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海外の省エネ計算とLEED・CASBEE — 建築分野のCO2は日本全体の約4割。運用エネルギーからホールライフカーボンへ
最新情報 海外動向 LEED・CASBEE

海外の省エネ計算とLEED・CASBEEの最新動向|
運用エネルギーからホールライフカーボンへ

EU・英国・米国・韓国・シンガポール・オーストラリア。先進国の建築規制はこの数年で、「建物を使うときのエネルギー」から「資材をつくって建てて壊すまでの炭素」へと対象を広げました。認証の側でも、2025年のLEED v5とBREEAM V7が内包炭素の算定を必須にしています。そして2026年7月、日本でも改正建築物省エネ法が成立し、ライフサイクルカーボン評価が法律の枠組みに入りました。本記事では海外の一次資料を国別に整理し、それが日本の省エネ計算の実務にどう跳ね返るかまで通してご説明します。

この記事で扱う範囲

先進国、およびCASBEEが使われた実績のある国に限って整理しています。各国の制度は改正が頻繁ですので、日付と版を必ず併記しました。日本の省エネ基準そのものの解説は非住宅建築物の省エネ基準、CASBEEの評価そのものはCASBEE 代行にまとめています。

01なぜ「運用エネルギー」だけでは足りなくなったのか

まず、なぜ各国が急に「炭素」を測り始めたのかという背景を押さえておきます。国土交通省の資料は、IEAの2023年のデータを引いて、建築物関係が世界のCO2排出量の37%を占めると示しています。その内訳は、住宅・建築物の使用に伴う排出が27%、建設に係る建材(鉄・コンクリート・アルミニウム・レンガ・ガラス)の製造等に伴う排出が10%です。

日本国内でも構図は同じで、国土交通省住宅局の資料では建築分野の温室効果ガス排出量が我が国全体の約4割を占め、そのうち建築物の使用による排出が約3割、資材製造・施工・解体による排出が約1割とされています。

ここで問題になるのが、これまでの省エネ施策が対象にしてきたのは「使用段階」だけだという点です。日本では2025年4月に全ての新築建築物で省エネ基準適合が義務化され、2030年には新築でZEH・ZEB水準、2050年にはストック平均でZEH・ZEB水準という目標が置かれています。運用側の削減が進めば進むほど、相対的に残るのは資材製造や施工、解体の側の排出です。ここに手をつけない限り、建築分野の脱炭素は途中で止まる、というのが各国共通の認識になりました。

用語の整理をしておきます。国土交通省の分類では、建設段階・維持管理段階・解体段階の排出をエンボディドカーボン(内包炭素)、使用段階の排出をオペレーショナルカーボンと呼び、その合計をライフサイクルカーボンとしています。海外の文献では、竣工までに出てしまう分(EN 15978のA1〜A5)を切り出して「アップフロントカーボン」と呼び分けることが多く、規制の制限値もこの部分に置かれる傾向があります。

2023年のG7では、気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ(2023年4月16日)で建物のライフサイクル全体の排出量を削減する目標を推進することが推奨され、都市大臣会合コミュニケ(2023年7月9日)でもネット・ゼロの建築物のライフサイクルを推進する必要性が確認されています。ここから各国の制度化が一気に動きました。

02EU|EPBD改正が2026年5月に国内法化期限を迎える

いま海外動向の中心にあるのが、2024年に改正されたEUの建築物エネルギー性能指令(EPBD/Directive (EU) 2024/1275)です。2024年5月28日に発効し、加盟国が国内法に落とし込む期限は2026年5月29日でした。つまり2026年は、EU各国の建築規制が一斉に書き換わる年にあたります。

この改正には、大きく3つの柱があります。1つ目が新築のゼロエミッション建築物(ZEB)化、2つ目が既存ストックへの最低性能基準(MEPS)、そして3つ目が本記事の主題であるライフサイクルGWPの算定・開示です。

