋コンクリート造の構造熱橋部の旧評価方法(令和6年12月31日に廃止とされたもの)には触れていない。 ⑥ 建築研究所の技術情報 第三章第三節 Ver.27(2026年10月)の本文は「令和8年10月31日まで」のまま(2026年10月21日時点)。当社では、旧評価方法で出すときは事務連絡の日付と題名を添えて取扱いを確認しておくことをおすすめしています。
国土交通省は2026年10月21日、事務連絡「建築物エネルギー消費性能適合性判定等における基礎の線熱貫流率評価の取扱いについて」を出しました。発出したのは住宅局 参事官(建築企画担当)付と住宅生産課で、宛先は各都道府県と各指定都市の住宅・建築主務部局長です。
本文はとても短く、要点は次の一文です。基礎の線熱貫流率の算出方法は、令和6年7月29日の事務連絡で新評価方法を公開し、旧評価方法の廃止のスケジュールを示していたが、「新評価方法の習熟状況に鑑み、経過措置として、当面の間、引き続き旧評価方法も使用できることとする」。
あわせて、所管行政庁・登録省エネ判定機関・登録住宅性能評価機関には申請者への周知を依頼し、国土交通大臣指定などの指定確認検査機関、登録省エネ判定機関、登録住宅性能評価機関にも周知していると書かれています。問い合わせ先には、事務連絡全般の窓口と並んで、長期優良住宅・住宅性能評価の窓口(住宅生産課)も挙がっています。
表1|基礎の線熱貫流率の評価方法の経緯
| 時期 | 出来事 | 旧評価方法の扱い |
|---|---|---|
| 令和6年7月 | 令和6年7月29日の事務連絡で、基礎の線熱貫流率と鉄筋コンクリート造の構造熱橋部の線熱貫流率の新評価方法を公開 | 基礎:令和8年10月31日に廃止と予告 RC造の構造熱橋部:令和6年12月31日に廃止と予告 |
| 令和6年12月 | 新評価方法の早見表を拡充(べた基礎・布基礎それぞれ2仕様から9仕様へ) | 基礎:引き続き使用可能(廃止予定日は令和8年10月31日のまま) |
| 令和8年10月 | 建築研究所の技術情報 第三章第三節 Ver.27(2026年10月) | 本文に「令和8年10月31日まで」と記載 |
| 令和8年10月21日 | 事務連絡「…基礎の線熱貫流率評価の取扱いについて」と概要資料を公表 | 経過措置として、当面の間、使用可能(終わりの日付は示されていない) |
出典:国土交通省 事務連絡(令和8年10月21日)本文と参考資料(令和6年7月29日事務連絡・別紙7)、同「基礎の線熱貫流率の評価方法について」p1、建築研究所 技術情報 3-3 Ver.27(2026年10月)6.2・付録D。令和6年12月の早見表の拡充は、別紙7と概要資料の図によります。
基礎断熱の住宅では、床下の土間床から地盤を回り込んで外へ逃げる熱を、基礎の外周の長さ1mあたりの線熱貫流率(W/mK)で数えます。新旧の違いは、基礎の立上り(基礎壁)の熱損失を、この線熱貫流率に含めるか、別に数えるかです。
表2|旧評価方法と新評価方法の比較
| 項目 | 旧評価方法(技術情報 付録D) | 新評価方法(技術情報 6.2) |
|---|---|---|
| 考え方 | 土間床等の外周部の熱損失と、基礎壁の熱損失を一体として評価 | 土間床等の外周部を線熱貫流率、基礎壁を熱貫流率で別々に評価(土間床上端が地盤面と同じか高い場合は、土間床上端から下を線熱貫流率、上を熱貫流率) |
| 基礎壁の扱い | 地盤面から高さ400mmまでは線熱貫流率に含められる。400mmを超える部分は、鉄筋コンクリート造等の一般部位の方法(5.1.2)で計算 | 基礎壁(土間床上端が地盤面と同じか高い場合は土間床上端より上、低い場合は地盤面より上)は、鉄筋コンクリート造等の一般部位の方法(5.1.2)で計算 |
| 線熱貫流率の決め方 | 1.8 W/mKとするか、断熱材の熱抵抗と寸法を入れる計算式(式(1)〜(4))で算出。算出値が0.05未満なら0.05とする | ①基礎形状によらない値(表13・表14) ②定常二次元伝熱計算による代表的な仕様の計算例(早見表 表16b・16c・17b・17c) ③任意評定による値 |
