建築物省エネ法まわりの用語は、似た言葉が近い場所に並ぶため、図書の作成や審査対応の場面で取り違えが起こりやすい領域です。本ページでは、外皮性能、エネルギー消費性能、手続き、評価と表示の4分野に分けて、実務で頻出する用語を整理しました。国土交通省や建築研究所などが公開する資料をもとに、定義に加えて、どの図書のどこで使う語なのかという実務上の位置づけまで記載しています。制度の要件や数値は改正で変わるため、適用にあたっては計画地と最新の告示をご確認ください。
01 — SECTION
外皮性能は、建物の断熱と日射のコントロールを数値で表す領域です。住宅ではUA値とηAC値が基準の判定に直結します。外皮計算書に並ぶ主要な指標を、計算上の位置づけとあわせて整理します。
住宅の内部から屋根や天井、外壁、床、開口部などを通って外部へ逃げる熱量を、外皮全体で平均した指標です。単位はW/(m²·K)で、各部位の面積に熱貫流率と温度差係数を掛けた値と、熱橋の長さに線熱貫流率と温度差係数を掛けた値を合計し、外皮等面積で除して求めます。数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱等性能等級の判定にも用いられます。基準値は地域区分ごとに定められているため、計画地の地域区分を最初に確認する語だとお考えください。
冷房が必要な時期に、日射による熱がどの程度室内へ入りやすいかを表す指標です。単位日射強度当たりの日射熱取得量を外皮全体で平均した値で、小さいほど日射遮蔽が効いていることを意味します。庇や軒の出、開口部の方位、ガラスの日射熱取得率が結果に強く影響するため、意匠の検討段階から効いてくる語です。基準値は地域区分に応じて定められており、地域区分によっては基準値が設定されない場合もありますので、計画地の適用をご確認ください。
暖房期に日射熱をどれだけ取り込めるかを表す指標で、ηAC値と対になる考え方です。数値が大きいほど暖房期の日射取得が多く、暖房負荷の低減に寄与します。省エネ基準の適合判定で上限値のような形で直接判定に用いる指標ではありませんが、外皮計算の結果として算出され、一次エネルギー消費量の計算にも影響します。日射遮蔽と日射取得の両立を検討するときに参照する語で、ηAC値だけを追うと暖房側で不利になる場合があります。
屋根や天井、外壁、床、開口部、土間床など、室内と外気を隔てる部位の面積を合計した値で、UA値やηAC値を求めるときの分母になります。分母であるため、面積の拾い方が指標の数値そのものを動かします。区画の取り方、共用部と住戸の扱い、隣戸に接する部分の扱いなど判断が分かれやすい箇所が多く、審査で根拠を問われやすい部分です。集合住宅では住戸単位と建物全体で拾い方が異なるため、根拠図を整えておくことが有効です。
壁や屋根、床、開口部といった部位ごとに、熱の通しやすさを表す値で、単位はW/(m²·K)です。各層の熱抵抗と室内外の表面熱伝達抵抗を合計し、その逆数として求めます。数値が小さいほど断熱性能が高くなります。木造の軸組など断面構成が異なる部分を含む部位では、詳細計算法や面積比率による方法で平均化します。開口部は建具とガラスの組み合わせで値が決まるため、メーカー資料の型番と計算書の値をそろえておく必要があります。
基礎の立ち上がりや鉄筋コンクリート造の構造熱橋など、線状に生じる熱の流れやすさを表す値で、単位はW/(m·K)です。UA値の計算では、部位の面積による熱損失に加えて、熱橋の長さに線熱貫流率を掛けた値を加算します。基礎や構造熱橋の算出方法は、建築研究所が公開する省エネ基準の技術情報に計算方法が示されており、改定が重ねられています。特に鉄筋コンクリート造の共同住宅では影響が大きいため、採用する算出方法と根拠資料をそろえておくことが重要です。
02 — SECTION
設備の性能を評価する領域です。住宅も非住宅もBEIが中心的な指標となり、非住宅では計算方法の選択が結果と作業量の両方を左右します。指標と計算方法の関係を整理します。