表1|EPBD改正(EU 2024/1275)の主要な期限

時期内容
2024年5月28日発効
2026年5月29日加盟国の国内法化期限
2026年12月31日国家建築物改修計画(NBRP)の最終版を提出(草案は2025年12月31日)
2027年初各国が、全ての新築のライフサイクルGWP制限値の導入等に関するロードマップを策定
2028年1月1日公共機関が所有する新築建築物はZEBとする/1,000㎡超の新築でライフサイクルGWPの算定・開示を義務化
2030年1月1日全ての新築建築物をZEBとする/全ての新築でライフサイクルGWPの算定・開示を義務化
2030年まで非住宅で最も性能の悪い16%を改修(住宅は平均一次エネルギーを16%削減)
2033年まで非住宅で最も性能の悪い26%を改修(住宅は2035年に20〜22%削減)

住宅の削減分については、その55%以上を最低性能の建築物の改修から得ることとされています。ライフサイクルGWPは、建築物のライフサイクル全体(50年)における温室効果ガスの影響をCO2換算した値(kgCO2eq/㎡)と定義されています。欧州委員会は算定のためのEUフレームワークを2025年末までに策定するものとされ、2025年6月30日には2026年の国内法化に向けた実施パッケージ(ガイダンス)を公表しています。

あわせて、エネルギー性能証明書(EPC)の尺度も整理されます。A〜Gの共通尺度に統一され、Gは各国のストックのうち最も性能の悪い15%に相当するよう再調整されます。日本のBELSのように「良い建物を表示する」制度ではなく、ストック全体を強制的に順位づけて下から改修させる仕組みだ、という点が日本との一番大きな違いです。

新築が化石燃料を使えなくなる方向も明確で、化石燃料ボイラーへの財政的インセンティブは2025年1月1日から終了しています。

03すでに算定を義務づけている欧州9か国

EPBDが2028年・2030年を期限に置いたのは、すでに先行して制度を作っていた国があったからです。国土交通省の資料は、EPBD改正の時点で欧州9か国がエンボディドカーボンまたはライフサイクルカーボンの算定義務を導入済みだったと整理しています。日本から見て重要なのは、「算定・開示の義務」と「排出量の制限値」が別々の段階で導入されているという点です。まず測らせて、データが揃ってから上限を切る、という順番になっています。

表2|欧州各国のエンボディドカーボン規制(導入年)

国・地域評価義務CO2排出量の制限対象・算定範囲
オランダ2013年〜2018年〜事務所および住宅。エンボディドカーボンが算定範囲
スウェーデン2022年〜2027年〜100㎡以上。エンボディドカーボンが算定範囲
フランス2022年〜2022年〜住宅、事務所、教育施設(RE2020
デンマーク2023年〜2023年〜全用途(2025年7月に制限値を強化
フィンランド2025年〜2025年〜全用途
ロンドン(英)2021年〜なし一定規模以上の全用途(建設地による)
ノルウェー2022年〜同資料が制度導入国として挙げているもの
エストニア2025年(予定)同資料の時点で導入予定とされていた
アイスランド2025年(予定)同資料の時点で導入予定とされていた

国土交通省「建築物のライフサイクルカーボン削減に向けた取組」(令和6年11月11日)の表を、掲載のまま整理したものです。同資料は出典を「ゼロカーボンビル推進会議資料(2024年2月)をベースに時点修正」としています。なお同資料は、表中のロンドンを英国として数えた6か国に、ノルウェー・エストニア・アイスランドを加えた計9か国が制度を導入済み(一部は導入予定)と整理しています。

この中で、実務者がいちばん参照しているのがデンマークフランスです。

デンマークは建築規則BR18で全用途にライフサイクルアセスメント(LCA)を求め、2025年7月から制限値を強化しました。実務解説によれば、平均7.1 kgCO2e/㎡・年という水準まで引き下げられ、用途別に差がつけられています(戸建・連続住宅で6.7、集合住宅・事務所で7.5程度)。さらに施工過程にあたるA4〜A5に対して別枠で1.5 kgCO2e/㎡・年の上限が設けられており、重機の燃料や仮設、建設廃棄物までが評価に入ってきます。算定はLCAbygなどのツールで、50年の評価期間、DS/EN 15978に基づいて行います。