| 計算式の入力 | 基礎の立上りの外側・内側の断熱材の熱抵抗、底盤部分の室内側・外気側の断熱材の熱抵抗、地盤面からの寸法、断熱材の施工深さ・折返し寸法など | 早見表では、基礎壁の外側・内側の断熱材の熱抵抗、土間床の上(または下)の断熱材の熱抵抗と、壁から室内側への水平長さなど(表ごとに項目が異なる) |
| 国の位置づけ | 令和8年11月1日で廃止とするが、経過措置として当面の間、使用可能 | 原則、使用すること |
出典:建築研究所 技術情報 3-3 Ver.27(2026年10月)6.2(p10)・表13・表14(p11)・表16a〜17c(p12〜p17)・付録D(p33)、国土交通省「基礎の線熱貫流率の評価方法について」p1・p2。式(1)・(2)は地盤面から底盤等上端までの深さが1m以内の場合、式(3)・(4)は1mを超える場合に使います。
旧評価方法の既定値1.8 W/mKは、基礎壁の地盤面から400mmまでの熱損失を含んだ値です。新評価方法の「基礎形状によらない値」は、土間床上端が地盤面と同じか高く、その差が1m未満の場合、0.99 W/mKです(表3)。この値は土間床等の外周部だけを対象とし、基礎壁の熱損失は別に熱貫流率×面積で足します。2つの数字を直接比べて「新評価方法のほうが小さい」と考えるのは誤りで、比較する際は、基礎壁の分を含めた外皮全体の熱損失を用います。
新評価方法の線熱貫流率は、次の3つのいずれかで決めます(概要資料 p2)。
表3|基礎形状によらない値(新評価方法の①)
| 土間床上端の位置 | 土間床上端と地盤面の高さの差(m) | 線熱貫流率(W/mK) |
|---|---|---|
| 地盤面と同じか高い(表13) | 1未満 | 0.99 |
| 1以上 | 1.58 | |
| 地盤面より低い(表14) | 0.05以下 | 0.98 |
| 0.05超過0.50以下 | 1.47 | |
| 0.50超過1.00以下 | 1.70 | |
| 1.00超過2.00以下 | 1.95 | |
| 2.00超過5.00以下 | 2.43 | |
| 5.00超過 | 3.24 |
出典:建築研究所 技術情報 3-3 Ver.27(2026年10月)表13・表14(p11)。地盤面は設計地盤面または建築基準法に基づく地盤面。土間床上端は、土間床等のコンクリートが打設されている場合はその上端、打設されていない場合は床下地盤面とします(6.2.1)。
②の早見表は、令和6年7月の公開時点ではべた基礎・布基礎それぞれ2仕様でしたが、令和6年12月にそれぞれ9仕様(基礎壁の外断熱・内断熱・両面断熱 × 土間断熱なし・土間コン上面断熱・土間コン下面断熱)に拡充されました(概要資料 p1)。たとえば表16b(べた基礎・土間上断熱)では、基礎壁の外側・内側と土間上の断熱材の熱抵抗がいずれも1.0未満(無断熱を含む)の欄が1.05 W/mKで、断熱材の熱抵抗と水平長さの組み合わせによっては0.3 W/mK台(最小0.31)の欄もあります。断熱の仕様をきちんと反映させたいなら②、手間を減らしたいなら①、という使い分けになります。
事務連絡が挙げている理由は「新評価方法の習熟状況に鑑み」の一言だけです。新評価方法は、基礎壁を別に計算するぶん入力が増え、早見表の適用範囲の確認も必要になります。実務での切り替えが期限までに進みきっていないと国が判断した、と読めます。
切り替えの影響を数字で示した資料もあります。日本木造住宅産業協会(木住協)は2026年5月26日の報道発表で、旧評価方法が2026年10月31日に廃止され11月1日から新評価方法に統一されることを前提に、日本ERIから「土間床等の外周部の線熱貫流率」の任意評定を取得したと発表しました。発表では、協会のモデル住宅の外皮平均熱貫流率(UA値)を新評価方法で試算すると、これまでより約10%不利側の評価になる可能性があるとしています。任意評定は、べた基礎・布基礎の寸法や断熱材の種類・厚さに応じた約240パターンの線熱貫流率を整理したものです。