建物で使われる設備機器の消費エネルギーを、発電や輸送のロスを含めた一次エネルギーの量に換算した値です。空調、換気、照明、給湯に加え、非住宅では昇降機、さらにOA機器等のその他の消費が対象となり、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる創エネ分を差し引いて評価します。冷暖房だけでなく建物全体の設備を合算して比較するという考え方が基本で、省エネ性能の評価はこの量を基準値と比べる形で行われます。
実際の設計仕様、つまり採用する断熱仕様や設備機器の効率、制御方式などを入力して算定した一次エネルギー消費量です。BEIの分子となる値で、設備の選定変更が最も直接に反映される部分です。BEIを算出する際は、OA機器等のその他の一次エネルギー消費量を分子と分母の双方から除いて比較します。設計変更のたびに再計算が必要になるため、機器表や系統図の版管理を計算書とそろえておくことが実務では欠かせません。
用途や地域、規模などに応じて定められた標準的な仕様を前提に算定される、比較の基準となる一次エネルギー消費量です。BEIの分母になります。建物の実情ではなく制度が定める前提条件から算出されるため、用途区分の取り方や室用途の設定によって値が変わります。用途区分の判断は基準値そのものを動かすため、複合用途の建物では特に慎重に整理し、審査側と認識をそろえておくことが望まれます。
設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した比率で、建築物のエネルギー消費性能を示す代表的な指標です。数値が小さいほど省エネ性能が高くなります。住宅では1.0以下が省エネ基準に適合する水準とされています。非住宅は基準の引上げが段階的に進められており、大規模に加えて中規模でも用途に応じて1.0より小さい基準値が定められています。適用される基準値は規模と用途、申請の時期によって変わりますので、計画に応じてご確認ください。省エネ性能ラベルの星の数や誘導基準の達成判定も、この削減率の考え方に基づいています。求められる水準は用途、規模、適用する制度によって異なるため、計画に適用される水準をご確認ください。
年間熱負荷係数と呼ばれる非住宅の外皮性能指標で、ペリメータゾーンの年間熱負荷をペリメータゾーンの床面積で除した値です。設計値を基準値で除した比率はBPI、モデル建物法による比率はBPImと呼ばれます。値が小さいほど外皮による熱負荷が小さいことを意味します。現在の適合判定は一次エネルギー消費量の指標が中心で、PAL*は誘導基準や表示制度の評価で参照される場面が多く、制度ごとに扱いが異なるため適用の有無をご確認ください。
非住宅の簡易な計算方法で、対象建物をあらかじめ定められたモデル建物に置き換え、主要な外皮と設備の仕様を入力してBEImやBPImとして基準比を評価します。すべての室や機器を入力する必要がないため作業量を抑えられますが、前提条件が固定されているため、実態より安全側の結果になる場合があります。国土技術政策総合研究所と建築研究所が公開する入力支援ツールで計算し、小規模建築物向けの版も用意されています。
非住宅で室単位に用途や面積、設備機器を入力していく詳細な計算方法です。入力量は多くなりますが、実際の計画に近い評価ができるため、設計の工夫を結果に反映しやすい方法です。空調や換気の系統をそのまま表現できる点が、モデル建物法との大きな違いになります。制度や評価によっては標準入力法での算定が求められる場合があるため、どの計算方法を選ぶかは、目標とする水準や取得したい評価とあわせて早い段階で決めておくことが有効です。
03 — SECTION
図書の名称と手続きの流れを取り違えると、確認申請や完了検査のスケジュールに直接響きます。適合性判定を軸に、提出図書と変更手続きの用語を整理します。
建築物エネルギー消費性能適合性判定の略称で、所管行政庁または登録建築物エネルギー消費性能判定機関が、計画が省エネ基準に適合しているかを判定する手続きです。対象となる場合は、適合判定通知書の交付を受けなければ確認済証が交付されないため、確認申請の工程に組み込んで考える必要があります。2025年4月以降に工事に着手する建築物は、原則としてすべての新築で省エネ基準への適合が求められ、増改築では増改築を行う部分が対象となります。仕様基準による場合など適判手続きを要しない区分もあり、規模や用途により扱いが異なります。