フランスのRE2020は2021年に採択され、2022年から新築住宅に適用されています。特徴は、制限値を最初から段階的に下げるカレンダーとして公表している点です。建設に係る炭素指標(Ic construction)の上限が2025年・2028年・2031年と3年ごとに強化されていく設計になっており、設計者は「いま満たすべき値」ではなく「着工時点で満たすべき値」を見て計画を立てることになります。日本の省エネ基準がその都度の改定で引き上げられていくのとは、実務の感覚がかなり違います。

04英国と米国|新築規制と内包炭素

英国と米国は、新築の運用エネルギー規制と内包炭素規制が別のルートで走っている、という点で似ています。

英国では2026年3月24日に、住宅・コミュニティ・地方自治省(MHCLG)がFuture Homes and Buildings Standards(将来住宅・建築物基準)を公表しました。同日に建築規則の改正法令が議会に提出され、新しい承認文書(Approved Document L 2026)も公表されています。規則の施行は2027年3月24日で、その後12か月の移行期間が設けられます(高リスク建築物は2027年9月24日)。内容としては新築住宅に2013年基準比で少なくとも75%のCO2削減を求めるもので、実質的にヒートポンプと太陽光発電、大幅に強化された外皮性能が前提となります。

内包炭素の側は、国の建築規則ではなく都市計画と専門職基準で動いています。ロンドンでは2021年から大規模開発でホールライフカーボン評価が必須で、その算定はRICS(王立チャータード・サベイヤーズ協会)のWhole Life Carbon Assessment 標準(第2版が2024年7月に完全適用)に基づきます。加えてUK Net Zero Carbon Buildings Standardの第1版が、報道によれば2026年7月から第三者検証を導入しています。「法令ではないが実質的に必須」というルートで先行しているのが英国の特徴です。

米国は州と連邦で分かれます。運用側の規範となるのがASHRAE/IES Standard 90.1で、2025年版が公表され、105のアデンダが盛り込まれました。ファン動力の上限が多くの系統で強化され、除湿・換気の要件がASHRAE 62.1の改定に合わせて更新され、シミュレーションソフトの要件も特定ツールの名指しから性能ベースの適格基準に置き換えられています。住宅側のIECC 2024については、DOEの判定期限が2026年12月30日とされ、州レベルではイリノイ(2025年11月)やコロラド(2026年7月)などで採用が進んでいます。

内包炭素については、カリフォルニア州のCALGreenが具体的です。2024年7月1日から、床面積10万平方フィート(約9,290㎡)以上の非住宅について、建物全体のLCA(WBLCA)を行うか、指定された製品ごとにType III のEPDを取得してGWPの上限を守るか、いずれかの経路が義務づけられました。2026年1月1日からは、この閾値が5万平方フィート(約4,645㎡)に引き下げられています。連邦調達の側では、GSAがコンクリート・セメント・アスファルト・鉄・ガラスについて製品別のGWP基準を設け、第三者検証されたEPDを要求しています。

表3|英国・米国の主要制度(2026年8月時点)

制度時期内容
英国Future Homes and Buildings Standards2026年3月24日公表
2027年3月24日施行
新築住宅に2013年基準比75%以上のCO2削減。Part L/Part Fを改定
英国RICS Whole Life Carbon Assessment(第2版)2024年7月 完全適用ホールライフカーボン算定の専門職標準。ロンドンでは2021年から大規模開発に必須
米国ASHRAE/IES 90.1-20252025年 公表105のアデンダ。ファン動力の上限強化、シミュレーション要件の性能ベース化
米国IECC 2024DOE判定期限 2026年12月30日州単位で採用。イリノイ2025年11月、コロラド2026年7月ほか
米国
(加州)
CALGreen 内包炭素条項2024年7月1日〜
2026年1月1日 閾値引下げ
非住宅10万sf以上(→5万sf以上)でWBLCAまたは製品GWP規定ルート