大手の団体は期限に向けて準備を進めていたことになります。今回の経過措置で、切り替えが間に合っていない事業者は旧評価方法のまま申請を続けられる一方、すでに新評価方法に移った事業者はそのまま新評価方法を使えます。なお、経過措置の背景について事務連絡は「習熟状況」以上のことを書いておらず、ここでの読み方は当社の解釈です。
表4|11月以降の外皮計算のチェックポイント
| 論点 | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 技術情報の記載 | 技術情報 Ver.27 の本文は「令和8年10月31日まで」のまま。旧評価方法で出すときは事務連絡の日付と題名を添える(当社のおすすめ) | 技術情報 3-3 Ver.27 6.2・付録D/事務連絡(令和8年10月21日) |
| 期限 | 「当面の間」で終わりの日付はない。今後の国の公表を確認する。長く使う標準仕様は新評価方法に合わせておく(当社のおすすめ) | 事務連絡本文、概要資料 p1 |
| 対象の範囲 | 経過措置は基礎の線熱貫流率だけ。RC造の構造熱橋部の旧評価方法には触れていない | 事務連絡本文、参考資料(令和6年7月29日事務連絡) |
| 400mmの区切り | 旧評価方法でも、基礎壁の地盤面から400mmを超える部分は別に熱貫流率で計算する | 技術情報 付録D D.1 |
| 計算ツール | 使っている計算シート・ソフトが、11月以降も旧評価方法の入力を受け付けるか | (各ツールの案内による) |
出典:表中の各資料。計算ツールの対応は、ツールごとに提供元の案内を確認してください。
技術情報との食い違い。旧評価方法の中身が書かれているのは、建築研究所の技術情報 第三章第三節の付録Dです。Ver.27(2026年10月)は、6.2と付録Dの両方に「令和8年10月31日まで」と書いています(2026年10月21日に建築研究所の公開ページから取得した版で確認)。旧評価方法を当面使えるとしたのは、その後に出た国土交通省の事務連絡です。技術情報の記載を根拠に「旧評価方法は使えない」と指摘されることも考えられるので、当社では、旧評価方法で計算書を出すときは事務連絡の日付と題名を添えておくことをおすすめしています。
令和6年の救済措置との関係。令和6年7月29日の事務連絡は、2つの場合に、旧評価方法の廃止後も引き続き旧評価方法を使えるとしていました。1つは、旧評価方法に基づいて建築物エネルギー消費性能向上計画の認定、長期優良住宅建築等計画等の認定における長期使用構造等の確認、住宅性能評価、低炭素建築物新築等計画の認定などを廃止日より前に申請したもので、設計変更などが生じる場合。もう1つは、旧評価方法に基づいて認定を受けた性能向上計画・長期優良住宅建築等計画等・低炭素建築物新築等計画の変更などをする場合です。今回の経過措置で旧評価方法そのものが当面使えるので、経過措置が続いている間は、11月以降に設計変更があっても旧評価方法のまま計算を直せます。計画変更か軽微変更かといった手続きの判断は、これとは別に必要です(「省エネ適判の軽微変更」)。
国の講座。事務連絡は、国土交通省の改正建築物省エネ法オンライン講座のサイトで、基礎の線熱貫流率に関する動画などを公開しているとして、あわせての周知を求めています。新評価方法に移る準備には、まずこれを見るのが近道です。
旧評価方法と新評価方法では、基礎壁の熱損失の数え方が違います(旧評価方法は地盤面から400mmまでを線熱貫流率に含め、新評価方法は基礎壁を熱貫流率で足す)。そのため、どちらが有利になるかは、基礎の高さ、土間床上端と地盤面の高さの差、断熱材の位置と厚さによって変わり、一般論では決まりません。物件ごとに比べるのが確実です。
当社では、次のように考えています。