計画が省エネ基準に適合していることを、項目ごとに説明する書類です。参考様式が示されており、審査側は記載内容と添付図書を照合しながら確認していきます。実務では、説明書の記載と図面や機器表の内容が一致していないことが指摘の主要な原因になります。仕様を変更したときに説明書の更新が漏れると、根拠が追えなくなるため、図書一式の版をそろえて提出することが、審査を円滑に進めるうえでの基本になります。
省エネ基準に適合していると認められたときに交付される通知書で、建築主はこれを建築確認の申請先へ提出します。適合判定通知書が整わないと確認済証の交付に至らないため、着工時期を左右する書類です。交付後に計画を変更する場合は、軽微な変更に該当するかどうかで手続きが分かれます。判定に要する期間は案件の規模や内容、申請先の状況によって変わりますので、余裕を持った工程計画をおすすめします。
適合判定通知書の交付後に生じた変更が軽微な変更に該当することを、申請先が証明する手続きです。軽微な変更は、性能が向上するか性能に影響しないことが明らかな変更、一定の範囲内で性能が低下する変更、これらに当たらないが同じ計算方法での再計算により適合が明らかな変更に整理されています。最後の区分では、事前に軽微変更該当証明申請書を提出し、証明書を完了検査時にあわせて提出する運用となります。手続きの詳細は申請先の運用にもよりますので、事前にご確認ください。
個別の計算を行わず、断熱材の熱抵抗値や設備機器の仕様を示された表に従って選ぶことで、基準への適合を確認する方法です。計算の手間を抑えられる一方で、適用できる範囲や地域区分の条件が定められており、自由度は限られます。誘導基準の水準に対応する仕様基準も整備されており、計算によらずに高い水準の適合確認を行える場合があります。適用可能かどうかは計画の内容によって変わるため、事前の確認が必要です。
04 — SECTION
省エネ性能を外部に示す制度の用語です。融資や補助金、入札で求められる場面が増えており、名称の違いが取得する評価の違いに直結します。制度の位置づけとあわせて整理します。
省エネ基準を上回る水準として定められた基準で、性能向上計画認定などの制度で求められます。住宅ではZEH水準に対応する水準として整理されており、省エネ性能ラベルでも誘導基準の達成状況が示されます。国土交通省の省エネ性能ラベルの解説では、誘導基準の達成は削減率20%以上として説明されています。非住宅では用途や規模に応じて求められる水準が異なり、大規模な建築物ではより高い削減率が求められる場合があります。適用される水準は制度ごとにご確認ください。
強化された外皮基準を満たし、あわせて再生可能エネルギーによる削減量を除いて一次エネルギー消費量を20%以上削減する水準を指す語です。住宅の誘導基準に対応し、長期優良住宅や低炭素認定などでも参照されます。ZEHそのものは、再生可能エネルギーを含めて年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロとなることを目指す住宅を指す語であり、ZEH水準は基準の水準を示す語です。補助事業ごとの区分や要件は別に定められているため、最新の要件をご確認ください。
ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で、年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロまたはこれに近い非住宅建築物を指します。省エネによる削減と再生可能エネルギーの導入量に応じて、ZEB、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedといった区分が用いられます。各区分の要件は評価制度や補助事業において定められており、評価の取得には計算方法の選択も関わります。目標とする区分を早期に定めておくと、設備計画の検討が進めやすくなります。
建築物省エネルギー性能表示制度の略称で、第三者評価機関が建築物のエネルギー消費性能を評価し、星の数などで表示する制度です。建築物省エネ法第33条の2に基づく表示告示や、制度の運営機関が定める評価業務方法書に沿って運用されています。非住宅から始まり、その後に住宅も対象へ加わりました。融資や補助事業、入札の要件として求められる場面があり、省エネ適合性判定と並行して進めることで、図書の重複作成を抑えられる場合があります。