面積の換算は1平方フィート=約0.0929㎡で計算した参考値です。米国の州別採用状況は流動的ですので、実際の案件では計画地の州・自治体が採用している版をご確認ください。

05アジア・オセアニア|韓国・シンガポール・中国・豪州

アジア・オセアニアは、内包炭素より先に運用エネルギーの水準を一気に引き上げる方向で動いています。日本の実務者にとっては、こちらの方が体感として近いはずです。

韓国は2025年6月30日から、民間の共同住宅(30戸以上)と1,000㎡以上の民間建築物について、ゼロエネルギー建築物(ZEB)認証の5等級を義務化しました。5等級はエネルギー自立率20%以上40%未満に相当します。日本のZEH-M Orientedが「一次エネルギー消費量の20%以上削減(再エネを含まない)」であるのに対し、韓国は再エネによる自立率で切っている点が構造的に違います。同じ「20%」でも意味が違いますので、海外との比較資料を作るときは注意が必要です。

シンガポールはBCAのGreen Markで、2021年3月のSingapore Green Building Masterplan 3.0が「80-80-80」の目標を掲げています。すなわち2030年までに床面積ベースで80%の建築物をGreen Mark取得、2030年以降の新築の80%をSuper Low Energy(SLE)水準、ベストインクラスの建築物でエネルギー効率を2005年比80%改善。BCAの公表では2025年12月時点で、それぞれ66%・33%・72%まで到達しています。制度としてはGreen Mark 2021の第2版が2024年6月1日に施行され、Certified/Gold/GoldPLUS/Platinumの上に、SLE・Zero Energy・Positive Energyの段が置かれています。

中国はGB 55015-2021(建築節能与可再生能源利用通用規範)を基本規範とし、超低エネルギー・近ゼロエネルギー建築の標準整備を進めています。なお本記事の主題との関係では、CASBEEが日本国外で初めて認証した建築物が中国・天津のオフィスビル(TEDA MSD H2 Low Carbon Building、2014年4月)である点が重要です。CASBEEが海外で使われた実績としては、いまなおこの1件が「初の海外認証」としてIBECsの英文サイトに掲載されています。

オーストラリアは住宅の外皮評価NatHERSと、設備までを含めたWhole of Home評価を組み合わせています。新築戸建は7スター+Whole of Home 60点(100点満点)、共同住宅は全住戸平均7スター(各住戸6スター以上)+Whole of Home 50点。外皮だけでなく機器の効率まで一つの点数に載せるという考え方で、日本の外皮+一次エネルギーの二本立てとは整理の仕方が異なります。NCC 2025は2026年2月に公表され2026年5月から採用されていますが、住宅の省エネ要件には追加の変更はなく、少なくとも2029年半ばまで据え置く方針が示されています。

表4|アジア・オセアニアの新築に対する要求水準

制度新築に求められる水準
韓国ZEB認証(国土交通部)2025年6月30日から、民間共同住宅30戸以上・1,000㎡以上の民間建築物にZEB 5等級(エネルギー自立率20%以上40%未満)を義務化
シンガポールBCA Green Mark 2021(第2版・2024年6月1日施行)Certified/Gold/GoldPLUS/Platinumの上位にSLE・Zero Energy・Positive Energy。2030年以降の新築の80%をSLEとする目標
中国GB 55015-2021建築省エネと再エネ利用の通用規範。超低エネルギー・近ゼロエネルギー建築の標準整備が進行
オーストラリアNCC/NatHERS戸建は7スター+Whole of Home 60点、共同住宅は平均7スター(各住戸6スター以上)+Whole of Home 50点

オーストラリアは州・特別地域ごとに採用時期が異なります(北部特別地域を除く本土の全州が採用済みとされています)。シンガポールの到達状況はBCAの公表による2025年12月時点の値です。