テトでは、住宅の外皮計算・一次エネルギー消費量の計算を図面からお引き受けしています。基礎断熱の新旧の評価方法での比較や、標準仕様の計算書の作り直しもご相談ください(省エネ計算 代行/省エネ適合判定 代行)。
2026年10月21日の国土交通省の事務連絡は「経過措置として、当面の間、引き続き旧評価方法も使用できる」としていて、終わりの日付は示していません。同日に公表された概要資料も、旧評価方法は「令和8年11月1日で廃止とするが、経過措置として当面の間、使用可能」、新評価方法は「原則、使用すること」としています。終わりの時期や示し方は書かれていないので、今後の国の公表を確認してください。
旧評価方法は、土間床等の外周部の熱損失と、地盤面から高さ400mmまでの基礎壁の熱損失を1本の線熱貫流率で一体に評価します(400mmを超える部分は基礎壁として別に計算)。新評価方法は、土間床等の外周部を線熱貫流率で、基礎壁を熱貫流率で、別々に評価します。基礎壁は、土間床上端が地盤面と同じか高い場合は土間床上端より上、低い場合は地盤面より上の部分です。
2026年10月21日の時点で公開されている技術情報 第三章第三節 Ver.27(2026年10月)は、6.2と付録Dに「令和8年10月31日まで」と書いたままです。旧評価方法を当面の間使えるとしたのは、それより後に出た国土交通省の事務連絡です。事務連絡は、所管行政庁・登録省エネ判定機関・登録住宅性能評価機関に申請者への周知を依頼し、指定確認検査機関などにも周知しているとしています。当社では、旧評価方法で計算書を出すときは、この事務連絡の日付と題名を添えて取扱いを確認しておくことをおすすめしています。
今回の事務連絡が対象としているのは、基礎の線熱貫流率だけです。鉄筋コンクリート造の構造熱橋部の線熱貫流率の旧評価方法は、令和6年7月29日の事務連絡で令和6年12月31日に廃止するとされていて、今回の事務連絡はこれに触れていません。
建物の基礎の形と断熱の仕様によって変わるので、一概には言えません。日本木造住宅産業協会は2026年5月26日の報道発表で、協会のモデル住宅の外皮平均熱貫流率を新評価方法で試算すると、これまでより約10%不利側の評価になる可能性があると説明しています。UA値が基準ぎりぎりの住宅は、新旧の両方で計算して比べることをおすすめします。
ありません。国土交通省は新評価方法を「原則、使用すること」としていて、今回の経過措置は旧評価方法も使えるようにしたものです。旧評価方法は「当面の間」の扱いなので、当社では、長く使う社内の標準仕様や計算書のひな形は新評価方法に合わせておくことをおすすめしています。
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外皮計算と一次エネルギー消費量の計算を、図面からお引き受けします。
Sources — 出典・参考資料
国土交通省 住宅局 事務連絡「建築物エネルギー消費性能適合性判定等における基礎の線熱貫流率評価の取扱いについて」(令和8年10月21日・全31頁。参考資料として令和6年7月29日事務連絡「住宅の外皮計算に係る評価方法の変更について」と別紙1〜7を含む)
国土交通省「基礎の線熱貫流率の評価方法について」(2026年10月21日公表・全4頁)
国土交通省「建築物省エネ法 最新の法令」のページ(事務連絡の掲載欄)/「建築物省エネ法のページ」更新情報(26/10/21)
建築研究所「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラムに関する技術情報 第三章第三節 熱貫流率及び線熱貫流率」Ver.27(2026年10月)6.2・表13・表14・表16a〜17c・付録D(公開ページ)
国土交通省「改正建築物省エネ法オンライン講座」
一般社団法人 日本木造住宅産業協会 報道発表「建築物等のエネルギー消費性能に係る任意評定を取得『土間床等の外周部の線熱貫流率』」(2026年5月26日)
※ 第4節の経過措置の背景の読み方、第6節の使い分けの考え方は当社によるものです。