建築物を販売または賃貸する事業者が、省エネ性能を定められたラベルで表示する制度です。2024年4月に開始され、対象となる事業者には表示が努力義務として求められます。BEIに基づく削減率を星の数で示し、断熱性能やネット・ゼロ・エネルギーの達成状況などが併記されます。再生可能エネルギー設備のない住宅は5段階、再生可能エネルギー設備のある住宅と非住宅は7段階で示され、第三者評価か自己評価かの区別も明示されます。
住宅性能表示制度における等級で、断熱等性能等級はUA値とηAC値、一次エネルギー消費量等級はBEIに基づいて判定されます。省エネ基準に相当する等級より上位の等級が段階的に設けられており、ZEH水準に相当する等級も位置づけられています。等級の構成は日本住宅性能表示基準の改正によって追加されることがあるため、目標とする等級を定める際は、最新の基準と各制度が求める等級をあわせてご確認ください。
05 — FAQ
最初に押さえていただきたいのは、住宅であればUA値とηAC値、建物全体の評価としてBEI、そして手続きの側では省エネ適合性判定と適合判定通知書です。この5つの関係が分かると、外皮の性能が指標に反映され、その指標が基準と比較され、判定を経て確認済証につながるという全体の流れが見えてきます。非住宅ではさらに、モデル建物法と標準入力法のどちらで計算するかという選択が加わります。用語の意味だけでなく、どの図書のどこに現れる語なのかという形で覚えていただくと、審査対応の際に迷いにくくなります。
作業量と評価の精度、そして目標とする水準の三点で判断します。モデル建物法は入力項目が絞られており作業量を抑えられますが、前提条件が固定されているため、実際の計画より安全側の結果になる場合があります。標準入力法は室単位で入力するため入力量は増えますが、空調や換気の系統をそのまま表現でき、設計の工夫を結果に反映しやすくなります。制度や評価によっては標準入力法での算定が求められる場合もあります。基準への適合だけでなく、ZEB水準やBELSの取得を目指すかどうかを含めて、早い段階でご相談いただくのが確実です。
BELSは第三者評価機関が省エネ性能を評価して表示する制度で、建築物省エネ法を根拠としています。省エネ性能ラベルは、販売や賃貸を行う事業者が省エネ性能を表示する制度で、2024年4月に開始され、第三者評価か自己評価かを区別して示します。住宅性能評価は住宅性能表示制度に基づき、断熱等性能等級や一次エネルギー消費量等級など複数分野の性能を評価するものです。目的が異なる制度ですが、計算の根拠は共通する部分が多いため、必要な評価を整理してから進めると、図書の重複作成を抑えられます。
変更が軽微な変更に該当するかどうかで手続きが分かれます。性能が向上するか性能に影響しないことが明らかな変更、一定の範囲内で性能が低下する変更については、完了検査の際に変更内容を説明する図書をあわせて提出する運用となります。これらに当たらないものの、同じ計算方法での再計算により適合が明らかな変更については、事前に軽微変更該当証明申請書を提出し、交付された証明書を完了検査時に提出します。いずれにも該当しない場合は計画の変更として扱われ、工事着手前に手続きが必要になります。取扱いは申請先の運用による部分もありますので、変更が見えた段階での早めのご相談をおすすめします。
合同会社テトでは、省エネ適合性判定、BELS、住宅性能評価、CASBEE認証などの申請サポートを行っております。代表は一級建築士で、CASBEE建築評価員、住宅性能評価員、省エネ適合判定員の資格を有し、一級建築基準適合判定資格者検定(建築主事・確認検査員になるための国家検定)に合格しております。共同住宅の鉄筋コンクリート造20階建てにおいて、省エネ適合判定、BELS、住宅性能評価に対応した実績があります。全国をオンライン中心で対応しており、費用は案件の規模と難易度に応じた個別見積で、認証機関、自治体への提出を見据えた図書の整理からご相談いただけます。