06認証の側|LEED v5・BREEAM V7・CASBEE

法規制の話をしてきましたが、実務では認証の側から先に降りてくることが多いはずです。国内の案件でも、海外投資家や外資系テナントが関わると、LEEDやBREEAMが指定されます。そして2025年は、この2つの主要認証が同時に内包炭素を必須化した年でした。

LEED v5は2025年4月に公表されました。10年以上ぶりの大改定で、BD+C(新築)、ID+C(内装)、O+M(既存の運用)の3系統が使えます。評価の枠組みは「脱炭素」「生活の質」「生態系の保全と再生」の3つのインパクトエリアに再編され、脱炭素に関係する配点が全体の約半分を占めるとされています。

実務で効くのは、資材(MR)カテゴリに内包炭素の前提条件(プリレキジット)が新設されたことです。主要な構造・外皮材について、A1〜A3段階のGWPを算定し、排出上位3つの発生源を特定して対策を示すことが求められます。内包炭素の算定をしていない建物は、そもそもv5の認証が取れません。削減の側は「Reduce Embodied Carbon」として6点が用意されています。さらにPlatinumを狙う場合は、運用時の排出のネットゼロ、完全な電化(暖房・給湯にガスや燃料を使わない)、再エネの利用、内包炭素の削減が要件になります。ガスを引いた建物ではPlatinumに届かない、という設計上の分岐がここで生まれます。なおLEED v5は5年周期の更新サイクルに移行しました。旧版のv4/v4.1は2027年6月30日まで登録可能で、認証申請は2033年6月30日までとされています。

BREEAM Version 7は2025年7月16日にアセッサーへ公開され、2025年9月30日から登録受付が始まりました。旧スキーム(2018年版・V6・V6.1)の登録は2026年1月27日で締め切られています。最大の変更はMat 01(建物のライフサイクルアセスメント)の全面書き換えで、基本設計・実施設計・竣工後の3段階で内包炭素を報告することが求められます。従来は算定から漏れがちだった機械・電気・給排水設備(MEP)が内包炭素の算定に明示的に含められた点も実務上大きい変更です。エネルギーと炭素のEne 01/Ene 02も更新され、最上位のOutstandingを狙う場合は敷地内で化石燃料を使えません。アセッサーの解説では、同じ計画でもV7では3〜5%程度スコアが下がる傾向があるとされています。

ではCASBEEはどこにいるのか。認証実績で見ると、CASBEEはほぼ国内向けの制度です。前述のとおり、日本国外での認証は2014年の中国・天津の1件が「初の海外認証」として紹介されている状態で、CASBEE-都市については2015年12月のCOP21で世界版のパイロット版が公表されましたが、その後の広がりは限定的です。

一方で、ライフサイクルカーボンへの対応は進んでいます。CASBEE-建築(新築)2024年版は、J-CATに準拠したライフサイクルCO2評価に更新されました。つまり国内の設計でライフサイクルカーボンを扱う入口としては、CASBEEと後述のJ-CATが接続されている形です。ウェルネス系の展開も続いており、CASBEE-ウェルネスオフィス評価マニュアルは2025年8月20日に2025年版、CASBEE-ウェルネス不動産評価マニュアルは2026年3月25日に2026年版が公開されています。

表5|主要認証の内包炭素への対応(2026年8月時点)

認証最新版内包炭素の扱い最上位ランクの要件など
LEED v5
米国・USGBC
2025年4月公表
5年周期へ移行
前提条件(必須)。A1〜A3のGWPを算定し、上位3つの排出源と対策を提示。削減で最大6点Platinumは運用排出のネットゼロ・完全電化・再エネ・内包炭素削減が要件。v4/v4.1の登録は2027年6月30日まで
BREEAM V7
英国・BRE
2025年7月16日アセッサー公開
2025年9月30日 登録開始
Mat 01を全面改訂。基本設計・実施設計・竣工後の3段階で報告。MEPも算定対象にOutstandingは敷地内で化石燃料を使用しないことが最低要件。旧スキームの登録は2026年1月27日終了
CASBEE
日本・IBECs/JSBC
建築(新築)2024年版
戸建(新築)2025年版
建築(新築)2024年版でJ-CAT準拠のライフサイクルCO2評価へ更新海外認証は2014年の中国・天津が「初の海外認証」。CASBEE-都市は2015年に世界版パイロット版を公表
Green Mark
シンガポール・BCA
Green Mark 2021 第2版
2024年6月1日施行
熱帯気候向けにエネルギー性能を重視した構成Platinumの上にSLE・Zero Energy・Positive Energy

配点や取得可能点数は各認証の公表資料をご確認ください。本表は制度の枠組みの比較を目的としたもので、認証取得の可否を判断できるものではありません。

07日本|改正建築物省エネ法とJ-CAT

ここまでの流れが、2026年に日本の法律へ入りました。

「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」は2026年3月27日に閣議決定され、2026年7月24日に成立しました。法律名も「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」に改められ、基本理念が新設されます。措置の柱は4つです。

1つ目が建築物のライフサイクルカーボン評価制度(法律上の呼称は「建築物通算炭素排出量評価」)です。国が評価の指針、すなわち統一の算定ルールを策定し、建築主・建築士・建設業者等の責務を明確化します。義務としては、政令で定める規模(国土交通省の資料では5,000㎡以上の事務所)の新築等について、建築主が着工前に評価結果を国に届け出ることになります。報道発表資料では着工の14日前までとされています。届出義務がかからない建物についても、削減の努力義務、建築士による建築主への説明、第三者認証・表示の対象にはなります。

2つ目が先導的な省エネ技術を評価する大臣認定です。現行のプログラムでは評価できない技術(資料では、風向・風速や室内外温度差をセンサーで検知して窓を開閉する自然換気システム、CO2濃度による外気量制御などが例示されています)を大臣が個別に評価し、ZEH・ZEB水準への適合を認定します。認定を受けた建築物は所管行政庁の性能向上計画認定を受けて容積率の特例等を受けられます。

3つ目が上位住宅トップランナー制度です。概ね市場の4分の1を占める住宅供給事業者を指定し、中長期計画の策定と毎年度の報告を求めます。施行令の改正案(意見募集期間は2026年8月7日〜9月6日)では、指定の基準が前年度の供給量で示されており、建売戸建住宅・分譲マンション・注文戸建住宅が各2,000戸以上、賃貸アパートが15,000戸以上とされています。公布は2026年9月、施行は2027年4月1日が予定されています。

4つ目が環境性能の第三者認証・表示制度です。建築主等は、ライフサイクルカーボン評価の結果と省エネ性能について、国土交通大臣の登録を受けた機関の認証を受け、標章を表示できるようになります。紛らわしい表示は禁止されます。加えて、建材・設備の製造事業者が国のルールに従って炭素排出量原単位を算定した場合、その旨と原単位を製品のカタログや広告に表示できるようになります。数年のうちにカタログ側にEPD相当の情報が並び始める、ということです。

算定ツールはすでにあります。J-CAT(Japan Carbon Assessment Tool for Building Lifecycle)は、2022年12月に設置されたゼロカーボンビル(LCCO2ネットゼロ)推進会議が開発し、2024年10月に公表されました。IBECsが管理しており、2026年5月11日にはJ-CAT-建築の更新版とJ-CAT-戸建の正式版が公開されています。ISO 21930の区分でA1〜A5(資材調達から施工)、B(使用段階)、C(解体・廃棄)までを対象とし、企画・初期設計向けの簡易法、設計から竣工までの標準法、竣工段階の詳細法という3つの算定法が用意されています。結果表示にはCASBEEの評価結果様式が採用されています。

日本と海外の、いまの立ち位置の違い

08実務でいま準備できること

制度の施行日を待つ必要はありません。海外の先行事例が示しているのは、内包炭素の削減で効くのは建材を選ぶ前の判断だということです。低炭素建材への置き換えは分かりやすい打ち手ですが、効き幅は限られます。既存躯体を再利用するか、床面積や地下階をどこまで持つか、構造形式と部材数量をどう合理化するか、設備容量を過大にしないか、長寿命化やストック活用をどう織り込むか。こうした企画・基本設計段階の判断の方が、桁で効きます。

そのうえで、いまから手をつけられることを3つに整理します。

1つ目は数量表の整備です。ライフサイクルカーボンの算定精度は、部材の数量をどの粒度で拾えるかでほぼ決まります。国土交通省はBIMモデルと部材のCO2原単位を紐づけたLCAの実施イメージを示し、建築GX・DX推進事業としてBIM普及とLCA実施を一体で支援する枠組みを作っています。BIMを入れていない事務所でも、まずは構造・外皮の主要部材について数量を出せる体制を作っておくと、後から楽になります。

2つ目はJ-CATを一度回してみることです。簡易法であれば基本設計の情報でも当たりが付きます。実際に回してみると、どの部材が排出の上位に来るのか、設計変更でどれだけ動くのかが体感として分かります。LEED v5が「排出上位3つの発生源を特定して対策を示す」ことを前提条件にしているのは、まさにこの体感を設計者に持たせるためです。

3つ目はCASBEEでライフサイクルCO2を評価しておくことです。CASBEE-建築(新築)2024年版はJ-CAT準拠のライフサイクルCO2評価に更新されていますので、CASBEEの届出が必要な自治体の案件であれば、制度対応のついでにライフサイクルカーボンの数字を手元に持てます。

当社では、省エネ計算(外皮・一次エネルギー消費量・BEI)とCASBEE、東京都建築物環境計画書を一級建築士が直接お引き受けしています。ライフサイクルカーボンの算定については、対象規模や図面の揃い方によって進め方が変わりますので、概算お見積りからご相談内容をお知らせいただければ、必要な図面と段取りをご案内します。

09よくあるご質問(FAQ)

なぜ海外の制度を知っておく必要があるのですか。

日本の制度が海外の議論を追いかける形で組み立てられているためです。EUは2024年の建築物エネルギー性能指令(EPBD)改正で、2028年から1,000㎡超の新築、2030年から全ての新築についてライフサイクルGWPの算定と開示を義務づけることを決めました。国土交通省の資料は、この動きと欧州9か国の先行事例を明示して並べたうえで、日本の制度設計の背景として説明しています。2026年7月に成立した改正建築物省エネ法のライフサイクルカーボン評価制度は、その流れの中にあります。つまり海外の動向は「参考情報」ではなく、数年後の日本の実務の予告編として読むことができます。

ホールライフカーボン、ライフサイクルカーボン、エンボディドカーボンは何が違うのですか。

国土交通省の整理では、建築物のCO2排出を、建設・維持管理・解体段階での排出(エンボディドカーボン)と、建築物の使用に伴う排出(オペレーショナルカーボン)に分け、その合計をライフサイクルカーボンと呼んでいます。ホールライフカーボンは、このライフサイクルカーボンとほぼ同じ意味で使われる言い方で、算定ツールのJ-CATも正式名称に「Building Lifecycle」を掲げています。海外の文献では、竣工までに出てしまう分(EN 15978のA1〜A5)を切り出してアップフロントカーボンと呼び分けることが多く、規制の制限値もここに置かれる傾向があります。従来の省エネ計算が扱ってきたのはオペレーショナルカーボンの側だけ、という関係になります。

日本ではいつから、どの建物が対象になるのですか。

改正建築物省エネ法は2026年3月27日に閣議決定され、2026年7月24日に成立しました。国土交通省の資料では、届出義務の対象は政令で定めるものとされ、5,000㎡以上の事務所が示されています。建築主は着工前(報道発表資料では着工の14日前まで)に、ライフサイクルカーボン評価の結果を国に届け出ることになります。それ以外の建築物についても、削減の努力義務、建築士による建築主への説明、第三者認証・表示の対象にはなります。具体的な施行日は本記事の執筆時点では公表されていません。報道では2028年度中の導入を目指すとされていますが、政令・告示が出るまでは確定しないものとしてお考えください。

LEEDやBREEAMを取る予定がなくても、内包炭素の算定は必要になりますか。

将来的には必要になる可能性が高いとお考えいただくのが安全です。認証は任意ですが、日本の改正建築物省エネ法は認証とは別に、法律の枠組みとしてライフサイクルカーボン評価を位置づけています。設計を受託した建築士には、環境負荷が少ないものを除いて、評価に必要な事項を建築主に説明する努力義務がかかります。また建材・設備の製造事業者が国のルールに従って炭素排出量原単位を算定した場合は、それをカタログや広告に表示できるようになりますので、数年のうちにカタログ側の情報が揃っていきます。認証を取るかどうかとは別に、数量表とEPD(環境製品宣言)を扱える体制を作っておく話になります。

CASBEEは海外でも通用するのですか。

認証実績としては、ほぼ国内向けの制度です。CASBEEの運営側であるIBECsの英文サイトでは、日本国外で認証された最初の建築物として2014年4月に認証された中国・天津のオフィスビル(TEDA MSD H2 Low Carbon Building)が紹介されており、CASBEE-都市については2015年12月のCOP21で世界版のパイロット版が公表されています。一方で、海外の投資家や本社からの要請で認証を求められる場面では、実務上はLEEDやBREEAMが指定されることが一般的です。ただしCASBEE-建築(新築)2024年版はJ-CATに準拠したライフサイクルCO2評価に更新されていますので、国内の設計でライフサイクルカーボンを扱う入口としては使いやすくなっています。

内包炭素を減らすには、まず何から手をつければよいですか。

建材の置き換えより前の、企画・基本設計の段階の判断です。低炭素建材への置き換えは分かりやすい打ち手ですが、効き幅は限られます。既存躯体を再利用するか、床面積や地下階をどこまで持つか、構造形式と部材数量をどう合理化するか、設備容量を過大にしないか、長寿命化やストック活用をどう織り込むか。こうした判断の方が桁で効きます。実務としては、基本設計の段階でJ-CATの簡易法を一度回して当たりを付け、設計が進んだ段階で標準法に切り替えて比較する進め方が現実的です。数量表の粒度が算定精度をそのまま決めますので、拾いの体制を先に整えておくことをお勧めします。

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Sources — 出典・参考資料

国土交通省住宅局「建築物省エネ法の改正について」(令和8年5月・経済産業省 グリーンスチール検討会 資料4)
国土交通省「「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定」(令和8年3月27日 報道発表)
国土交通省住宅局・不動産・建設経済局・大臣官房官庁営繕部「建築物のライフサイクルカーボン削減に向けた取組」(令和6年11月11日・資料3)
一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)「建築物ホールライフカーボン算定ツール(J-CAT)」/「J-CAT(English)
IBECs「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」/「CASBEE website(English)
European Commission「Energy Performance of Buildings Directive」(Directive (EU) 2024/1275)
UK Parliament(MHCLG)「Future Homes and Buildings Standards」(2026年3月24日 Written statement)
Building and Construction Authority, Singapore「Singapore Green Building Masterplan」/「Green Mark Certification Scheme
U.S. Green Building Council「LEED v5」/BRE「BREEAM New Construction Standard
AIA California「CALGreen Mandatory Measures for Embodied Carbon Reduction」/韓国エネルギー公団「エネルギーイシューブリーフィング第269号」(2025年6月30日)
※デンマークの制限値(平均7.1 kgCO2e/㎡・年ほか)は、One Click LCA および Buro Happold の実務解説によるものです。英国 Net Zero Carbon Buildings Standard の第三者検証の開始時期、および日本の制度の2028年度導入という時期は報道によるもので、公式に確定した施行日ではありません。
※本記事は2026年8月21日時点の公表資料に基づいています。各国の制度は改正が頻繁ですので、実際のご判断にあたっては各公表元の最新情報をご確認ください。

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